ワラビー

生殖機能を奪う!?除草剤アトラジンの静かなる影響

以前、除草剤のネオニコチノイドが宍道湖の生態系を破壊しているといった趣旨の記事を書きました。ウナギやワカサギなどの稚魚が、ネオニコチノイド導入によって激減していたという酷い事案でした。

除草剤に関する「別件」として、今回はアトラジンについてご紹介します。

ウナギの激減とネオニコチノイド

ワラビーの生殖機能に悪影響

日本でも使用されている除草剤のアトラジンが、ダマヤブワラビーの子供の雄の生殖機能発達に悪影響を与えているという研究が8月、豪州の学術誌に掲載されました。

メスのダマヤブワラビーに、450ppm(ppmは100万分の1)のアトラジンを含む水を、妊娠中から授乳中にかけて飲ませたところ、オスの赤ちゃんのペニスが通常より短く、小さくなった。

引用:ナショナルジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/091100528/

引用はおなじみのナショジオニュースから。

アトラジンはカエルやヒトで内分泌撹乱の危険が指摘されており、その疑惑は20世紀末まで遡ります。引き続き同記事から引用を。

この研究でまた一つ、アトラジンが「体内のホルモンバランスを撹乱している証拠」が増えたと、論文の著者である豪メルボルン大学の遺伝学者アンドリュー・パスク氏は主張する。しかも、このことはワラビーだけでなく、ヒトを含むすべての哺乳類に当てはまるという。(引用:同上)

これに対し、アトラジンを生産するスイスのシンジェンタ社は猛反発しています。

「環境中に存在しうる濃度のアトラジンが野生動物に悪影響を及ぼすと結論づけられるような、一貫性や説得力のある証拠はありません」(引用:同上)

参考までに、ネオニコチノイド批判に対する、バイエル(モンサント)スポークスマン、ダレン・ウォリス氏の発言も併記。

「論文にあるような断定的な結論に、裏付けがないのは明らかです」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/111500665/?P=2

何なんだコイツら..。

カエルの生殖機能に悪影響

フォレマ農園のアマガエル

今回の件に先立つ20年近く前、タイロン・ヘイズという学者によって「両生類の生殖機能に悪影響がある」といった趣旨の論文が出されています。

このタイロン・ヘイズという学者は、アトラジンを生産するシンジェンタ社と契約をしていた生物学者で、シンジェンタの依頼でアトラジンの影響を調査していました。その過程で「オスのカエルの生殖器に異常が出る」ことを突き止めたのですが、シンジェンタにとっては、これは不都合な真実。その後、彼は契約打ち切りになっています。21世紀に入る直前、2000年の話です。

人間でも同じ影響が出る可能性

2003年頃、アトラジンについて「ニューヨークタイムズ」で危険性(人間の胎児でも同じような影響が確認された)を指摘する特集が組まれた事があります。疫学調査の結果を踏まえた特集でした。また、アメリカの農業地帯の男性の精子が減っていると報告する研究、さらにはアトラジンの使用と乳ガンを関連付ける研究結果まであるのだそうです。

アメリカの場合、この段階だと「証拠不十分でOK」となるのに対し、EUでは「ひとまず使用禁止」になるのが興味深いところ。両者の違いはロビー活動の発達の有無にあるように思います。
(※アメリカにはロビー活動という「産業」が存在する。ケビン・スペイシー主演の「ロビイスト」は地味ながらもおすすめ)

ちなみにアトラジンは、アメリカでは2番目に使用されている除草剤ですが、上述のように欧州では2003年に使用禁止。そして日本では「ゲザプリム」という名称で現在も販売されています。

この対応は「家畜飼料への抗生物質配合」とも相似で、

  • アメリカ → OK!
  • EU → NG!
  • 日本 → 一部規制 (健康被害のない範囲で…)

私たちは悪く言えば鼠色、よく言えば玉虫色の国に生きているのです。ロビイストの代替種として「業界団体」が跋扈する独自の生態系。

そしてオスが産卵する..

奥三段峡で出会ったカエル
奥三段峡で出会ったカエル。カジカにしては大きい。モリアオガエルは擬態で色を変えられるという報告あり。

カエルの生殖機能についてもう少し触れます。アトラジンにさらされたオスのカエルは、男性ホルモンのテストステロン分泌量が減り、代わりに女性ホルモンのエストロゲンの分泌を増やすのだそうです。

性転換を引き起こす原因は「アロマターゼ」という酵素らしい。女性ホルモンのエストロゲンの分泌を増やす酵素で,これによってオスの性腺が卵巣に変わる。アトラジンはアロマターゼの分泌を高めているらしい。

引用:日経サイエンス http://www.nikkei-science.com/?p=16235

これにより、オスは交尾の相手としてメスよりオスを選ぶようになり、さらにはオスの染色体を持ったまま卵巣を持つメスへと性転換していくのだとか。

遺伝的にオスのアフリカツメガエル40匹を、孵化してから成体になるまで濃度0.003%のアトラジン溶液の中で飼育した。すると、全体の10%にあたる4匹が通常のメスとまったく同じ姿へと成長した。

引用:ナショナルジオグラフィク https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2385/

近年は性的マイノリティに対しての理解が広がりオープンな存在になってきましたが、性的マイノリティが増加している背景に、アトラジンなどの内分泌撹乱物質の影響があるのであれば、最優先で議論すべきはジェンダーフリー云々ではなく、農薬の問題なのは間違いないように思います。

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