愛犬家の間で鹿肉需要が高まってはや数年。Forema のユーザーさんの中でも柴犬愛好家の方は増え続けています。
しかしながら世に食材多き中、なぜわざわざ鹿肉を選んで与えているのでしょうか? 牛肉や豚肉ではいけないのか、ひいては既存のドライフードではダメな理由でもあるのでしょうか?
ここでは、柴犬にわざわざ鹿肉を選んで与えるメリットとリスクについてご紹介します。
目次
柴犬に鹿肉を与えるメリット

高タンパク低カロリー

月並みな内容になってしまうのでざっくり記載しますが、鹿肉は高タンパク低カロリーで、アスリート食としても大変優れたもの。良質のタンパク質を摂取したい場合などにうってつけの食材と言えます。
高タンパクというのは、体を作るのに必要なタンパク質を多く含んでいるということ。と聞くと今度は肥満が心配になるものですが、脂肪分がとても少ないので脂質なエネルギーを摂取しなくてすむ、そういう便利な食材が鹿肉です。
低アレルゲンの食材

鹿肉は他のお肉に比べても低アレルゲンの食材として知られています。絶対にアレルギーが出ないというわけではないのですが、発症のリスクは低いため、アレルギー体質でペットフード難民になってしまった愛犬が、最後にたどり着く食材という側面が大いにあります。
また、低アレルゲンという理由とは別に、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の摂取比率(n-6/n-3)が牛肉よりも低いという点も挙げられます。n-6とかn-3と書くと意味不明ですが、オメガ6脂肪酸やオメガ3脂肪酸と書くと、ご存知の方も多いはず。
オメガ3脂肪酸は炎症を沈める作用、オメガ6脂肪酸は炎症を起こす作用があります。「炎症を起こす」というと不吉に聞こえますが、「免疫を活性化させる」のと概ね同じ意味です。免疫が活性化することで外敵への防御作用が働き(=炎症)、防衛が成功したのちは鎮静化(=抗炎症)する、というのが私たちやペットたちの免疫機構です。両者がバランスよく正常に働くことが重要で、その点においても鹿肉はn-3とn-6を良いバランスで摂取できるというわけです。
参考記事:鹿肉の栄養性と調理特性
国産の場合はオーガニック食品に近い

世の中には、すでに鹿肉ドッグフードというものが存在しますが、大半が外国産で、それらは通常は牧場飼育の鹿肉を使用しています。国策として鹿牧場に力を入れているニュージーランド産である事が一般的です。
一方の、国産鹿肉の場合、一部を除くとだいたいが野生種です。それは人工飼料や抗生物質投与とは無縁という事です。概念としてはオーガニックフードに極めて近いです。とは言え、完璧ではない部分もあります。それが農薬。
近年は鹿による農作物被害が高止まりしている状況なのですが、言い方を変えれば、鹿が農薬野菜を食べているという事。もちろん常時食べているわけではないのですが(※)、100%クリーンとは断言できない現実はあります。
※一番美味しい収穫直前にごっそり持っていく。
ドライフードなどの既製品ではない

ある意味、これが一番大きいかもしれません。極論としては、鹿肉に限らず、スーパーなどで手に入る食材を使った手作り食でも同じ事が言えます。
鹿肉に切り替えてから毛並みや体調がすごく良くなったという声は、いまや至る所で耳にする事ができるもの。もちろん鹿肉による効用はとても大きなものですが、それとは別で、ドライフードをやめた事による健康改善は決して少なくないように思います。(ドライフードの質にもよる)
この場合、比較実験が難しいので断言はできないのですが、概ね納得いただけるところではないでしょうか?
と、ここまでは鹿肉のメリットばかりを記載してきたのですが、リスクというかマイナス点も記載しておきます。
柴犬に鹿肉を与えるデメリット

食べない場合もある
デメリットというと語弊があるかもしれませんが、当然ながら食べない事はあります。なぜだか分かりません。私が聞きたいです。
Forema では、鹿肉と猪肉の2種類を出荷しています。全体の傾向としては鹿肉が好まれるのですが、柴犬だけは猪肉の好む傾向が強く、これはなかなか興味深い事象だと思っています。
鹿肉が合わないこともある
合う、合わないは当然あります。鹿肉を与えると痒がるとか、吐いた、下痢をする、などがあります。これは鹿肉というより、おそらくはアレルギーの類だと思われますが、一般的なアレルギー検査では鹿肉が検査項目に入っていないことも多く、対処療法として鹿肉を回避する事例もチラホラ見られます。
手間ひまがかかる

鹿肉というより「手作り食」全般の話ですが、使用するのにやはり手間暇かかります。袋をあけてガサガサー、で終わるドライフードに比べると時間/労力は大きな開きがあります。疲れている時などはなかなか面倒なものですね..。
が、本来の食は面倒なもの。太古においては、食のために1日中、いや時に数日かけて狩猟採取に出かけていたのが私たちの本来の姿。
それを数秒ですませようとすると、必ずどこかに歪みが出ます。さらに、それを「安く」となると、その歪みは破壊的なものになります。
それは健康面でのリスクだったり、生産労働者への負荷だったり、地球環境へのダメージだったり..。
一方で、ひと手間かけるだけでも歪みはだいぶ解消されるもので、同時に、そのひと手間がコストダウンにもつながります。
良質のフードである某Zi社のベニソンは1kgで1万円を超えますが、同じボリュームのペット用鹿肉だと半額以下で入手できます(Forema の場合)。
であれば、ひと手間というのは、結果的には最良のコストパフォーマンスと言えるのではないでしょうか?
生食という選択

いや、それでも時間がおしい!
という時は、生食という選択も。※生食=せいしょく と読みます
この場合、手間の代わりに知識の習得という別要素が必要ですが、知識はすなわち財産。今後の長期にわたる健康メリットを考えれば、学習コストを補ってはるかに余るほどのメリットがあったりします。もちろん合う合わないとか、価値観による違いもあるので断言は難しいのですが。
ともあれ、トータルで見れば柴犬にとって鹿肉はとてもおすすめの食材だと言って間違いないように思います。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。「生態系保全」と「経済活動」の両立を目指しています。疾患や健康問題について、マイクロバイオームの観点から改善方法を模索。ペット領域において大学との共同研究を進めています。自然崇拝者。お肉は週2回くらいまで。