食事を変えて腸内細菌の変化を調べてみた話

2019年12月29日

食べ物を変えるとマイクロバイオーム(主に腸内細菌叢/腸内フローラ)にどのような影響が出るのか?そしてそれはだいたいどのくらいの期間で変化していくものなのか?諸説あるものの真相は不明という事で、まずは自分の体で試してみました。

当記事は下記の記事の続きです。

食事を変える前と後で腸内細菌の組成を比較

腸内細菌計測の大まかな流れ

今回の計測の流れは以下の通り。

  • 7月下旬:初回計測
  • 7月下旬:食習慣など変更、以後継続
  • 10月初旬:2回目計測 (←今回はここについての記事)
  • 11月中旬:冬虫夏草を1週間毎日摂取
  • 11月下旬:3回目計測

食事内容を変える直前の7月下旬に初回計測。その翌日あたりから食事を変えたところ、短期間で大きな変化あり。特に初回と2回目(2ヶ月)の差が明瞭でした。今回は2回目が終わった時点のものまで記載しています。3回目の「冬虫夏草摂取後」については、また今後の記事で詳細お伝えします。

わずか2ヶ月間で起きたマイクロバイオームの変化と食事内容

マイクロバイオームの変化 概要

今回変化した内容を簡潔にまとめると..

  • 酪酸産生菌が増えた(野菜と玄米とヤクルト)
  • エクオール産生菌が増えた(←これが顕著:おそらく納豆)
  • ファーミキューテス門(別名”デブ菌”のグループ)が増えた(※重要事項)
  • ビフィズス菌が増えた(おそらくヨーグルト)
  • 乳酸産生菌が微減(不明)
  • 細菌類の多様性が増した(つまり腸内環境が良くなった)

細部については当然まだまだあるのですが、顕著で明快なのが上記のものでした。中でも重要と思われるものは後で詳述します。

食事内容の変化

初回と2回目で変えた食生活の内容が下記。

  • 白米 → 無農薬玄米
  • お肉 → 鹿肉か猪肉100g〜150g程度/日(※封の破損などでロスになった自社製品)
  • 野菜 → 季節の葉物とトマトで毎日多めのサラダ。ドレッシング代わりにオリーブオイル(Extra Virgin) + 塩胡椒のみ
  • 果物 → 旬のものを週に何度か食べる(最近は廃校近くでも購入)
  • 納豆を可能な限り毎日(国産大豆で大粒をメイン)
  • プレーンヨーグルトと大さじ1杯の国産蜂蜜
  • その他 → ヤクルトを時々飲んでいる

玄米は無農薬のものがなかなか見当たらず、あっても高額なのもの。が、農薬を使用した玄米は趣旨が異なる(農薬は胚芽とぬかに残る)ので、なんとか手ごろな無農薬のものを探し出して20kgを確保した次第です。(ポケットマルシェ食べチョクでそれぞれ10kgずつ注文しました)

マイクロバイオーム変化の具体的内容

変化:エクオール産生菌が大きく増えた

無農薬玄米がマイクロバイオーム に好影響

今回の計測ビフォア・アフターの変化でもっとも顕著だった項目の一つがエクオール産生菌です。エクオール産生菌は納豆や豆乳、豆腐などの大豆製品の摂取で増えていくもので、私の場合は初回の計測に比べて2.7倍にも増えていました。

初回計測時においても既に平均値の4.8倍程度保有していたので、元々人より多く保有して生きてきたのだと思います。その上で今回、さらに2.7倍になったということで一般の人の13倍以上というところまで彼ら(?)の勢力を拡大させてしまったようです。では、そもそもエクオール産生菌とは??

エクオール産生菌とは?

エクオール産生菌は、その名の通り「エクオールを生み出す細菌の総称」です。エクオールというのは大豆イソフラボンの一つである「ダイゼイン」を、特定の腸内細菌たちが代謝した産物(=排泄物)のこと。エクオールは癌リスクの低下や更年期障害の軽減といった医療的なメリット、そしてシワやメタボの軽減といった人性的な(??)恩恵があります。

農研機構の論文が有益だったので、ひとまずメタボの部分を引用します。

肥満した成人に対して 10mg の S- エコール(※)を含むタブレットを 12 週間に渡って投与したヒト試験では,S- エコールを投与した群はプラセボ投与群に比較して血清 LDL コレステロールレベルが有意に低値を示したことが報告されている。今回のヒト試験では,女性の腸内菌叢のエコール産生能と BMI 値とに負の相関が認められた。腸内菌叢のエコール産生能力の高さは,脂質代謝の改善に寄与する可能性が示唆される。

