Forema 農園の看板

不耕起栽培に取り組むForema農園の話

最終更新日:
公開日:2020/05/29

「畑を探しています..」
集落の人にそう相談したところ、廃校物流センターのすぐ近くの畑を使わせてくれることになりました。相談の時間は実に2分弱。

こうして、Forema 農園は幕を開けます。

Foremaがなぜ農園をやるのか?

クローバーの原野にとうもろこしを植えたところ

良いことは誰でも言えるから

Foremaではしばしば「口当たりのいい事」を連呼しています。たとえば、

  • 野生動物を殺さなくていい世界
  • 自然界との共存
  • 生き物は食べ物からできている
  • 無添加で農薬とは無縁の.. ect..

大いに結構。とはいえ、鹿や猪が駆除されるのには野菜を守るという大義があり、また農薬を使うのは雑草や害虫からやはり野菜を守るという大義があり、化学肥料を使うのは野菜を立派に育てるという大義があります。

私などはそれらの恩恵にひたりながら、ひそかに「現在農業は限界に来ている」などと陰口を叩いています。

それは良くない。というわけで以前から構想だけがふわふわと漂っていたForema 農園に、ようやく着手した次第です。

先日、地元の安川(広島市安佐南区)があまりにもゴミで溢れているので、清掃活動に向けた「視察」を行いました。川に降りて歩いたのはわずか100m程度。そこ
この中にとうもろこしと枝豆を埋め込む

農の実験を試みる

Forema農園は販売が目的ではありません。収穫義務の呪縛から無縁だからこそできる取り組みとして、下記の項目に挑みます。

  1. 農薬は使わない(除草剤/殺虫剤)
  2. 化学肥料は使わない
  3. 耕さない/雑草を殲滅しない
  4. 極力水やりをしない/できれば水道水は使わない

1と2は鉄則中の鉄則とし、3と4は試験的な取り組みとして一部で実践します。

土作りもそこそこに無農薬で栽培すれば、すぐに虫たちに蹂躙され、在野の草花に圧倒され、短期の間に競争に負けてしまいそうです。

運良く育ったとしても、収穫前夜に野生動物の略奪を受けてしまいそうです。(200mくらい向こうの裏山にニホンザルのファミリーがいる)

自然界からの洗礼を受け、それでも「農薬は良くない」とか「野生動物を殺さない」とか豪語し続けられるかを自らに問いたいと思います。

土づくりの実証実験/菌根菌を育てる

農園そばにあるコンポスター エリア

殺さない事で野菜は強くなる

現代農業は、殺虫剤と除草剤で敵を制圧し、化学肥料で足りない栄養を補います。が、自然界では本来、植物そのものが虫たちから防衛する強さを持ち、他の草木よりも強く大きくなる競争力を持ちます。

野菜だけが例外ではありません。本来であれば。

植物の栄養は光と水、そして土中に含まれるリンと窒素です。リンと窒素は土中細菌を介して植物の根から取り込まれるのですが、除草剤/殺虫剤(そしておそらく水道水も)がこれを殺し、また化学肥料が細菌類の出番を奪います。細菌類は野菜への殺虫成分の提供といった防衛力にも関与しているため、彼らの不在はそのまま野菜の弱体化を意味します。

なので、殺さない事で野菜を程々に育てられるかを試していきます。

ウナギの激減は乱獲だと思っていました。もちろんそれも大変大きな要因なのですが、その前段階として、ネオニコチノイド(殺虫剤)がウナギの激減に大きく関

と、ここまでは一般的な無農薬栽培、有機栽培で取り組まれている一般的な事柄です。今回Forema農園で最も試したかったのは不耕起栽培です。

耕さず、既存草花を残したままとうもろこしを植える

耕さない農業-不耕起栽培

畑を耕さない事で土中細菌相の撹乱を防ぎ、健全な土が保たれるという説があります。これを試します。

また、雑草や在野の草花と一緒に野菜を育てるとよく育つという説があります。これも試します。

耕さず、共存し、空きがあればそこには被覆作物として豆類を植えていきます。これによって競合相手のいわゆる雑草がある程度抑えられ、かつ土中の保水力を維持します。毎日水やりしなくても維持が可能かも知れず、また豆科と共存する根粒菌が(養分となる)窒素を土中に固定するので理論上は良い事だらけです。

殺さない事で土中細菌が活性化すれば、植物が取り込んだ大気中の炭素が細菌類を通じて土中に固定されるので、ささやかではありますがCO2削減にも貢献します。(※炭素も窒素も細菌類によって土中に固定される)

世界中で環境保全型農業の三原則すべてが採用されれば、控えめに言って、全世界の化石燃料からの二酸化炭素放出量を5〜15%相殺する量の炭素を土に返せるとラッタン・ラル(※)は推定している。※オハイオ州立大学の土壌科学者

「土・牛・微生物」  デイビッド・モンゴメリー著

土中細菌とマイクロバイオーム

芽生えた直後のとうもろこし。Forema農園の第一期生

Forema農園で土や土中細菌にこだわるのは、マイクロバイオーム(体内の細菌群からなる生態系のようなもの)に直結するからです。

近年急増する自己免疫疾患(アレルギーやアトピー、ぜんそくや肥満など)について、腸内細菌の撹乱が主な要因である事を明示する研究が続出しています。

「腸内細菌」と「人」の関係は、「土中細菌」と「野菜」の関係と相似であり、「化学肥料」はジャンクフードなどの「人工フード」、「除草剤や殺虫剤」は「抗生物質や食品添加物」だとも評せます。

昨今話題の腸内フローラ。世界ではマイクロバイオームという呼び名が一般的です。微生物生態系、みたいな意味合いです。 近年急速に進むマイクロバイオーム

それらを悪として完全排除するのは現実的ではありませんが、一歩距離を置き、濫用している現状を俯瞰しながら農業、そして人や動物、生態系の健康と向き合いたいと思います。

現代の慣行農業による自然界への負荷はとてもとても大きいと感じています。

Foremaのビジョンは「生態系保全と経済活動の両立」です。そこに向けた取り組みの一つとして、Forema農園でトライ&エラーを繰り返していく予定です。

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