犬の腸内細菌シリーズ Vol.5 は、宿主の奥深くまで影響を及ぼしているかもしれないサテレラ属について。
※当記事は関連文献および、自社での16S rRNA解析事例を元に執筆しています
近年まで素性がよくわからなかった細菌
自閉症の子供で多く保有?
画像は、サテレラ属というグループの細菌。プロテオバクテリア門の細菌で、どちらかというと疾患に関与があります。犬や人の腸内にもよく見られるのですが、細菌の中でもかなり小さく、動かない部類なので近年までその素性がほとんどわかっていませんでした。
とある研究では腸疾患のある人や犬から検出されたとする報告、また別の研究では自閉症の子供の便にはサテレラ属が多くいることが報告されています。病気に関連する細菌は、少量いるだけなら問題ないのですが、増えすぎた時に問題が起こります。
抗生物質と自閉症
自閉症についてもう少し触れると、例えば長期にわたる抗生物質治療を受けた人が、それによって逆に体調を崩す場合があります。その時チック症や抑鬱の症状が出ることがあり、体調が回復するとそれらもなくなるのだそうです。
抗生物質で体調を崩す場合、腸内では良い細菌グループが壊滅し、良くない勢力が増えていることが大半なのですが、その一環としてサテレラ属が増えている事もあります。そういう時にチック症が出るのであれば、一時的とは言え自閉症の子と近い状態になっているとも評せます。
腸内細菌と自閉症の症状
逆に、自閉症の子の腸内環境をケアしてあげることで「自閉症特有の行動」が軽減されたという報告が、マウスの研究や人の事例で報告されており、腸内細菌ケアがいかに重要な領域かが垣間見えます。
サテレラ属以外にも、行動(そしてメンタル)に影響を及ぼす細菌グループはいくつも報告があり、それらを制御することでメンタルを整えるケアのことを「サイコバイオティクス」といいます。
目には見えないけれど、非常に奥深い世界が存在しているんですね。
- 犬の腸内細菌シリーズ
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。