安芸太田町の丸子頭

恐羅漢と丸子頭

広島県と島根県で最も高い山は、両県の県境にそびえる恐羅漢(おそらかん)という山。西日本では珍しい樹氷群が見られる貴重な雪山スポットです。

今期2回目の”最強寒波”が明けた2018.1.31、山頂に行って来たので軽くレポートします。

広島県の最高峰

恐羅漢
広島県と島根県の境に位置する両県最高峰の恐羅漢。標高1346m。

恐羅漢は恐ろしそうな名前とは裏腹に、なだらかな山肌なのでトレッキングコースとしても人気があります。冬場においては(県内最古の)スキー場「恐羅漢スノーパーク」が人気で、九州エリアからはるばるやってくる人が多い事でも知られています。

いわゆるサイドカントリー

スノーシューとボード。
スノーシューとボード。ATLASという海外メーカーのもの。バックパックはmont-bell

私は登山家ではなく、トレッキングスキルもないのでリフトで山頂付近までショートカット。標高1280mまで文明の利器に頼ります。ここから上まで距離にして300mくらい。高さは60mくらいです。普段であれば5分の距離ですが、今は真冬。積雪は2mを超えます。昨年末に来た時は積雪80cmだった上、管理人さん?が踏み固めた跡があったのでのでスノーボードのブーツで普通に歩けましたが、今回は連日の積雪があり天国のようなパウダースノー。スノーシューを履いても30cmほど沈み込む、とても恵まれた筋トレスポットと化していました。

2m超えの豪雪。1m近くが新雪
2m超えの豪雪。うち1m近くが新雪。

ジムに通うより環境も良く、真冬なのに鳥が遠くで鳴き、心身ともに充実というか恐ろしく消耗する時間帯。だから雪山は危険で、しかし素晴らしく、結果リスクを省みずに山を目指す者が続出するのだと思います。

胸パウ

豪雪パウダー。恐羅漢山頂
凍りつく樹木。うっかり踏み出すと胸元近くまで沈み込む。

腰パウという言葉があります。パウダースノーで腰まで埋まるという意味ですが、寒波と豪雪に恵まれた今期は初めて胸パウを経験しました。景色があまりに綺麗なのでキョロキョロ撮影などしていると簡単に転倒。スノーシューがあっても50cm、ブーツだけだと一歩踏み出すごとに1m以上ズボっと! 頭から行ったら死が垣間見えるでしょう。

さらに恐ろしいことに木の周辺はやんわりと隙間があり、ちょっとした空洞が。それは2mを超える落とし穴であり、うっかりハマってしまうと深刻な事故に繋がることもあるのだとか。

樹氷

恐羅漢山頂付近 ブナの原生林
恐羅漢山頂付近の樹氷群。標高1320m前後で森林限界間近。

樹氷は、テレビやカレンダーなどでよく目にするため、いかに見慣れたもののように思えますが、実際に生で見る機会はそうそう多くありません。西日本においては樹氷群は貴重で、寒波明けなどに一部のスキー場の山頂付近でようやく見られるもの。その美しさは込み上げてくるものがあり、私自身においてはスノーボードをしに行くというよりこの自然景観に入り浸りにいくというのが正解だったりします。

季節は1月末で厳冬期真っ只中ですが、木々は芽吹く直前の膨らみを宿しており、自然界の営みから忍耐および下積みの大切さを学ぶことができます。

恐羅漢山頂

恐羅漢山頂
積雪は2m超えながら、標識付近は先人らの手で掘りこんである。が、これもそのうち埋もれる。

山頂まではなだらかな登りですが、2m以上も積もると従来の地形の痕跡は無く、指標となる樹木も別物と化しているため、知覚的には未知の領域となります。

山頂に到着すると標識があります。火山のない地質的な特性もあってか、中国地方においては高い山がほとんどなく、1346mでもこの界隈では最高峰。標識周りは多少掘り下げてあり、それでも180cm弱。前回来た時と全く景色が変わっているので知った風にサイドカントリーにトライすると遭難しかねません。(しようと思っていましたが怖気付いてやめました)。

この山頂部からは無雪期のトレッキング用のルートがいくつかあるのですが、胸パウの今回は危険なので回避。実にもったいない。

今回の経験により、来シーズンはパウダー用のボードを購入する決心がつきました。豊かな自然が経済界に一定の恩恵(10万円くらい)をもたらす構図ですね。

恐羅漢のトレッキングコースについて

恐羅漢トレッキングコース
恐羅漢トレッキングコース

恐羅漢スノーパークには、コース名として「トレッキングコース」と命名されたルートがあります。その名の通り登山用のコースを一部上級者向けに開放したエリアですが、十分な雪が無いと入れない上、前シーズンに行方不明者が出たため、以後はクローズという事になっています。

