Forema では、ペット用(愛犬、愛猫、時々フェレット)に有益な無添加食材として国産の鹿肉・猪肉(いわゆるジビエ )をお届けしています。
前提として、これらのお肉はヘルシーな無添加食という考え方があります。が、その前提は本当なのでしょうか?
ここでは、犬とジビエ という観点で深掘りをしていきます。
目次
ジビエ ってなんだ??
ジビエ とは狩猟民族である西欧文化の価値観
私が鹿・猪による農作物被害と害獣駆除をめぐる「自然界との紛争」の問題解決に着手しはじめたのが2010年。その時点でジビエ という言葉を知りませんでした。以後も何度か「それってジビエ だよね?」「ジビエ って美味しいよね」などのコメントをうけ、「なんじゃそりゃ..?」という感じでした。
当時は東京在住だったため、一部の間では「お洒落食としてのジビエ」は知られていました。ある意味、本来のジビエ (金持ちや美食家、狩猟家のための贅沢品)がそこだと言えます。
が、現在国内で言われているジビエ というのは、害獣駆除によって仕留めた鹿や猪を活用する目的から農水省が旗振りをした背景があり、要は官製ジビエ 。もちろん決して悪いことではありません。
が、色々考え方はあると思うのですが、西欧は自然界を征服するという価値観(※)が強く、そこに迎合する点には微細ながらも違和感があり、Foremaでは、実はジビエ というキーワードはあまり多用はしていません。(..今回はしていますが)
※土地は神によって与えられたものというキリスト教観があるとされています。それ以外の場所は悪魔の土地。だから制圧しても構わないという背景。山頂を、神がいる場所として崇める東洋人と、山頂を踏みたがる西洋人の行動様式の差にマインドの違いが顕著に現れているように思います。
ジビエ は、簡単に言うと野生動物のお肉
国内では、生息数・駆除数の最も多い鹿と猪がジビエ とされている事が大半ですが、美食家の間では他にも下記の動物たちが食されています。全て国内に生息しています。
- ツキノワグマやヒグマ
- アナグマ(king of gibier の別名あり)
- ヌートリア(多くの猟師さんが美味と口を揃える)
- キョン(台湾では高級食材。動物園から逃げ出した個体が房総南部で野生化)
- 鴨類(何種類かが有害鳥獣指定)
- アライグマ(70年代のペットブーム以後、野生化)
- カラス(山間部のものは美味らしい)
上記については、しばしば問い合わせを頂くのですが、猟師さんのところで余っている場合を除けば積極的な販売は行っていません。
従来は狩猟解禁の秋〜春先(日本では11/15〜2/15が一般的)のものでしたが、近年は農作物保護の観点から通年駆除となっており、その意味でも西欧でいうジビエ とは背景が別物だと考えて良いように思います。
関連ページ:犬と猫のジビエ(鹿肉/猪肉)一覧
犬にジビエ という考え方
消去法で鹿と猪にたどり着いた
Foremaでは多くの愛犬家の方たちに鹿や猪のお肉を出荷しています。プロファイリングやヒアリングを重ねていくと、自分がジビエが好きだから愛犬にも!という動機の人はほぼ皆無です。
多くの人は、アレルギーやアトピーといった不具合から食事に制限が生じ、食べられる食材を探し求める「フードジプシー」の期間を経て鹿肉・猪肉にたどり着いています。
また、先代の犬を病気で亡くした、もしくは現在も療養中である、そういった背景を抱えている方も多いです。
それ以外のユーザーさんにおいても、既存のフードやスーパーに並んでいる食べ物の由来や成り立ちに疑問を持っている人たちが多数を占めており、すごく大袈裟な表現をするならば、「既存の物流/経済のしくみにどこか違和感を感じている人たち」の集まりが、Forema の商品を選んでくださっているという側面も多々あります。
そういう人たちは自然界に対する考え方や命への接し方が丁寧で、食と感謝が隣り合わせにある価値観で共通しているように感じています。
この点においても、「西欧のジビエ 」とは別の成り立ちである事がわかります。
- 内容:500gパック x 2
- 種類:ホンシュウジカ / キュウシュウジカ / エゾシカ
- 産地:西日本/九州各県/四国各県/長野県/北海道
- 部位:切り落とし混合
療法食としてのジビエ
消去法として鹿肉や猪肉にたどり着く背景は、大きく分けると2パターンあります。
アレルギーがでてしまうため
最初は市販のフードを食べていたが、アレルギーが出始め模索。色々フードを変えても治らないために手作り食に移行する方が増えています。
その中で、最初はスーパーで手に入りやすい鶏・牛・豚を購入するのですが、それらにもアレルギー反応が出てしまった場合に、ラムや馬に。その後の選択肢として、鹿・猪という流れです。
関連商品: 犬と猫のオリゴ糖サプリ「トリプルオリゴ+酵母」
そもそも食べないため
食に興味がない、もしくは何を与えても飽きてしまう。そういった背景からフードを模索し、鹿や猪にたどり着くケースもあります。
野生のお肉は風味が強いので嗜好性が高く、他のお肉には見向きもしなかった子が、別物のように食べ続けるという事も少なくありません。
とは言え、飽きっぽい子の場合、毎回内容を変えるとか、運動量を増やす、おやつ類を減らすなど、工夫の必要はありそうです。
鹿肉・猪肉に健康問題改善の効用はあるか?
