ストレプトコッカス

犬の腸内細菌 vol.2 乳酸菌について

最終更新日:
公開日:2021/08/20

前回、犬とビフィズス菌について記載しました。今回はなんとなくビフィズス菌と混同されそうな乳酸菌についてお伝えします。

冒頭写真:Public Health Image Library

知名度100%? でも乳酸菌って何だろう

あまり知らない 乳酸菌の定義

前回も書きましたが、乳酸菌とは乳酸を生み出す細菌たちの総称です。有名どころではラクトバチルス属というグループがあります。

ヤクルトでお馴染みの「ラクトバチルス カゼイ」は誰しも耳にしたことがあるはず。「ラクトバチルス カゼイ」は元々体内や自然界に存在するものですが、その中から特に有益な個体たち(株といいます)を研究者が独自に選別、培養することで特許を取得し、独自の商標で商品化されていきます。

その一つが有名なシロタ株ですが、これは「ラクトバチルス カゼイ シロタ株」というのがフルネームです。(ちなみに私はヤクルトが大好きです)

ヤクルト以外で有名どころは明治のブルガリアヨーグルトで、よく見ると「LB81」という商品名になっています。これは「ラクトバチルス・ブルガリクス」と「ストレプトコッカス・サーモフィラス」という2種類の乳酸菌の名前から命名されたのだそうです。(※乳酸菌は「ラクトバチルス属」以外にも「エンテロコッカス属」「ストレプトコッカス属」「ロイコノストック属」など、複数のグループに存在します)

ちなみに、森永のヨーグルト「ビヒダス」はにBB536と大きく記載があるのですが、「ビフィドバクテリウム・ロンガム」という細菌から、独自にBB536という株を分離して培養したもの。森永独自の強化選手が配合されているという事です。(B.ロンガムはビフィズス菌に分類されます)

善玉菌といえば乳酸菌

乳酸菌は宿主にとって有益で、健康に良いとされています。各種論文や企業の独自研究などで有益な働きが多々報告されています。有名どころをあげると下記の通り。

  • ラクトバチルス カゼイ(ヤクルト)
  • ラクトバチルス ブルガリクス(明治ブルガリアヨーグルト)
  • ストレプトコッカス サーモフィラス(同上)
  • ラクトバチルス ガセリ(雪印 恵み など)
  • ラクトバチルス ロイテリ(オハヨー ロイテリヨーグルト)
  • ラクトバチルス アシドフィリス(ビオフェルミン)
  • エンテロコッカス フェカリス(数多メーカーのサプリ)

などなど。

ヨーグルトが体に良いのは誰しもが知る事実ですが、メーカー製品以外でも例えば「糠漬け」などの漬物でも乳酸菌が活躍しています。乳酸菌の一部は塩分に強いため、漬物の環境では生存競争に勝ち抜き、結果として腐敗菌の増殖を防ぎ、かつ大根やナスなどの具材を「いい具合」に発酵させていくわけです。

また、腸内以外にも、例えば口腔内を健全に保ち、虫歯菌/歯周病菌の増殖を抑える乳酸菌もいますし、女性の産道はほぼ乳酸菌によって独占されており、産道内が酸性になる事で外部の病原性細菌の侵入を阻止しています。

と、ここまで書くと乳酸菌最高!となるわけですが..

乳酸菌の不都合な真実!?

従来の定説が覆り始める

20世紀末まで、腸内の細菌の大半は観察することはほぼ不可能だったため、お腹の中で何が起こっているのかはほとんど分かっていませんでした。(腸内細菌の多くは空気に触れると死んでしまうため、研究室では培養できなかった)

ところが、テクノロジーの飛躍的な進歩によって近年では腸内細菌のDNA解析まで可能になり、腸内に今、どんな細菌がどれだけ生息しているかが分かるようになってきました。

そんな中、乳酸菌にまつわる従来の定説が一部覆り始めています。

「生きてお腹に届く」ことは重要ではないかもしれない

「生きて腸に届く」という有名なキャッチコピーがあります。が、乳酸菌が生きて腸に届くことはそこまで重要ではない事がわかり始めています。

ただし「これは乳酸菌が重要ではない」というわけではありません。

実際には「死んでいてもOK」ということ。死んだ細菌を、文字通り死菌といいます。近年では、乳酸菌は死菌でもOKというのが定説になってきており、むしろ死菌であることのメリットが大きい事もわかってきています。

Forema の腸内細菌ケアサプリでも使用している「乳酸菌素材」などはまさに死菌で、大量の死菌を加熱処理したもの。この死菌たちは腸内で宿主に貢献します。

例えばビフィズス菌をはじめとする有益な細菌群の餌になって増殖を助けたり、死菌の成分(外殻)が腸管の免疫機能(マクロファージなど)にプラスの作用をしたり。

死菌にする事で量(かさ)が減り、例えばスプーン1杯程度でも非常に多くの量が摂取できるなどのメリットがあります。(生きた乳酸菌は塊になるのでマクロファージまで届きにくいという説も)

個人的な経験で恐縮ですが、乳酸菌素材を2週間ほど摂取した後に自らの腸内細菌解析を行ったところ、お腹の中の乳酸菌自体はほとんどいなくなっていました。代わりにビフィズス菌やエクオール産生菌など、いわゆる善玉菌グループが増えていました。そして体調は良好でした。

「乳酸菌そのものの存在」が重要なのではなく、「乳酸菌の成分が他の細菌や周辺環境に及ぼす影響」こそが重要と考えるのが妥当です。

必ずしも善玉菌とは限らない? 乳酸菌の別の素顔

冒頭で、乳酸菌は「乳酸を生み出す細菌の総称」と書きました。つまり色んな奴がいるのです。

乳酸を生み出しているから善玉菌と考えていると、道を誤るかもしれません。「インド人、嘘つかない!」と言っていても、中には嘘をつく奴もいるのです。

例えば、とても良い細菌のはずなのに、状況によっては全く別の顔を持つ種の細菌もいます。

その1つがロイテリ菌。

正式名称を「ラクトバチルス ロイテリ」といい、口腔内の病原性細菌を抑制したり、口腔〜腸管を通じて体内への好影響を与える科学的根拠が示されています。

ところが、「エリュシペロトリクス科」の細菌グループと「ロイテリ菌」の組み合わせが、多発性硬化症が悪化させるという研究成果が2020年に報告されています。

また、有望な乳酸菌の一つである「エンテロコッカス フェカリス」は特定の抗生物質に対して耐性を獲得する事があり、結果として必要以上に増殖して感染症の原因となります。

「エンテロコッカス フェカリス」は、抗癌作用が報告される一方で、結腸癌の発生に何らかの関与があるのではないか? という論文もいくつかあり、その多面性はミステリアスすぎます。

これと似たような事例は多々あり、一方で有益な働きをする細菌が、他方では感染症の一因となるというのはむしろ日常。たとえば..

  • 単独で力を持ちすぎてしまった(増えすぎた)
  • 本来の居場所ではないところにいってしまった(居場所をまちがえた)
  • 良くないところで良くない組み合わせになった(友達選びを誤った)

など、まるで人間界と同じ事が起こっているのが細菌の世界の奥深さです。

乳酸菌に限らずあらゆる腸内細菌において、人も犬も状況は同じです。私たちやペットのお腹の中にあるもう一つの世界に対し、宿主はどのように向き合い、餌を与え、育成していくのか。その結果が人生/犬生にそのまま直結すると言っても過言ではないでしょう。

次回は悪役について書いていきます

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