プレボテラ属

犬の腸内細菌 Vol.4 プレボテラ属

最終更新日:
公開日:2021/09/19

犬の腸内細菌シリーズ Vol.4は、痩せ型、菜食主義者に多いとも言われるプレボテラ属について。これを保有しているペット犬もちらほら..。

※当記事は関連文献および、自社での16S rRNA解析事例を元に執筆しています

冒頭写真:Public Health Image

日本人やアジア人で保有が多い細菌

野菜
Forema 農園と野菜

穀物や野菜をよく食べる人が保有

プレボテラ属は穀物や野菜をよく食べる人の腸内で多く見られる細菌グループで、痩せ型の人が保有している傾向が強いとも言われています。

穀物や食物繊維をよく食べる日本人やアジア地域の人々の保有率が高いとされています。このグループの中でも有名な種の一つ「プレボテラ コプリ」は、2007年に日本人の腸内から初めて発見された細菌です。

プレボテラ属は、もちろん人間だけではなく、健康な肉食動物の腸内でも普通に見られるもので、多くのペット犬も保有している一般的な腸内細菌と言えます。

プレボテラ属は食物繊維がエサ

この細菌のエサは主には食物繊維です。よって、穀物や野菜、果物を多く食べる宿主の腸内で勢力を増します。

プレボテラ属が犬の腸内から検出された場合、その比率によって飼い主さんの食育の方向性が垣間見える事があります。つまり日々のフードに野菜などを積極的に取り入れているか否か。

プレボテラ属が多い場合、上述の通り食物繊維などの摂取が多いわけで、プレボテラ属以外にも食物繊維好きな(=つまり草食寄りの)細菌たちが多めに検出されます。

ところが、時々プレボテラ コプリだけがボンと大きく増殖ている事例もあります。この場合、食物繊維を売りにしたサプリだったり、満腹感を持続させるダイエット食を使用しているという事例が散見されます。(それが正しい方向なのかどうかはケースバイケース)

ダイエット食は、人間でいうところのコンニャクのようなもので、消化しづらいから腹もちが良く、かつカロリーが低いので痩せられるという仕組み。が、その背景で食物繊維好きの腸内細菌が増え、まるで草食動物のような(..というと言い過ぎですが)腸内細菌の組成になっていたりします。(再度、それが正しい方向なのかどうかはケースバイケース)

草食系の腸内細菌って何だ?

シマウマ

コアラや牛と同じ細菌を保有するケースも

プレボテラ属を保有しているペット犬は、他にも草食系の細菌を多く保有している傾向が強く、中にはコアラの腸内で優勢な細菌グループを保有している犬や、牛の第一胃に生息する細菌を保有している事もあります。

こうなると草食動物との細菌共有で、当然のことではありますが自然界は繋がっているのだという、感慨深さが込み上げてきます。(プレボテラ コプリも反芻動物の胃の中に生息)

一方、本来肉食動物がルーツで、タイリクオオカミとも同種(亜種の間柄)であるイエイヌが、草食に傾きすぎることの健康面への影響は注視する必要があるかもしれません。

プレボテラ コプリと炎症

上述のプレボテラ コプリは、食物繊維などを分解する優秀な草食メンバーですが、一方で腸内で増えすぎると下痢になったり、炎症を起こす事がわかってきています。

ペット犬の事例であれば、プレボテラ コプリ単体ではなく、その他多くの草食系の細菌(食物繊維の分解を得意とするグループ)も一緒に繁栄している場合には健康状態は良好で、逆にプレボテラ属(たいていはコプリ)だけが増えてしまっている場合にお腹の調子が良くない傾向が強いです。まだForema ではまだ事例が少ないのですが、猫でも同じ傾向があるように感じています。

人間の健康を維持するためには食物繊維は有益で、犬の場合も概ね同様なのですが、食物繊維にもいくつか分類があり、また人間と同じ感覚で食物繊維を与える事は少し早計かもしれません。

まずはその個体の腸内が今、どう言う状態で、それに対して何が合うのかを検証していく必要があるように思います。

歯周病とプレボテラ属

最後に、歯周病とプレボテラ属について。

プレボテラ属には歯周病に関連する細菌も複数分類されています。その代表格が「プレボテラ インターメディア」で、なんだか近代っぽい名前をしていますが、口腔トラブルのある人や犬、猫の口腔内から頻繁に検出されます。

この細菌は厄介なことに大腸がんの進行に伴い、腫瘍周辺で増加するという報告があります。

プレボテラインターメディアと一緒に検出されることが多いのが「プレボテラ オリス」で、この細菌自体は歯周病菌ではありませんが、病変周辺で検出されます。

また、腸内からまとまった量が単独で検出されることもあるのですが、これはIBDの個体でよく見られる事象でもあります。

こう見ると、同じ属でも全く役割や挙動が異なることがわかります。微生物生態系の奥深さ、難解さがここにも垣間見えます。

犬の腸内細菌シリーズ

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