農研機構の論文より抜粋引用 https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/ii-tamura.pdf
※ここでいうエコールとはエクオールの事です

上記抜粋では腸内でエクオールが産生される機能が高いほどBMIが下がっていく事が分かったという趣旨の事が書いてあります。この論文の全体では、エクオールによる乳がんや前立腺癌の発症率の低減、骨粗しょう症の改善についても触れられています。

つまり、納豆を毎日食べるとエクオール産生菌が増え、結果として癌(特に前立腺癌や乳)になりにくく、デブにもなりにくく、女性の場合は更年期障害の軽減、さらには骨粗しょう症の改善にも効果があるという話。

ただしエクオール産生菌の元の保有自体にかなり個人差があるそうなので、納豆の効き具合も個人差があるのでしょう。特定の乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus)がエクオールの産出の増加に貢献するという研究もあるらしく、これらの組み合わせが美容と健康に影響を与えているのだろうと推察できます。

納豆が体に良いのは日本人なら誰でも知っている事ですが、短期間での数値変化を目の当たりにすると、先人の英知に感謝しかありません!

変化:酪酸産生菌が増えた

納豆、ヤクルト、ヨーグルトも貢献している

酪酸産生菌も微増しました。微増にもかかわらずあえて記載したのは、この菌も長寿や健康に直結しているから。ここでも私は元々平均の1.8倍程度保有していたようで、それが平均の2倍近くまで増えたというのが今回の結果です。では酪酸産生菌とは何か??

酪酸産生菌とは?

また同じようなことを書いてしまうのですが、酪酸産生菌とは「酪酸を代謝する細菌類」の総称です。この細菌たちの主な食事は食物繊維らしく、今回の食事内容で言うと玄米と野菜類。酪酸(らくさん)というのは短鎖脂肪酸(酪酸/酢酸/プロピオン酸 etc..)の一つで、これが減ると免疫系の抗炎症作用が低下。ざっくり言うと不健康な状態になります。

さらに悪化すると、いわゆる自己免疫疾患(アレルギーを筆頭に、炎症性腸疾患やクローン病、肥満など)のリスクが高まります。

私は子供の頃から風邪をひかず、「バカは風邪を..」を実践して生きてきたわけですが、現実には酪酸産生菌の恩恵だったというのが真相のようです。

酪酸産生菌とヤクルト

で、ここで触れておきたいのがヤクルトです。以下、ヤクルトのページから引用します。

大腸腺腫の研究では、乳酸菌 シロタ株を投与した人の便中の酪酸濃度が上昇することがわかりました。これは、乳酸菌 シロタ株が腸内で作った乳酸を、酪酸産生菌がエサとした結果、酪酸が増加したと考えられています。酪酸には発がん促進物質の活性をなくしたり、がん細胞に細胞死(アポトーシス)を誘導する働きがあるといわれており、このような作用も大腸がんの発生を防いでいる可能性が考えられます。

http://www.nyusankin.or.jp/scientific/pdf/Nyusankin_483_a.pdf
学術情報 ~会員企業のプロバイオティクス研究のいま~ 株式会社ヤクルト本社 中央研究所

昨今、ヤクルトを飲むとインフルエンザの予防になる、といった都市伝説のような話を聞いたことがないでしょうか?今回の食事内容の変更に、ささやかながらヤクルトの導入も含まれています。実際に酪酸産生菌が増えているのを目にすると感慨深いものがあります。というのも、私の実家がずっとヤクルトをとっており、今でも実家に戻ると何セットか持たされて帰っています。今回の初回計測の時点で私の酪酸産生菌は既に平均の2倍近くあったわけですが、元々ベジタリアン寄りだったこともあるとは思いますが、毎日でないにしろヤクルトを不定期で飲み続けている点も貢献しているのだろうと感じています。

変化:ファーミキューテス門が増えた

広島県産の猪ジャーキー

バクテロイデスとファーミキューテス

ファーミキューテス門というのは、腸内細菌のすごく大きな区分の一つ。門というのは分類学の用語の一つです。「バクテロイデス門」と「ファーミキューテス門」の2つが腸内細菌の大半を占めています。

一般的にはバクテロイデス門の方が多いのですが、太った人(動物性脂肪の摂取が多い人)ほどファーミキューテス門が多い傾向がある事がわかっています。よってファーミキューテス門はしばしば「デブ菌」と表現されることもあります。

ファーミキューテス門が多くてもデブとは限らない

で、私はそのデブ菌が、人よりも1.6倍も多く、全体の6割をファーミキューテス門が占めています。ぱっと見、これは良くないです。が、ここに矛盾があります。

私自身はむしろ痩せ型で、10代の頃から体重も体型もほとんど変わっていません。にもかかわらずファーミキューテス門の保有が当初から人一倍多く、しかもさらに増えたのは、おそらくはお肉が多少増えたから。といっても鹿と猪ですが。ファーミキューテスは動物性のタンパク質で増える事がわかっています。そして間食にも影響されるらしく、となると甘党なのも一因と言えそうです。

発達障害との関連もあるのかも?