この行方不明者は、経験豊富な上、消防関係のタフガイだったようで、自力で夜を明かして生還しています。

安芸太田町にある恐羅漢山のスキー場で、2月14日から行方不明になっていた男性が15日午前、無事救助されたという。救助されたのは、広島市消防局の47歳の男性職員。この男性は14日午前、1人でスキーをするため、安芸太田町の恐羅漢スノーパークを訪れたが、妻の留守番電話に「道に迷ったが林道に出たので帰る」とメッセージを残したまま、行方が分からなくなっていた。警察や消防などおよそ90人態勢で15日朝から捜索が行われ、15日午前9時半ごろ、スキー場から北西およそ2キロの雪山で男性を発見。病院に運ばれ、男性は凍傷の症状があるが、命に別条はないという。男性はスキー歴20年以上で、このスキー場にはよく通っていたという。(TSS)

http://hiroshimastyle.com/blog-entry-2904.html

で、そのトレッキングコースへは山頂からもそのまま滑走できるのですが、条件やスキルが大幅に限定されるので詳細は割愛。関係者に迷惑がかからないよう、今回は私も普通にリフト山頂まで戻り、コース内でパウダーを満喫した次第です。

(雪の減った晩冬に再訪)

旧羅漢山バックカントリー

恐羅漢スノーパークについて

恐羅漢スノーパーク
雪解け後の恐羅漢スノーパーク。広島県内最高峰の1,346.4m。

いわゆる恐羅漢スキー場は、瑞穂ハイランドと並んでエリア屈指の積雪量と雪質を誇るのですが、人口密度が低く、パウダーがほとんど荒らされないという超巨大なメリットがあります。「なぜ誰も滑っていないんだ??」という奇跡の保存状態と自然景観の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものがあります。(人が比較的少ない理由としてはインターチェンジから遠い上、道も険しいから)

コースも自由度が高く、その意味でも自己責任を認識している大人層向け。事実客層も落ち着きがあり、こういう素朴な風合いが「死ぬまで現役」の根強い層をガッチリ掴んでいると言えます。

先に触れた遭難事故とは別に、前の年には50年以上のベテランが遭難死するという事故も起きています。

「恐羅漢スノーパーク」で70歳男性が遭難

「恐羅漢スノーパーク」は山頂付近の標高が1300メートルあまりで男性は少なくとも50年以上のスキーの経験があり、1月21日にもこのスキー場を訪れていたという。警察は男性が遭難したおそれがあるとして、1月30日午前8時から消防やスキー場の職員とともにおよそ60人態勢で捜索している。(NHK広島)

http://hiroshimastyle.com/blog-entry-2183.html

それでも他のバックカントリー事故のように批判されないのは、客層の良さと山・地域への愛情がある程度共有されているからだと勝手に信じています。

この事故でなくなった方の奥さんは、「好きな山で最期をとげて幸せだったと思います」といった趣旨のコメントを残しています。

丸子頭という山

丸子頭山頂の樹氷群
丸子頭の山頂部。恐羅漢より100mくらい標高が低いようだ。

丸子頭の樹氷群を空撮

この日は恐羅漢を満喫したのちに、付近の登山研究のための山林撮影を行いました。被写体は丸子頭という無名の山。位置としては恐羅漢から谷を挟んで向かい側になります。

丸子頭についてはweb上にもほとんど情報が無く、十方山(県内3番目の高さ)の登山者がついでに通っていくようなスポットらしいです。当然冬場は人類の形跡が無く、見事な絵に出会うことが出来ました。

山頂部分はやや禿げ上がっており、これが山の名前の由来なのかどうか?山頂部周辺が樹氷ラインから少し頭を出している立地で、風が吹き抜ける通り道になっているのかもしれません。

山頂に野うさぎの足跡
山頂に野うさぎの足跡が見えた。当然捕食者であるキツネや猛禽類が生息する。

この山頂部にウサギの足跡があり、2つのルートが山頂で1つに重なっています。こういう見通しの良い場所は大型猛禽類にとっては狩りがしやすいポイントだと言えます。

狩りがしにくい森が増えた

この辺りは西中国山地と呼ばれる一帯で、80年代にはクマタカの研究で世界的な研究報告が排出された場所。が、近年はめっきり数が減ったようで、かつ繁殖成功率も10%を切ってしまったとのこと。同じく空の生態系の頂点に君臨するイヌワシも姿を消してし久しいです。

理由としては山林開発にくわえ、気候の変動もあるのかもしれません。山林開発の中でも増えすぎた人工林が放置されている山林の荒廃は深刻で、針葉樹は落葉しないので猛禽類の狩りが難しくなるという側面があります。それでもしっかり枝打ちしてあれば針葉樹林内でもある程度狩りができるらしいのですが、放置されて密集した暗い杉林の樹海は砂漠。杉には虫が付かないので川魚すらも減り、鹿ばかりが増えるという生物多様性の危機の大きな一因となっています。

その意味ではこの界隈は自然林がまだ多く残されており、自然の造形美を感じられる貴重なエリアだと言えます。

樹氷の境目
樹氷エリアの境目。木の種類によって樹氷のつき方が異なる。

尚、今回使用したドローンの動作温度は0度までで、バッテリーも−10度まで。山頂はグンと冷え込むので電圧低下で不時着のリスクがあります。離陸ポイントから1kmほど山奥なので冬季の回収は絶望的。だからこそ誰も撮影していない絵に出会えるという喜びがあり、自然への愛着がさらに増すというサイクルが生まれます。

バックカントリーのコースとしては木々の密度が高すぎるように見えますが、登山道を精査することでテクニカルなコース開拓ができるかもしれません。

株式会社 Forema 代表

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