滋養強壮の効用がある
江戸時代は猪肉は「やまくじら」の別名があり、病中病後の療法食として活用されてきました。仏教で殺生が禁じられていたり、また民間人の狩猟は(表向きは)禁じられていたこともあり、「これはくじらです(=さかなです)」という解釈で食されていました。
「やまくじら」は現代の価値観だと色々な角度から突っ込める論理ではありますが、ともあれ滋養強壮としての効用は古来から知られるもの。野生動物のお肉の持つ力は、飼い慣らされた家畜とは別物です。
野山を駆け回る全身運動、四季の寒暖差に揉まれて鍛え上げられた肉体、人工飼料ではないダイレクトに野山に直結する食性、堕落/弛緩しないメンタル、飼育箱とは無縁のストレスフリー環境など、野生の濃厚さは特筆すべきものです。
関連商品: 犬用の総合栄養食 「Forema Basis 鹿」
低アレルゲン食としての用途がある
先述のように、食物アレルギーのある犬が、食べられるお肉を探し求めてたどり着くのがいわゆるジビエ 。鹿肉である事が大半です。理由としては、低アレルゲンの食材として獣医さんが勧めていたり、また実際の体験談がSNSなどで共有されている点も大きいのだと思います。
鹿肉が低アレルゲンなのは「食べた事がないので抗体が獲得されていないから」という論調があります。猪の場合は豚の祖先なので「豚にアレルギーがある場合は猪でもある」となるのですが、実際にはそうならない事例も多く、背景の事情はそう単純ではない事が示唆されます。
関連商品: 犬用の総合栄養食 「Forema Basis 猪」
無添加食としての用途がある
無添加食。ここが最も重要なポイントかもしれません。同じアレルゲンを摂取しても反応が出る場合と出ない場合があります。このあたりは獣医さんも確実な理由は特定が難しいようなのですが、現状においてはアレルギー症状を悪化させる増悪要因を除外していく事が「最適な解」となっています。
増悪要因というのは「それが根本原因ではないけれど、物事を悪化させる要素」の事で、カビだったり、化学物質だったり、食品添加物だったり..
市販のドッグフードをやめて手作り食に切り替えたところ、症状が治った、体調がよくなった、毛並みが大きく改善したという事例は世にあふれており、これは「食材が良くなったこと」+「添加物などから解放された」ことによる成果だと断言して間違い無いでしょう。
そうした食材の選択肢として鹿と猪が選ばれている背景があります。
- 内容:500gパック x 2
- 種類:ニホンイノシシ
- 産地:西日本/九州各県/四国各県
- 部位:切り落とし混合
国産ジビエ は無添加食か?
無添加とはなかなかグレーは言葉なので断言は難しいです。が、国産の鹿肉・猪肉(ほとんどが野生)は無添加という表現を使って差支えないというのが現時点でのForema の判断です。
具体的には…
加工品ではないので添加物を入れるプロセスがない
ドッグフードと違って加工品では無いため、そこに添加物が入る余地はありません。もちろん発色剤なども使っていませんし、店頭で長持ちさせるための保存料もありません。(刺身ではいまだ多いとも聞きます..)
