今季3度目の最強寒波開け。快晴予報となった2018.2.14、恐羅漢の山頂トレッキングを行いました。この冬実に4度目で、ようやく会心の快晴かつ完璧な樹氷群に出会えたのでレポートします。
目次
広島の最高峰 恐羅漢
快晴の朝は放射冷却で冷える..

真冬の快晴朝は徹底的に冷えます。この日は5時過ぎに起床し6時に広島市内を出発。1時間後には−10℃の極寒エリアに突入となってしまいました。
広島の山間部は、例年だと冷えてもせいぜい−3〜4℃のものですが、寒波の続いた今年は連日−7〜8℃まで冷え込む事も。そしていわゆる「最強寒波」明けかつ快晴の本日は放射冷却でギンギンに冷え込んでいました。
見事な青空。
膝くらいのパウダー

前回の寒波時は、パウダースノーが胸元にまで達し、スノーシューを履いても非常に厳しい環境でした(※広島では異例の災害レベル)。が、今回は膝程度のパウダー。歩きやすく快適な山頂ウォーキングとなりました。
一緒に写っているスキーヤーは登り口で偶然会った年配の方。スノーシューがなく厳しいとの事だったので、先導して雪の踏み固めを引き受けました。これもご縁ですね。
恐羅漢山頂へ

恐羅漢は県内最古のスキー場(現:恐羅漢スノーパーク)として開発されており、山頂付近までリフトで登れます。そういうわけでリフトで1280m付近までショートカット。ここから歩いて山頂まで登ります。
樹氷のドローン撮影
西日本では珍しい樹氷群

リフトで1200mを超えたあたりから景色は一変します。樹氷群が現れるからです。このあたりの樹氷ラインはだいたい1160mくらいのようで、隣にある丸子頭(1206m)という山は山頂のみがかろうじて樹氷を纏っています。
恐羅漢スノーパークにおいては上級者コースのみで見られる景色で、これは特権。写真愛好家でなくとも撮影意欲の湧く絶景に出会えます。
山頂でドローンを活用

今回は、今後の快適なウォーキング/バックカントリーのため、空から地形を撮影すべく、また見事な樹氷群を撮影すべく、ここでもドローンに活躍してもらいました。
スキー場内での飛行はまずいので登山道に出てセッティング。人の侵入を拒む雪山も、無風時にドローンを使えば山頂まで数十秒。文明の利器とはこの事。
この時点で山頂には誰も登っておらず、2mの標識はすっぽりと雪の下に。ドローンを飛ばしている間に後から来たおっちゃんが登っていったのが当日もっとも悔やまれる点でした。
上空から見る樹氷群

雪上ウォーキングやバックカントリーをしていると木々や地表ばかりに目がいって、全体を把握するのはなかなか難しいものです。ドローンで俯瞰すると同じ場所でも全く違う絵が現れるのでとても新鮮なもの。
逆に、ドローンだけでは見えない地表での美しさ、青空を背景に下から見上げる樹氷群の息を飲む鮮烈さは筆舌に尽くしがたいものがあります。
地表と空、双方から自然景観を映し出せる現代文明の贅沢さ、そして自然の豊かさにただただ感謝しかありません。
山頂から山林へ
山頂樹氷群

山頂は見事な樹氷群。とくに西側斜面は広島とは思えない白銀で、青空とのコントラストが鮮烈です。どこまでも深い青は1000m以上の山ならではの奥深さで、異世界。
一応記載しておきますが、リフト頂上からさらに上のエリアは公式には滑走禁止という事になっています。何かあったらレスキュー費用請求されます。
今でも時々遭難者が出ますし、過去に亡くなった方の遭難碑もあったりするので、道を誤った際の結末は覚悟しておいた方が良いように思います。
山スキー愛好家らは自己責任で滑走していますが、見るとみんな熟練の方々(実にシニアが多い!)。どうしても興味のある人は、最初はベテランと一緒に少しずつ経験を積んでいく事をおすすめします。
トレッキングコースへ・・そして道を間違える

山頂を満喫したのちは登山道を北北東に抜けてトレッキングコースに向かいます。先にいたスキーヤーのおっちゃん(?)が滑ったあともあり、それに沿いながら風景鑑賞、撮影、ため息、の繰り返し。
真っ白な木々の間を抜けていく爽快さと神秘性はほとんどファンタジー系アトラクションの世界で、途中で降り口を間違えたものの、しばらくは黙殺していたものでした。

