人工林。

コリンセラの増やし方について

最終更新日:
公開日:2022/01/15

どういうわけかコリンセラの増やし方の問い合わせが増えているので(※)簡単に書きます。※追記:一部のコロナ報道の影響と分かりました..

(当記事は関連文献および、自社での16S rRNA解析事例を元に執筆しています)

コリンセラとは何か?

コリンセラ属という存在

コリンセラというのは細菌の1種で、厳密には「コリンセラ属」というグループの名前です。コリンセラ属の中には5種が分類されているのですが、細菌の分類は頻繁に変更があるので、1年後には変わっているかもしれません。

コリンセラ属は、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属)と同じアクチノバクテリア門に分類されるグループであり、イメージとしては「何となく良さそう」に聞こえます。が、アクチノバクテリア門の中には結核菌をはじめ、感染症の原因となる細菌たちも一定数存在します。簡単に善悪で割り切れないのが細菌たちの世界です。

宿主の味方!?コリンセラ ステルコリス

さて、コリンセラを増やしたいと願っている人たちは、おそらくは「コリンセラ ステルコリス」 のことを探しているのだと思います。これは酪酸産生菌の一種でもあり、腸疾患や外分泌膵機能不全など、不具合のある個体で減少する報告がある一方、回復と共に増加していく事が報告されています。

その働きについては未知な部分が多いですが、宿主にとって有益な存在と考えられています。

eubacterium ユーバクテリウム
犬の腸内細菌/腸内フローラについて語るシリーズ。今回は、この頃よく耳にするようになった酪酸菌(らくさんきん)について。 ※当記事は関連文献および

コリンセラは増やせるのか?

コリンセラ属は不明な点も多く、多くの文献を探ってみてもコリンセラ属だけを増やす方法というのはまだ見当たりません(試験管レベルではいくつかあり)。強いて言えば、「健康であれば自然と一定数保有できますよ」といった逆説的な回答になります。

では、健康とは何か? 腸内細菌の視点でいうならば、それは腸内多様性の向上であり、保有する細菌の種類を増やし、かつ偏りの少ない分布(=特定細菌の1人勝ちを許さない状況)を維持する事だと言えます。

アクチノバクテリア門は、ファーミキューテス門と同じテッラバクテリア(Terrabacteria)というグループに分類されるため、ファーミキューテス門のケアと無縁ではないとも考えられます。

ファーミキューテス門のケアとしては、良質なタンパク質と幅広い食材、そして(人であれば)食物繊維主体の食事となります。良質なタンパク質とは薬漬けの家畜(特に米豪)やハムなどの加工品は避ける事が第一の選択肢です。

細部は省略しますが、この方向の行き着くところは精進料理となります。

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エンテロバクター科(大腸菌など)
「善玉菌を増やしたい。」「どの菌がいいの?」 そういったお声をしばしば頂きます。お気持ちすごく分かります。が、問題はそう簡単でもありません。 いわ

コリンセラが目的だと道を誤る

コリンセラ アエロファシエンス

「コリンセラ ステルコリス」よりも多く検出されるコリンセラ属の細菌としては、「コリンセラ アエロファシエンス」(以下 C.アエロファシエンス)が挙げられます。人の腸内に限らず、犬や猫の腸内でもコリンセラ属の中では代表的なのが C.アエロファシエンス だと言えます。

ただしこの細菌は炎症を加速させるという、穏やかならない性質があります。炎症の加速は時に暴走につながり、自己免疫疾患のリスクをはらみます。事実 C.アエロファシエンスはリウマチを加速させるとか、IBD(炎症性腸疾患)の1パターンで激増しているなど、必要以上の増加は望ましくない存在と言えます。

一方で、酪酸を産生する株がいるとか、有害な二次胆汁酸を分解し有益なウルソデオキシコール酸(UDCA)を産生する事も分かっており、その存在はトリックスターのような幅広さがあります。

また、先に触れた部分と若干食い違うのですが、コンドロイチン硫酸で増加したという報告もあります。コンドロイチン硫酸はサプリとして市販されていますが、一方で硫酸塩還元菌(デスルフォビブリオ属など)との組み合わせで、有害な硫化水素が生み出される要因となります。

※硫化水素:人体にとって有害で、大腸炎や大腸癌の原因になる可能性が報告されています

また、食物繊維が足りていない場合にC.アエロファシエンスが増えてしまうという研究報告もあり、決してヒーローではないという点には留意が必要です。

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細菌は単独の存在ではない

テレビなどで特定の乳酸菌などが特集されると、そこだけに注目してしまいがちですが、見るべくは環境全体であり、単一の細菌だけを見ていると選択を誤ります。(そもそもテレビを見ていると人生を誤ります)

単一種ではなく環境全体を捉えるという指向は、細菌に限らず生態系全般に共通する事項のように思えます。

例えば絶滅危惧種のトンボを増やしたいのであれば、トンボ単体を守る事では解決には至らず、むしろ周りの水辺環境や、植物相、そこに住む餌となる昆虫、さらに昆虫らの餌と微小な生き物など、生物群系全体の育成が欠かせないのと同様です。

腸内細菌のことをマイクロバイオーム(ミクロの生物群系)と表現するのにはそうした理由があります。

「コリンセラを増やしたい」→「コリンセラなどが増えやすい環境を作る」というのが妥当な方向で、その上で「そもそもコリンセラが目的でいいんだっけ??」と本質に気づく事が正解と言えます。

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