昨今話題の腸内フローラ。世界ではマイクロバイオームという呼び名が一般的です。微生物生態系、みたいな意味合いです。
近年急速に進むマイクロバイオーム 研究
ヒト・マイクロバイオーム 計画
現代の医療では十分に説明ができない現象に、どうやら腸内細菌が関与しているらしいという学説は昔から存在していました。が、なかなか証明できない。そんな中、2007年にアメリカの国家プロジェクトとして始まったヒト・マイクロバイオーム計画。次世代型シーケンサーと呼ばれる解析機器の登場で、腸内にどんな種類の細菌がどれだけ存在し、どういう作用をしているのかという部分の解明が大きく進みはじめました。
うつ病は心の病気ではない
数多くのボランティアやモニターのサンプルを研究者らが解析していった結果、驚くべき結果が次々と解明されていきました。例えば心の病とされてきた鬱(うつ)病は腸内細菌の組成に大きく左右されているという事実!(=炎症が直接の原因とわかってきたが、その炎症自体をマイクロバイオーム が左右する)
鬱のマウスの腸内に健康なマウスの便を移植すると鬱が改善し、逆に鬱マウスの便を健康マウスに移植すると鬱になるという驚くべき事実も複数の研究で報告されています。
これは肥満や炎症性の腸疾患などにも共通し、さらには脳の問題とされて来た自閉症スペクトラムやアルツハイマーでもどうやら同様であるらしい事がわかり始めています。マウスと人は必ずしも同様ではないものの、アメリカの医療現場では人における便移植も多数行われており、多くの成果を積み上げています。
マイクロバイオーム の撹乱
そんな中、腸内細菌の組成(マイクロバイオーム)に最も影響を与える要因として、食べ物や添加物、農薬などの化学物質、医療行為における抗生物質が指摘され始め、それらの因果関係を明らかに示唆/解明する研究結果が多く発表されはじめています。
これは「○○パン」の防腐剤が危ないらしい、みたいな都市伝説が、実際に先端研究の分野で証明可能になって来たという事だと理解して良さそうです。
世の中には危なそうな物質はたくさんあって、しかしながら「健康に影響のない範囲」で使用されている事が一般的だと解釈しています。食品添加物の類などはまさにそれ。
では、健康に影響のない範囲の線引きはどこなのか?
健康被害が目に見える形で表面化する前段階で体内に何らかの影響が出ていたとしても、これまでは誰もそれを見つける事ができませんでした。また、仮に何らかの健康被害が出たとしても、容疑者が多すぎて主犯の特定ができない(因果関係が証明できない=科学的ではないと逆に断罪される)。
ところが腸内細菌は正直です。食べたものによって特定の細菌群が増え、特定の細菌群が減る。「○○パン」だけを食べ続けたグループと、全粒粉のパンを食べ続けたグループでマイクロバイオームの組成を比べると、明暗はくっきり分かれるのだろうと考えます。
食べ物が腸内細菌の組成を変える
実際に「○○パン」で実験が行われたわけではないのですが、類似の研究として肉類を中心とした「動物性高脂肪食のグループ」と「野菜を中心とした食物繊維食のグループ」での比較実験が行われています。結果、腸内細菌郡は同一グループ内で同一の傾向に偏っていくことが証明されています。(ただし成人後の組成変化は短期的なもので、維持するにはそれを食べ続けなければならない)
この時の研究では主に肥満に対する調査の一環でマイクロバイオームの実証実験がなされたわけですが、やろうと思えば特定の食品や特定の添加物に対しての調査も可能なところが非常にセンシティブです。アメリカで下手にこれをやってしまうと産業界からの圧力で生命もろとも消されかねないような危うさ(=既存経済への破壊力とも言える)を感じます。
では、実際に食べ物を変えると腸内のマイクロバイオームにどのような変化が起こるのでしょうか??
7月から食事と環境を変え、検査機関に依頼をして実査に自分の体で実証実験を開始しました。
続きは次回。↓↓
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。