恐羅漢のトレッキングコースはいくつかあり、本来はスキー場に直結しているコースから裏コースを抜ける予定でしたが、そうではなく、山の裏に降りて大回りをしていくコースに来てしまいました。(台所原ルートと呼ばれる、無雪期の登山コースのどこか)
このコースは、一度降りた後に1.5時間くらいかけて再び尾根に登らねばならず、今回は避けたいところ。よって元来たコースを登っていくわけですが・・。
ボードを背負って(撮影しながら)の急勾配東半はかなりの体力を使います。これが夕方でかつ悪天候だったら、人は簡単に遭難します。そういう時、人は心が折れた時点で終焉に向かうのだろうと感じます。
10年くらい前にこの付近でバックカントリーを楽しんでいたボーダーグループが遭難する事故があったのですが、その時はスノーシューを持参していなかったそうです。当然ポールもなかったのだろうと思います。この両者があるだけで雪山歩行における体力の消耗度合いは雲泥の差があるので持参は必須です。(スノーシューハイクは純粋に楽しいので是非)
今回は午前という事で日も高く快晴、かつ地理もある程度把握しており、気分としては急勾配ハイク。とは言え途中で落とし穴(雪面下に樹木があり、枝が空洞を作っている)があったり、倒木の先が尖って突き出ていたりと危険は常に隣り合わせ。スノーシューとポールをにすがり切ってどうにか元のルートに戻った次第です。
雪山で熊は出るか?
ツキノワグマに襲われるリスクについて

山林の非圧雪もふもふにハマり喘いでいる時、ふと思うことがあります。
「今襲われたら絶対に対処できない・・」
何に襲われるのか?それは熊です。西中国山地の場合はツキノワグマ。90年代からの保護により、個体数が順調に回復しています。当然豪雪期には冬眠しているはずなのですが、実は例外もあったりします。というのも、熊はかならずしも熟睡しているわけではなく、場合によっては目を覚まして仮活動をすることがあるのだとか。
バックカントリースキーヤーが熊の穴に間違えてハマり、迎撃されるという事故がたまにあるそうです。
つい最近にも実際にあった事例として、バックカントリー中のスキーヤーが”冬眠しないクマ”に遭遇し、怪我をしています。
26日午前10時55分ごろ、長野、新潟両県にまたがる北アルプス乗鞍岳(通称・白馬乗鞍岳、2469メートル)でバックカントリースキーをしていた岐阜市の男性会社員(35)がクマに襲われたと、同行者から119番があった。男性は頭にけがを負ったが意識はあるといい、長野県警が救助に向かった。
大町署によると、男性は知人の男性と2人で26日に入山。滑走中に成獣とみられるクマに遭遇した。クマはその場から逃げたという。(2017.11.26 サンスポ)
http://www.sanspo.com/geino/news/20171126/acc17112616070001-n1.html
この場合、人間としては相当な恐怖ですが、斜面を滑走してきた外敵に遭遇した熊の側もかなり怖かったと思います。
冬眠しないクマが増えている!?
そんな背景もある中、私も斜面で何度か穴にハマり、その都度その事故の記憶が頭をよぎったものです。
近年では”冬眠しない熊”の存在もしばしば指摘されています。これは昔から例外的にいた(通称:穴持たず)そうなのですが、当時は餌不足で冬眠の準備ができなかったから冬眠できずに餌を探し回っているとされていました。
が、近年の研究では、むしろ逆で「栄養が豊富で冬眠する必要がない」個体が冬場にも歩き回っているという事がわかって来ました。しかも増えているっぽいです。
これは熊に限らずアナグマなども同様で、本来冬の間は出ないはずなのに時々現れるのだと猟師さんが言っていました。ちなみにアライグマは冬の間はぱったり出没が止むのだとか。今のところ。
よってこれからの時代は、バックカントリーのリスクの中に「熊との遭遇」という項目も明記しておいた方が良さそうです。

尚、熊ついでに書きますが、ツキノワグマは本当に臆病なもので、人間に遭遇するのを大いに嫌います。なので偶発的な出会いで大変驚いてキレる。
で、この恐羅漢から比較的近くに住んでいる熟練の猟師さんが言うには、人が山を歩いている時、実は割と普通にその辺にいるのだそうです。人が怖いので茂みの下でじっとして通り過ぎるのを待っているのだと。
犬が一緒にいる場合、犬が見つけてしまうのでやっかいなのですが、仮に熊にばったり出会ってしまっても、目を合わせずに逃げもせず、うろたえもせず何もなかったかのように通り過ぎる事で事故は防げるのだそうです。普通の人には無理だと思いますが・・。

尚、今回使用した機材はATLASのスノーシューとモンベルのウルトラライト・ウォーキングポール、バックカントリー用のランドナーパックで、日帰り程度の装備。ポールは軽くしたかったのでトレッキングポールよりも軽いウォーキング用の超軽量モデルで横着しましたが、やはり通常のアルパインポールの方が安心だと痛感しました。
というわけで、バックカントリーは自己責任で。自然と触れ合いながら最大限に楽しみましょう。

株式会社Forema(フォレマ) 代表。「生態系保全」と「経済活動」の両立を社是に、ペット関連事業、マイクロバイオーム研究、自然崇拝などに傾倒しています。お肉は週2回くらいまで。
