Foremaでは「手作り犬ごはん」のレシピを不定期で掲載しています。ペット用の食材を販売しているので販促としては当然の流れでもあるのですが、ここではその背景についてお伝えできればと思います。
犬の手作りごはんレシピ↓↓
https://blog.fore-ma.com/?post_type=recipe
目次
既製品以外の選択肢を提示したい
その食べ物で天寿をまっとうできるか?
Foremaでペット用の手作り食レシピを展開している理由。それは既存産業由来の既製品以外の選択肢を提示したいという想いがあります。ささやかな抵抗みたいなものかもしれません。
手作り食にチャレンジしているユーザーさんたちは、既存のペットフードという選択を捨てている時点で概ね同じベクトル上にある場合が多いです。 以前、弊社サービス「ペットさん定期便」のユーザーヒアリングをした際に分かったのは、過去に病気で愛犬・愛猫を亡くしている、もしくは現在リアルタイムで健康問題を抱えている、という原体験を抱えている人の割合が高く、「既製のペットフード以外の選択肢」に対しての需要がとても高いということ。
大手のペットフードメーカーに対して疑心暗鬼なっている方も多かったです。 その声を代弁するならば「その食べ物で健康が維持できるの?」「その食べ物で天寿がまっとうできるの?」という事だと理解しています。
人生の伴侶としてのペット
昨今は家族の形態が変わり(※)、シニア女性が人生の伴侶並に愛犬を愛ているという事例がとても多いです。ペットではなくパートナーという呼び方が増えてきたのはまさにそういう背景によるものだと思いますし、となるとペットたちの存在価値はかつてないほど重いものだと気づかされます。
人生後半の幸福度に直結するという意味でもペット産業は「もう一つの福祉産業」だと言い換えても良いのでは無いかと考えています。
(※男性がいばってばかりでしょうもないので存在価値が大いに下がったという背景もあるかもしれませんが、ここでは割愛!)
既存の価値観はメーカーの価値観
企業にとって生産性や効率、利益率は最重要項目です。そこの改善に注力し、最適化して大きくなってきたのが既存の大企業です。
ペットフードを含む加工食品の場合、安く仕入れて大量に作り、大量に量販店に並べてもらうというビジネスモデルになります。品質の均一化は重要事項で、品質事故は最も避けなければならない事。その結果、よく分からない素材にいろいろ混ぜて、安定剤や香料、着色料、保存料という従来の量販品フードに行き着くのは「市場のニーズ」に応えた先にある当然の帰結だったのかもしれません。ましてペットフードは分類上は食品ですらないという..
こういう餌を食べ続けていると何割かは病気になり、動物病院でロイヤルカナンやヒルズを勧められるという流れです。
お医者さんの情報は古い事が多い
ロイヤルカナンやヒルズを、獣医さんが勧めるから大丈夫と思う人は多いように感じます。昔の私もそうでしたし、本当に直近だと叔母がそうでした。
確かに量販店に並んでいる廉価品と比べると良いのだと思います。ただ、「企業戦略として獣医チャンネルで販売するというマーケ手法をとっている」という点は知っておいた方が良く、また長期保存が前提である時点で既存産業の延長線上にあるという事は念頭に置いておく必要があります。
冷凍や塩漬けを除けば、長期保存は自然界の法則に逆らっています。そこにはどうしても無理が生じてしまいます。ロイヤルカナンやヒルズという選択肢は当然あるべきものだと思いますが、それ以外の選択肢が求められているのが昨今のペット事情だと言えます。
そんな中、一般的にお医者さんは情報のアップデートが非常に遅いです。激務という背景もあるでしょうし、いまだレガシーな領域/構造になっている事も大きな原因かもしれませんが、ともあれ、ネット経由で新たな研究成果がBBCなどで報道されても次の学会で取り上げられるまでは情報のアップデートをしない(もしくはそれでも情報のアップデートにはもう興味がない)という(人間の)ドクターを、実際に何人か見ました。
日本人はなぜか権威に弱く、医者や教授のいう事を盲信しがちなのですが、人間にしろペットにしろ、お医者さんに分かっていない事は未だ多く存在します。※にもかかわらず、絶対に「分からない」と言わない医師も多い..
マイクロバイオーム の視点
添加物や化学物質による撹乱
ペット犬の病気で増えているのが「涙やけ」や「アレルギー」、そして「アトピー」など皮膚の問題ですが、どれも自己免疫疾患の類であり、近年急増/悪化している理由はよく”分かっていない”事になっています。
ここで腸内のマイクロバイオームについて触れます。マイクロバイオームとは体内の微生物群(生態系のようなもの)の総称で、腸内フローラと概ね同じ意味です。先端研究の領域ではありますが、自己免疫疾患はほぼマイクロバイオームの撹乱が原因である事が突き止められています。
マイクロバイオーム撹乱の原因は添加物や抗生物質、農薬などの化学物質、そして精神的、物理的ストレスなどですが、感染症治療による抗生物質投与を除けば食べ物が主因だと言えます。
添加物という時点で既存大手メーカーのペットフードは購入の選択肢から除外される筆頭となります。手作り食に挑んでいる人たちの多くがこの視点です。そういう人たちは食材選びから全て自分の手で行う事を大切にしています。
食材はスーパーに売っている野菜やお肉から始まり、熟練するに従って畜産でないお肉や無農薬/有機野菜にたどりつく人が増えています。この流れでようやくForemaの「ペットさん定期便」も登場します。
無添加のお肉とは何か?