その意味でも無添加と断言していいでしょう。
家畜ではないので人工飼料や肥育ホルモンとは無縁
家畜といってもピンキリで、欧州基準は厳しく、米豪加は緩いとされています。ここで言う基準は、例えば抗生物質や肥育ホルモンの使用における規制です。
抗生物質は感染症の治療にも使用されるのですが、人工飼料にも配合されており、これによって個体が早く大きく太るという効用があります。デメリットとしては自然界への流出による負荷、そして残留して消費者が摂取する可能性がある点です。
ただ、抗生物質に限定せずとも、一つの基準が緩い場合、その他の基準も緩いのが世の常で、単一だと「安全性に問題のない量」であっても、それが複合かつ何年も継続〜世代を超えて継続した場合、どうなるの?? というのは誰も分からない闇の領域です。
分からないからOKとするのが陽気なアメリカン気質だとすれば(..いや、知りませんけど)、分からないけれど暗黙知として「危ない」と認識しているのが日本の賢明な消費者だと信じています。
鹿や猪は、この点でも家畜由来のグレーな領域からは解放されていると言えます。が、時々豚小屋に忍び込んで餌を横領している猪とか、無農薬ではない野菜を荒らしている猪鹿は多いので、その意味では完全に純白だとは言えないのだとは思います。
食物アレルギーの本質はマイクロバイオーム(腸内細菌)の撹乱
アレルギーは誤作動
最後に本質について。アレルギー反応は免疫機能の誤作動です。お肉のアレルゲンに対して抗体を獲得し、それを攻撃してしまうのは本来の免疫の仕事とは逸脱した暴挙。
この誤作動がなぜ起こるのかは不明とされており、対処療法に終始してきたのが(人も動物も)従来の医療だったと言えます。が、21世紀に入ってからは抗生物質の使用と自己免疫疾患(アレルギーやアトピーなど)の関連が次々と突き止められており、そのキーポイントとしてマイクロバイオームの撹乱が指摘されているというのが現在の実情です。
マイクロバイオームの撹乱
体内の生態系
マイクロバイオームとは、腸内細菌を中心とした、体内の微生物叢によって構成される生態系のようなもので、いわゆる腸内フローラや、口腔内フローラ、皮膚の常在菌など、深淵にして複雑なる、まさしく生態系そのものを指す言葉。
免疫にとって特に重要な働きをしているのが腸のマイクロバイオームで、ここの崩壊が数多くの疾患に関与する事がわかってきています。中国でもギリシャでも、さらにはエジブトにおいても太古から病の源は腸だとされていたのは、先人たちが本能的に本質を知り得ていたからなのでしょう。
撹乱される原因
マイクロバイオームの撹乱は、帝王切開による細菌授受機会の消失および、幼少期の抗生物質への暴露と強い相関があると指摘する研究結果が多数存在します。
抗生物質は、病原菌を殲滅するのに大変有効な奇跡の薬でしたが、同時に大多数の有益な細菌たちにも打撃を残していく負の側面があります。大人であれば、腸内の細菌類は2,3ヶ月で”概ね”復帰してくるのですが、「数多の細菌群」と「体内の神経系〜脳」がコミュニケーションを取りながら「組成」を作り上げている途中段階の幼少期に抗生物質をくらってしまうと、本来あるべき「組成」から道を外れてしまうリスクが生じます。
これを証明するのは子供たちの長期的な追跡調査しかないのですが、事実、抗生物質の暴露量が多い子供ほど「セリアック病の発症率が高い」とか「喘息の罹患率が高い」「A型糖尿病の発症率が高い」「肥満が多い」などを報告する研究結果が21世紀以降、世界各地で続出しています。※肥満も自己免疫疾患=炎症細胞の過剰反応
ペットのマイクロバイオーム撹乱はあるか?
ペットのマイクロバイオームはほとんど研究が進んでいません。世にある研究はヒトかマウスがもっぱらです。(Forema では犬のマイクロバイオームについて大学との共同研究に着手しています)
一方で、状況証拠として、幼少期のペットのマイクロバイオームに異変が起きているであろう事が垣間見えています。従来、シニア犬になって発症するとされていた食物アレルギーが若年化しており、「子供の頃からアレルギー」というのは一般的になっています。
オフィシャルな統計がなかったので自社で独自アンケートを取った結果、アレルギー症状のある犬のうち、5割以上が2歳までに発症しているという結果がありました。ただし、これはペットショップおよびブリーダー経由の犬の話。
「知人にもらった犬」の場合、幼少期のアレルギー発症率は2割以下にまで激減しました。
この独自調査は母数が少なく、また属性も偏っている可能性があるので、あくまで参考資料程度のものではありますが、それでも繁殖現場における「無理」が、抗生物質の使用に結びついていることを示唆しています(※)。
※その後、自社ラボでの腸内細菌解析事例の蓄積から、繁殖現場の問題を強く示唆するデータが多く得られています。
関連商品: 犬と猫の乳酸菌サプリ「ラクトマン」
私たちに何ができるか
極論すれば、ペットショップでの購入はやめ、生態販売への規制に理解をするべき、となるのですが、物事はなかなか簡単にはいかないもの。
ひとまずの対処療法としては、「撹乱されたマイクロバイオームの修復」に徹していく事が現実的なのだと思います。
人間であれば、腸のマイクロバイオームは成人まではある程度の可塑性があるそうです。ペット犬の場合であれば、生後1年までに食事を切り替えられれば予後の負荷をある程度減らせると解釈できそうです。
食事の切替とは、具体的には「”プロ”バイオティクス」および「”プレ”バイオティクス」の摂取となります。
長くなるので以後は下記の記事をご参照ください。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。