さらに言うと、私は(今思えば)昔から発達障害の傾向があり、多動とか注意欠陥ど真ん中。起業家にはこのタイプがすごく多いです。で、発達障害、特に自閉症スペクトラムとマイクロバイオームの密接な関連を示唆する研究がいくつかあるのですが、有名なケースとしてバクテロイデス・フラジリスという腸内細菌が自閉症スペクトラムと深い関わりがある(※)ことがマウスの実験で分かっています。※バクテロイデス・フラジリスを与える事で自閉症スペクトラムにみられる「特徴的な行動」が消えた

私の場合は、バクテロイデス・フラジリスの属するバクテロイデス門(グループ全体的に炎症を抑える細菌が多いらしい)そのものが人より少ないわけですが、発達障害の傾向がある人のマイクロバイオームの特性として、ファーミキューテス門の勢力が強い、ということがあるのかもしれません。この辺りの詳細は先端研究の結果を待ちたいところですね。

ファーミキューテスは本当にデブ菌か?

大切なのでファーミキューテス門についてもう少し書きます。デブや肥満は万病の元、というのはもはや共通の認識かと思います。一方、先ほど触れた酪酸産生菌は健康と長寿、そして炎症抑制(肥満改善も含む)に貢献するわけですが、実はファーミキューテス門に所属しています。

このデブ菌という表現は、分かりやすいからそう書かれるのだと思いますが、それはあくまで大雑把な傾向で、細部を紐解くと全く別の事実が見えてきます。その一例がクリステンセネラセエ科という謎の細菌です。

痩せ菌?クリステンセネラセエ科

クリステンセネラセエ科は2012年に発見されたばかりの比較的新しい細菌で、ファーミキューテス門に分類されるのですが、詳細があまり分かっていません。ただ、肥満抑制に高い効果があるという事がマウスの実験で確かめられています。「いわゆるデブ菌」に属するのにも関わらず、肥満を強力に抑制するわけです。(糖を分解して微量に酪酸を生み出すので酪酸産生菌の一種でもあります)

で、私はクリステンセネラセエ科の保有が初回計測時に既に平均の7.7倍あったのですが、2回目の計測時にはさらに11.8倍にまで増加していました。祖父も叔父も痩せ型なので、遺伝要因も大きい(※)のだと思うのですが、初期のマイクロバイオームは母親から引き継ぐ(祖母や叔母はやや太め)ので、どこで痩せ菌を受け継ぎ、培養してきたのかは謎です。(※この菌が定着するには遺伝形質が大きいとの研究報告あり)

余談ながら、クリステンセネラセエ科と同様に、肥満に関連するとされている細菌アッカーマンシア(スリムな人が多く保有/食物繊維で増える)に関しては、逆に平均よりも大幅に少ない量しか保有しておらず、ここだけ見るとやはり太り気味という判定が出そうです。同じ痩せ型の人であっても、その背景は様々という事なのかもしれません。

ともあれ、今回最も大きかった食の変更は完全玄米食への移行なので、クリステンセネラセエ科を育成したいという人は玄米によって数を増やす事が可能かもしれません。ついでに納豆でエクオール産生菌を増やしていくのがスリム化への道なのだと思います。

その他の変化について

ヨーグルトを毎日食べているおかげでビフィズス菌がいくらか増えていました。分かりやすいですね。逆に乳酸菌が微減していましたが、これはよく分かりません。元々平均よりも保有が少なく、そしてさらに少なくなるという..。

これは、その他の菌(の割合)が増えた分、相対的に減ってしまったという事かもしれませんし、他の細菌たちに制圧された結果なのかもしれません。ともあれ、食事内容をより健康的に変えていくと、目に見えて細菌類が反応していくさまが分かりやすくて非常に興味深いです。もちろんその逆も当然あるという事です。

冬虫夏草を1週間摂取したのちのマイクロバイオームの変化(3回目の計測)については、すでに結果が出ていますので、また後日別記事にてご紹介します。

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