野生の鹿や猪が国産ジビエとしてもてはやされる以前から、ジビエはアレルギーフリー食材として言及されることがしばしばありました。Foremaとして広くジビエ食材を扱っていく中で色々と見えて来た今、アレルギーという視点で国産ジビエについて言及したいと思います。
ペットのアレルギーと鹿肉については、下記の記事をご参照ください。
目次
食肉アレルギーでも食べられるという説
狩猟関係者の間では常識?
もう10年くらい前になりますが、私が一番最初に耳にしたのは「鹿は食肉アレルギーの子供でも食べられる」というもの。これは鹿だからではなく、野生動物だからという理由。人工飼料だったり化学物質に汚染されていないというのだと・・。
これだけ聞くと都市伝説のようなものなのですが、猟師さんとか山間部の人たちの経験則から出た話なのだと推察され、狩猟関係者の間では割と普通に聞かれる話です。
では実際にはどうなのか?
アレルギーの直接の原因は、食品添加物だったり化学物質などではなく、アレルゲン物質(タンパク質)。例えば食品添加物がアレルギーと関係があるのだとしたら、それは症状を悪化させる増悪要因として。
ただし近年ではマイクロバイオーム(腸内をはじめとする体内の細菌の組成)の観点から別の真相が見え始めており、人工飼料に含まれる抗生物質や治療に使われる抗生物質、その他肥育ホルモンなどは看過できない要因だと言えます。
私自身、身の回りに食肉アレルギーや重度のアレルギーの人間が多くないので深く語れませんが、別のところで実証者がいました。ペットです。
ペットにとっての低アレルゲン
近年では鹿肉のペットフードを与えているという人も少なくありません。きっかけの多くはアレルギーだといいます。ドッグカフェのオーナーはもちろん、大型犬を飼っているコアな愛好家から、小型犬を飼っている一般層まで、ペットにある程度お金をかけている人は例外なく鹿肉の有用性を知っています。中には「夫よりもペットの食費の方が高額」という世知辛い事例もありました。
この事から、健康色としての鹿肉、アレルギー対策としての鹿肉という既成事実は成立していると言っていいように思えます。ただし、これまでもこれからも「アレルギーフリーです」との表記で販売する事は難しいはずなので、自然由来の食材として、やんわりとアレルギーリスクの低さが認識されていくのが妥当なのだと思われます。
人間にとってもアレルギーフリーか
ペットにとっては「低アレルゲンの認識」で鹿肉を選択している人が一定数いる一方、人間にとっての認識はどういった状態なのでしょうか?
弊社がBtoCのECサイトであるForema (←現在はペット食材に特化)を通じて見えて来たのは、リピートしてくださる方が一定数存在するという事。ジビエは季節商品の側面が強く、メディアがジビエジビエと連呼する秋には鍋物用などのスライスがよく売れ、春だとアウトドア用途のバーベキューセットに人気が集まるなど、外的要因に大きく左右される「どこかファッション的な要素」がある点は否めません。
が、そんな中に外的要因とは一線を画した、同じような商品を不定期で購入し続けるリピーターの方が一定数いらっしゃるわけです。
牛肉や豚肉だともっと安いのに、わざわざ鹿、猪を選び続ける。そんな人たちの中には、食肉アレルギーや、中にはアトピーや化学物質過敏症の方が少なからずいらっしゃるのだろうと推察されます。(事実そういう問い合わせはいくつかあった)
アレルギーが出にくいのは鹿だけか?猪は?
アレルギーが社会問題となりつつあるなか、近年では鹿肉がやんわりと、しかし広くアレルギーリスクの低い食材として認識されて来ているように感じています。では猪肉はどうなのでしょうか? ペットフードにおいても猟師さんらの会話においても、低アレルゲンの主軸は鹿肉が前提で語られることが多いように感じています。
猪肉がそこまで注目されていないのは、ペットフードにあまり適さないという別事情があるのかもしれません。(この背景については現在関係者にヒアリング中)
食肉アレルギーだけではない
例えばアトピー
アトピーについては様々な情報があり、私はそれについて語る立場にありません。が、例えば後天的にアトピーを発症した人が食生活改善の努力をしている事例は多く、そうした人の中にはオーガニックなどの無農薬を選択したり、その流れで国産ジビエを選択する人もいるようです。この辺りは伝聞主体なので具体的な数値や実情は全くわかりませんが、農薬や化学肥料、人工飼料に対しての関心は(国際的にも)確実に高まっているように肌で感じますので、「オーガニック路線→ジビエという選択」は今後も少しずつ増えていくのだろうと思っています。
化学物質過敏症について
アトピーもこの領域に入るのかもしれませんが、化学物質過敏症という症状があります。シックハウス症候群が有名ですが、一説には現代人の10人に1人が該当するとか、国内に患者は推定100万人とか、だいぶ情報が錯綜していますが、ともあれ化学物質に過敏な人が多く存在します。
芳香剤で気分が悪くなるといった軽度のものから、新聞紙にはさわれない(印刷仕立てでインクが新しいから)、新築の部屋に入れないといった重度のもの、中にはそれが原因で人里離れた場所への居住を選択せざるを得ないひともいると聞きます。
Foremaで国産ジビエを扱っていると、中には化学物質を極力回避したいというリクエストに出会うこともあります。ここでいう化学物質とは梱包材に使われている発泡スチロールだったり新聞紙など。一般の人間から見ると日常的なものであっても、化学物質が極度に苦手な人にとっては大きな負荷になるという現実があります。
梱包においては、日本はそもそも過剰で、またマイクロプラスチック問題でも明白なように、発泡スチロールも用途を大きく制限する時期に来ているように感じます。Foremaにおいては梱包では発泡スチロールは不使用の方向で進めていますが、スライス肉は現場の事情でトレーを使わざるを得ない産地がまだあります。
また、印刷物のインクに問題があるのであれば、納品書はメール添付に切り替えた方が有益かもしれず、それはペーパーレスという時代の流れにも即しているように感じています。個人的には納品書は従来の商習慣(言い換えれば惰性)の産物だと思っており、少なくとも一般消費者のEC利用というシーンにおいては重要度は決して高くないと感じています。Foremaにおいては、今後は紙での納品書は廃止の方向にシフトしたいと考えています。
国産ジビエは本当にアレルギーが出にくいのか?
