リャンコ大王

リャンコ大王 ニホンアシカ

最終更新日:
公開日:2016/09/18

かつてリャンコ大王と呼ばれて恐れられた巨大なニホンアシカが存在しました。ニホンアシカというのは、世界に生息するアシカ(カリフォルニアアシカ・ガラパゴスアシカ・ニホンアシカ)の中の一種類で、昔は千島や樺太を含む日本近海に生息していました。過去形なのは、すでに絶滅したとの見方が濃厚だからです。

リャンコ大王とニホンアシカの歴史

多くのニホンアシカが竹島に生息していた

ニホンアシカの生息地の一つで、最後の大規模な繁殖地だったのは現在大韓民国が不法占拠している竹島で、かつてここには数万頭のニホンアシカが生息、繁殖していました。

ニホンアシカは江戸期の頃から脂や毛皮を取るために狩猟の対象となっていましたが、明治期に資源として注目され、竹島に限らず全国的に捕獲が加速。急速に数を減らしていきます。

リャンコ岩が語源

そんな背景の中、竹島に捕獲に赴いた漁師たちの間で恐れられたのがリャンコ大王です。リャンコというのはリャンコ岩(竹島の別名)からきたもので、リャンコ大王=竹島の主、という意味合いだったのでしょう。名前だけ聞くと可愛らしいですが、平均的なニホンアシカに比べても明らかに巨体で、漁師たちが船で島に近づくたびに網を食い破り、船を襲うという行為を繰り広げてきました。

猟銃を恐れないばかりか神出鬼没で捕らえようにもなかなか捕まえることができず、話だけ聞くとほとんど映画の世界。ハンターである漁師たちを大いに悩ませたと言われています。私も実際に見ましたが(※)、それはもう巨大な生き物で、絶海でこれに襲われたらさぞかし恐ろしいだろうと思います。

※剥製。体長2.88m, 胴回り3.1m, 体重750kg。世界最大級で、残存するニホンアシカの成獣の剥製はこれ1つのみ。島根県の博物館サヒメルで展示あり。幼獣の剥製に関しては、島根県の水族館アクアスなどで展示あり。

ニホンオオカミ の剥製
ニホンオオカミが絶滅したのは明治末期の1905年とされています。最後に捕獲された個体の記録が根拠ですが、その後もしばらくは目撃例はあったようです。

猟銃で仕留められる

村田銃

そんなリャンコ大王も昭和に入って遂には猟銃で仕留められます。毛皮や骨格は持ち帰られ、剥製にされて大阪動物園の納涼展で展示された記録が残っているとのこと。その後の注目度は低かったようで、近年までは天王寺動物園に収蔵されていたそう。それが貴重なニホンアシカのものだとすら認識されていなかったとも言われています。

20世紀も終わりごろになってようやくその価値に気づいた識者によって発見され、現在は地元(※)である島根県三瓶山麓の博物館、サヒメルで大切に展示されています。

※リャンコ代王の地元は島根。竹島は島根県。

ニホンオオカミ
ニホンオオカミの絶滅は、鹿害が増えた一因としてしばしば指摘されます。 しかしながら、そもそもニホンオオカミとは? (写真: By Variou

リャンコ大王

昭和初期には既に激減

竹島での捕殺が本格化したのは1900年代に入ってからですが、この頃では既に全国的な乱獲が相当に進んでおり、気がつけば生息数は激減。リャンコ大王が仕留められた昭和6年に至っては、竹島生息群を除いては全国的にほとんど見られなくなるまでに追い詰められていたようです。

第二次大戦中は一時的に捕獲はストップしましたが時すでに遅し。1950年頃にはそれでもまだ竹島周辺で何十頭かが生息していたようですが、以後目撃例は途絶え、非公式の目撃例として1970年代の報告がありますが、以後発見されていません。

絶滅の定義は最後の「野生種発見から50年の経過」が必要なので、厳密にはまだ絶滅ではないとする声もありますが、実質的には絶滅しただろうという見方が強いようです。

一方で、時々それらしい目撃例があり、どうやらまだ少数が生きているようだ、という声も根強くあります。これは実際に見た人の証言が根拠ですが、その背景には是非生き残っていてほしいと願う気持ちが大いにあるのだと思います。

オオカミ関連書籍
この頃、どういうわけか検索キーワードとして上昇を見せているニホンオオカミ。まだ生き残っているという説も根強く、ちょっとしたロマンをくすぐる存在です。

アホウドリの乱獲

アホウドリ
By John Klavitter of U.S. Fish & Wildlife Service, Pacific RegionsShort-tailed albatross fledges June 13, 2011Uploaded by Snowmanradio, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15656272

ニホンアシカの乱獲が進んでいた同じ頃、小笠原諸島周辺ではアホウドリの乱獲が凄まじいスピード行われており、630万羽とも言われた大群生がやはり激減。保護するも、こちらも時すでに遅しで戦後は絶滅寸前に。

そんな折、最後の繁殖地だった鳥島で火山が噴火し、コロニーは壊滅。以後生息は確認できず、一時は絶滅したと思われていました。それから2年ほど後に奇跡的に生き残った一群が発見され保護対象に。そんなアホウドリも現在では数が回復し、(保護と支援で)複数の営巣地に生息が広がっています。

アホウドリに比べると生息の確認が難しいニホンアシカですが、まだ生息の可能性があるのであれば、保護のいかん次第ではアホウドリのように劇的な復活への道筋が描けるのかもしれません。

イエローストーン
このところ被害が拡大し続ける鹿害(ろくがい)。これは農作物被害だけでなく、山林の荒廃も含まれます。 そしてこの被害、実は日本だけの話ではないようです。

カリフォルニアアシカについて

最後に余談ですが、カリフォルニアアシカについて触れます。アメリカ東海岸ですっかり姿を消してしまったカリフォルニアアシカですが、保護の甲斐あって近年では生息数が回復。海岸線の岩場などに再びコロニーを築くまでに至っています。

アシカが増えたことでアシカを捕食するホホジロザメもこの海域に少しずつ戻り始めました。ホホジロザメはアシカを襲うのはもちろんですが、ウミガメもすらも捕食します。

ウミガメは世界的に保護対象の生き物ですが、特定の海域内で増えすぎると海藻などを根こそぎ食べてしまうので、海中の森が打撃を受けてしまいます。が、ホホジロザメが戻ってきた事で個体数が適度に調整されることで、ウミガメによる海藻類の食べ過ぎが抑制され、結果として魚類の産卵地保護→豊かな海へと繋がっています。

近年魚の取りすぎ(乱獲)で漁獲高が激減したと言われていますが、日本近海における魚激減の遠因の一つとして、ひょっとしたらニホンアシカの不在も指摘できるのかもしれませんね。

ウナギの激減は乱獲だと思っていました。もちろんそれも大変大きな要因なのですが、その前段階として、ネオニコチノイド(殺虫剤)がウナギの激減に大きく関

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