鹿ロースのプランクBBQ

雪山でプランクBBQ -「野営の人Vol.8」

最終更新日:
公開日:2018/03/11

急速に春めいて来た2018年3月7日、西中国山地国定公園の一部、広島県の旧羅漢山山頂でプランクBBQを行って来ましたのでレポートします。

旧羅漢山山頂にて

旧羅漢山山頂
標識が雪に埋もれた旧羅漢山山頂。朝一は氷点下ながら山頂にも春の足音。

旧羅漢山というのは、広島県の最高峰である恐羅漢山のすぐ隣にある、姉妹のような存在の山。恐羅漢山頂からも30〜40分くらいで到達できるのでアクセスは良いと言えます。この日はバックカントリー(スノーボード)の合間の栄養補給として、厳冬期終わりの誰もいない山頂で鹿肉プチ野営を堪能した次第です。

今回用意した食材はエゾシカのロース。雪と最も相性が良いであろう食材として選抜しました。

恐羅漢バックカントリー
今季3度目の最強寒波開け。快晴予報となった2018.2.14、恐羅漢の山頂トレッキングを行いました。この冬実に4度目で、ようやく会心の快晴かつ完璧な樹

プランクBBQ開始

手順1.火を起こす

コンロに着火
油の染み込んだ紙で炎上するコンロ。この時間帯は強風で難儀。

当たり前ですが、まずは火起こしから。雪山の山頂エリアは時に風が強く、ここはなかなか苦戦するところ。前日に事務所でエゾジカを料理した際の「油を吸い取った油紙」たちがここで活躍する事となります。

で、見ての通り、アウトドア用のコンロを持参しています。通常の登山では重くなるのでこういったものは持って来ないものですが、プランクBBQのためにわざわざこれをセレクトしています。

炭も同様で、ガスバーナーでは代用しづらいために用意。となると火バサミが必要で・・。と、結局このためだけに荷物がかさばるという苦難がありました。

手順2.火を鎮めて大人しくさせる

コンロの火を鎮めたところ
炭を分散させ火を沈める。この状態でセッティングし、ゆっくりじんわりと加熱していく。

着火後はしばらく炭火を踊らせ、少しずつ鎮火させていきます。火が大人しくなったら分散させ、均等な弱火状態を作ります。

手順3.プランクBBQの板が登場

プランクBBQの板と杉の葉
雪上で出番を待つプランクBBQの板。杉の葉は演出。

火が収まったところでプランクBBQの板が登場します。これは前の夜から水に浸していたもので、そのまま水を軽く切った状態でジップロックに封入。ザックに忍ばせてここに登場となりました。

視覚的には雪と杉板は相性良し。満を辞してコンロにセット! といっても置くだけですが・・。

手順4.食材を乗せて、できればカット

板の上の鹿ロース
プランクBBQの板に乗せられた鹿のロース。ここからナイフで切れ目を入れて置くと熱の通りがスムーズ。

板が乗ったら鹿のロースが登場します。プランクBBQの1人前用に前日にロースブロックから切り出したもの。熱の通りを良くするため、ナイフで大きく切れ込みを入れておきます。本来であればここで野菜類も一緒に設置するのですが、今回は荷物の都合(※)から省略。(※カメラやスノーシュー、椅子やトレッキングポールもあったため)

この状態で蓋をして15分〜20分くらい放置します。

手順5.蓋をしてじっと待つ

アルミホイルで蓋
アルミホイルで蓋をする。しっかり密閉したい。

本来であれば蓋つきのコンロ、もしくは蓋となりうるものが良いのですが、ない場合はアルミホイルで代用することも可能です。

・・そして待つこと15分ほど。ホイルを破って火の通り具合を確認します。

ホイルを剥がす
アルミホイルを破って火の通りを確認。良い感じだがあと一歩。

これは上々! が、まだまだ余熱で寝かせる必要がありそう。この場合、アルミホイルだと一度破ったら次がないので、予備のホイルが必要となります。特に雪山では一気に熱が逃げてしまうため、多めの持参は必須です。

そしてさらに7,8分放置。

旧羅漢山山頂からの風景
旧羅漢山山頂からの風景。これは島根県の奥匹見峡方面。数年前にボーダーグループ7人が遭難したあたり。(みな無事生還した)

熱が通るまで、あたりの写真を撮影しながら時を過ごします。ピラミッドのような尖った岩は、山頂にある巨石群で山頂のアクセント。

鹿ロースのプランクBBQ
鹿ロースのプランクBBQ。手前が焦げてしまっているが、それ以外はいい感じ。野菜があるとさらに彩が増す。

そうこうしているうちに完成。見れば少し焦げてしまっていますが、許容範囲内。

手順6.持参の調味料で味付け

鹿ロースと和風ソース
火が通ったら持参のソースとなじませる。板はおそらく再利用は難しいのでこのまま燃料に。

お肉の表面一部および板の端っこは焦げてしまいましたが、お肉全体としてはいい感じでほんのり赤みも残り、見た目にもジューシーな焼き上がりとなりました。

ここで前日事務所で用意した和風ソースが登場。岩塩と合わせてお肉になじませることで、雪山山頂に鹿ロースのオーブン焼きが登場する事となりました。

誰もいない晩冬の雪山で鹿肉を1人・・

と、この瞬間! 老人の男女登山グループがまさかの登場。こんな季節のこんな時間に!

とは言え、見れば季節はもう3月初旬。時刻も10時を回っています。春山登山の季節が始まったのだと感じながら、熟年の恋に水を差さぬよう、静かにその場でお肉を平らげた次第です。

ちなみに、鹿肉は板が焦げた周辺はカリカリになっていましたがそれ以外はしっかりやわらかジューシーで美味なるもの。火の通りが甘い部分はさらに余熱でじんわり加熱しながら美味しく頂くことができました。

上記と同じ内容をForemaのレシピコーナーにも記載しましたのでご参照ください。

また、プランクBBQについては、下記の記事にも詳しく記載しています。

鹿肉でプランクBBQ
島根県の猟師さんに会いに行く途中、中国山地の真ん中で日がくれてしまったため、野営を行いました。場所は広島県と島根県境にある八幡湿原近く。臥竜山と掛頭山
鹿モモ肉でプランクBBQ
先日発売された「毛利の鹿BBQセット」の商品撮影ロケでプランクBBQを行いました。

エゾシカのお肉について

エゾシカロース

エゾシカは国内最大の草食動物。ホンシュウジカよりも一回り以上大きく、味わい深さもひとしお。特に雪との(精神的な)相性は抜群で、雪中キャンプでこそ味わっていただきたい逸品です。

尚、本州では高山帯を除いて少しずつ雪が溶けてくる季節ですが、北海道の場合、このあと3月4月も引き続き積雪が残り、ようやく新芽が芽吹くのは6月頃、という地域も少なくないそうです。よってその時期までエゾシカはやせ細っており、全く食用に適さないとされています。(よって2月以降の在庫は激減します)

本州の鹿が春〜初夏に春を迎えるのに対し、エゾシカは同じ時期にもっとも過酷な飢餓状態を迎えているという、日本ならではの機構のダイナミズムを感じさせる話です。

エゾシカロースでは高級店でも人気商品なので単価は高めですが、モモ肉であれば比較的ローコストで購入可能なのでオススメです。

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