お肉は加工品ではないので、無添加のお肉という言葉は正確ではありませんが、Foremaでは畜産をへていないお肉を区別するために「無添加のお肉」という表現をする事があります。
私たちがスーパーで購入しているお肉は通常は畜産業界経由で届いたものです。良好な環境で良質な資料で育ったブランド肉も出回ってはいますが、それらは高額なもの。一般的な価格帯のものは輸入物である事が多いです。畜産業界においては人工飼料に抗生物質を混ぜる事は普通に行われており、お肉に残留しても消費者の健康に影響のない範囲という事で農水省が基準値を定めています。ただしその基準は(制定された時期的にも)マイクロバイオームの視点は考慮されていないように思えます。
資料に抗生物質を混ぜるのは、そうする事でなぜか成長が早まるからです。農水省が使用基準を定めている国内はまだましで、アメリカではこのあたりの基準はだいぶゆるいようです。肥育ホルモンや避妊薬の使用についても緩く、お肉への残留だけでなく、それらが排出された後の生態系への残留についても全く考慮されてないのが実態のようです。(EUでは規制あり)
米食品医薬品局(FDA)の報告によると、米国で2017年に販売された家畜用抗菌薬(抗生物質や抗寄生虫薬を含む)は、1万トンを上回る。世界全体で10億頭のウシが飼育されていることを考えると(さらにニワトリやブタ、ヒツジ、ウマなどもいる)、恐ろしい量の家畜用の薬剤が海や川に入り込んでいると、専門家は言う。
こうした薬剤が野生動物に及ぼす影響は、かつて考えられていた以上に幅広いことがわかりつつある。避妊ホルモン剤による魚のメス化、鎮痛剤によるハゲワシの中毒(※インド)、さらに最近の研究では、抗寄生虫薬によって昆虫の体が小さく、病弱になっているとの報告もある。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/121100721/
ナショナルジオグラフィック
また、牛の消化に合っていないトウモロコシを大量に与える時点で牛のマイクロバイオームの撹乱に加担しており、結果として人工飼料への微量配合ではない、投薬としての抗生物質使用につながっている場合もあるそうです。
現代の家畜は、一生のほとんどを自然な環境や食物供給(牧草)から完全に切り離されて暮らす。乳牛の消化器形に合わないトウモロコシによって太らされると、消化管障害が引き起こされ、慢性的な程悪制度炎症に加え、抗生物質の継続的な投与を要する急性の胃腸感染を引き起こす。
腸と脳 エムラン・メイヤー著
こうした背景の中、手作り食を導入して食材選びをしても牛肉や豚肉にアレルギーが出て、最後に鹿や猪のお肉にたどりつくというペットオーナーが増えている次第です。
鹿や猪は、そのペットがアレルゲンを持っていない(場合が多い)点ももちろん重要なのですが、抗生物質や添加物、人工飼料という、マイクロバイオーム撹乱要因から切り離されている点も重要だと感じています。
蛇足ながら「アレルギーは、アレルゲンを持っていても必ずしも発症するとは限らない」とは、知人の獣医さんの言葉。
無農薬野菜という選択
お肉を自然由来のものにするのと同様に、野菜も無農薬/減農薬という選択をするペットオーナーが増えているように感じています。農薬はそれ自体が人体に有害であり、マイクロバイオーム 撹乱の要因になるわけですが、それにとどまらず農地のマイクロバイオーム (土中の細菌叢)をも撹乱し、結果として農作物の栄養分や抵抗力を下げ、さらなる病気・害虫の発生を誘発して農薬の使用料を増やさざるを得ないという原罪を抱えます。
ここに除草剤と化学肥料が加わる事で土が死に、生態系に打撃を与え続ける有害産業と化しているのが国内の農業事情と言えます。
ペットの手作り食ために無農薬野菜を選択するという事は、ペットの健康だけでなく、生態系そのものへの貢献に直結し、いわば既存産業/既存農業へNoを突きつけるという点で非常に重要だと考えています。
Foremaで犬ごはんレシピを展開している理由がまさにここです。
消費者の選択が産業を変える
「ペットさん定期便」は、気がつけば問題意識の高いユーザーの方が多く集まるサービスとなってきました。そういう人たちや、ユーザー予備軍の人たちに対し、手作り食という選択肢を入り口として「本当にその食材でいいのか?」を深く追求して欲しいという願いがあります。
今の産業界があるのは、前の世代がそれを良しとした結果です。当時は良かれと思ったのかもしれません。
時代が変わり、いくつか方向修正しなくてはならなくなった時、大きくなりすぎた既存産業に自浄作用を求めるのは現実的ではありません。
それを変えるきっかけは消費者が選択を変える事。売れない商品は淘汰されて市場から消えていくわけですが、既存大手メーカーのペットフードや、農薬/化学肥料ゴリゴリの農作物を市場から撤退させる圧力は必要なのものだと断言できます。
長くなりましたが、そういう背景があって、犬の手作りごはんレシピを展開しています。
生態系にとって最良の選択を求めていくと、結果的に人やペットにとっても良い選択になるのだと思います。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。