エガセラ レンタ

犬の腸内細菌 Vol.8 エガセラ レンタ

最終更新日:
公開日:2021/11/23

ペットの腸内細菌について語るシリーズ。今回はとてもマニアックな腸内細菌、E.lenta (エガセラ レンタ)について。なお、このシリーズはタイトルが”犬”になっていますが、多くは猫にも当てはまります。

※当記事は関連文献および、自社での16sRNA解析事例を元に執筆しています

写真: Quantification of Slackia and Eggerthella spp. in Human Feces and Adhesion of Representatives Strains to Caco-2 Cells – Scientific Figure on ResearchGate. Available from: https://www.researchgate.net/figure/Micrographs-of-Eggerthella-lenta-DSMZ-15644-cells-Ia-c-and-of-Slackia-equolifaciens_fig1_302872597 [accessed 23 Nov, 2021]

エガセラ属のレンタさん

広くはビフィズス菌と同じ分類

E.lenta は、Eggerthella属のlentaという種。日本語で書くと、エガセラ属のレンタさん、という意味です。略してE.lenta となります。この細菌は広い分類でいうと、ビフィズス菌などと同じ「アクチノバクテリア門」というグループに属します。

人の腸内では一般的に見られる細菌ですが、全体の中ではごくごく少数派です。そしてこの細菌、時に命を脅かす感染症にまで発展します。

重篤な感染源ともなりうる細菌

この細菌は皮膚潰瘍や深い切り傷/膿、血液だったりお腹のなかの感染症患者から検出されており、しかしながら従来は技術的な問題からその存在がうまく捉えられていませんでした。

と書くととても恐ろしい存在に聞こえますが、実際には人への感染は稀。むしろ大抵の細菌は、それが”いわゆる”善玉菌であったとしても、時に感染症の原因になり得ます。こういう場合、細菌側の問題ではなく、感染される宿主側に何らかの不具合が起こっていることが大半です。

炎症を加速させるかもしれない

焚き火

リウマチ患者で増加する

E.レンタは、リウマチ患者で増殖している事が分かっています。この時、同じ「アクチノバクテリア門」のC.aerofaciens(コリンセラ アエロファシエンス)の増殖も報告されており、双方が相関もしくはE.レンタが炎症を悪化させている可能性も指摘されています。

リウマチというと、お年寄りが腰や手足を痛がっている、なんとなく腰痛の一種みたいなイメージを持ってしまいがちですが、実は自己免疫疾患の1つ。つまりアレルギーやアトピーなどと同じ分野の疾患です。

腸内細菌の不具合によって不必要な炎症が慢性化したことで引き起こされている疾患と考えられます。そしてその問題の中枢にE.レンタの影がちらほら見え隠れしているということです。

IBD(潰瘍性大腸炎/クローン病)にも関与?

リウマチに関与しているのであれば、同じ自己免疫疾患に該当するIBDにも関与しているのではないかとも思えるのですが、どうやらその可能性が高そうです。

E.レンタはIBD患者の腸内からも一定量が検出されており、また実際にIBDと相関のある腸内細菌を調査した分析(相関ネットワーク分析)では、ネットワークの中心に位置する細菌として報告されています。

E.レンタはフラボノイドの分解によって悪性腫瘍の発生にも関与の可能性..という報告もあるのですが、ここでは割愛します。

犬や猫からも検出される

子犬たち,犬の素材

 

リウマチは人だけではない

リウマチというと老人の病気だと勝手に想像してしまいがちですが、ペットの間で自己免疫疾患が急増している背景を考えると、多くの犬や猫が密かにリウマチに苦しんでいる可能性はあります。

事実、これE.レンタは犬や猫の腸内からもしばしば検出されています。特に、足腰や関節に問題のある個体の場合にC.アエロファシエンスとE.レンタの組み合わせで増殖している事例がしばしば見られます。

つまり人間のリウマチ患者と同じ状況ですね。

老化だから仕方がないのか?

C.アエロファシエンスとE.レンタが多く検出された個体を調べてみると、足が悪かったり、関節の不具合を申告される事が多いです。が、状況を鑑みる限り、それは足腰の問題ではなく、腸内の問題と言った方が真相に近いようです。

人もペットも、シニア期に入ると腸内細菌の組成が大きく変わっていくことが分かっています。その流れでC.アエロファシエンスやE.レンタが増えてしまった場合に、「老化だから足腰が痛むのは仕方ない」と受け取ってしまうと、本質を見誤ってしまう可能性があります。

腸内のケアで改善できる部分が、改善されないどころか炎症放置によって別の炎症系疾患につながってしまうのであれば、幸せなシニア期とは程遠くなってしまう懸念があります。(少なくとも人間界ではその傾向が強い用に感じます)

余談ながら..

人間の研究ではありますが、E.レンタは、若齢者と百寿者に共通して多かったという報告があります。これは百寿者が老いすぎたためにE.レンタが増えたのか、それともE.レンタがいる老人は若々しく長寿の傾向があるのか? このあたりはまだ不明ですが、少なくとも、細菌には複数の顔があり、単独の場合、Aとの組み合わせ、BやCとの組み合わせ、場合によっては宿主のDNAによっても挙動が異なることがあります。

既存メディアによって善玉/悪玉といった単純化が刷り込まれた腸内細菌領域ではありますが、現実には非常に複雑な領域であることを理解しておく必要があります。

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