最後に、根本について。つまり野生の鹿や猪は本当に化学物質に汚染されていないのかという点について言及します。
地域差は大きいと思いますが、駆除される鹿や猪は、大抵は農作物被害の加害者の個体群に属しており、かなりの確率で野菜を食べていると推察できます。これらの野菜が農薬ゴリゴリだった場合、鹿や猪が残留農薬と無縁だとは言い難いように思います。
それらが内蔵ではなく食肉にどれだけ残留しているのかは分かりません。アレルギーなどの自己免疫疾患の一因とされる「マイクロバイオームの撹乱」要因として、農薬は決して無視できるものではないため、厳密な意味での化学物質フリーとは言えないのかもしれません。
この問題を突き詰めていくと現代農業のあり方そのものへの言及にってしまうわけですが、日本の農作物がグローバルGAPに適合していない点やこれまでのJAの施策(今必死に変わろうとしているらしい)について、消費者が広く知っていくことは引き続き重要だと思っています。そして消費者側が多くの選択肢を持てる環境が重要なのは間違いなさそうです。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。
私の知り合いに猪肉アレルギーの方がいます。猪肉の入った猪汁の汁を飲んだだけで頭のてっぺんから全身蕁麻疹が出ます。ブラインドテストしても出ますから、本物のようです。逆に豚肉は全く大丈夫でDNA的にこれだけ近いのに不思議ですが、ともかく猪肉アレルギーは存在します。また、鹿肉アレルギーの人も周りに結構います。鹿肉猪肉がアレルギーフリーというのは、言い難いと思われます。
コメントありがとうございます。「他に比べて低アレルゲン」といった表現が正しいのかもしれませんね。キャッチコピー的には語呂がよくないので、どうしても言いやすく覚えやすいフレーズが普及していくのだと思います。「ヒューマングレード」とか「欧州基準」とかも同様に。
文中の表現、少し見直してみますね。
自分は牛肉アレルギーですが、四足獣系統は抗原が近似しているため
交差反応により豚・猪・鹿 全てアウトでした(多分馬も。鳥は平気)。
ちなみに食肉のタンパク質は熱により変性し低アレルゲン化しやすく、
アレルギーテストで陽性と診断されても実際は平気なケースがままあるそうです。
自分はダメでしたが。
コメントありがとうございます。
食材選択に色々と苦労されているのですね。
近年では自己免疫疾患の主因が「マイクロバイオーム(腸内細菌叢)の撹乱」である事がほぼ突き止められているので、近い将来の改善を願いたいです。
牛肉、豚肉、鶏肉、その他どの食材もアレルギーはないですが、鹿肉だけアレルギーでした。全身蕁麻疹と高熱が出ました。アレルギー検査でアウトでした。
2年程前から急に蝦夷鹿を食べた直後だけ、嘔吐、下痢がし、貧血のような状態になります。
鹿アレルギーはあまり無いと言われ、アレルギー検査をしても鹿肉というカテゴリーの検査が出来ませんでした。
最近は蝦夷鹿とは知らずに食べてしまったらしく、同じ症状に悩まされました。
どちらかで鹿肉、蝦夷鹿肉のアレルギー検査が出来ませんでしょうか、。
検査項目に鹿が含まれるアレルギー検査につきましては、近隣の動物病院に順に問い合わせていくのが確実かと思います(大学病院含む)。もしくは先生に聞くのが一番かもしれませんね。
本文にも記載したように、鹿でもアレルギーが無いわけではありませんので、抗体の有無にかかわらず、食べて体調を崩すようであれば摂取するのは控えるのが安全ですね。