ペット犬の長寿化に伴い、癌をはじめとする重篤な疾患が増えてきました。昨年実施した大学との共同研究の中で、副産物的に犬の癌と関連しそうな”気づき”があったので、参考程度にさらっと記載します。
ペット犬が鹿肉を食べ続けるとどうなるか
ペット犬の食の研究の一環として、ベースの総合栄養食にプラスして毎日鹿肉を食べ続けると腸内環境がどう変化するか? といった部分を調査しました。
研究の細部はここでは記載が難しいのですが、ビフォアとアフターで見られた変化の一つとして、どうやらブラウティア属が増えているようだ、という事がわかりました。(クラスタリングによる結果。検体の母数が少ない点、調査期間が短い点、厳密な統計の有意性の点 etc.. からあくまで参考程度の情報として捉えてください)
ブラウティアという存在
ブラウティアというのは腸内細菌の一種で、ファーミキューテス門のなかの1グループ(ブラウティア属)。人間の腸内にも多く存在する細菌ですが、とくに日本人の腸内では優勢な細菌とされています。
これは日本人が摂取する事の多い麹に由来している可能性があるそうなのですが、他にも内臓脂肪面積の少ない人にはブラウティア属が多いという研究結果もあります。
また、ブラウティア属のコッコイデスという種の細菌は、大腸癌や糖尿病、肝硬変などの患者の腸内では数が減る事が分かっており、複数の疾患との関連が指摘されています。
鹿肉を食べた結果ブラウティアが増えた
そんなブラウティア属が、一定期間鹿肉を食べ続ける事でどうやら増えているようだ、というのが冒頭で触れた“気づき”です。
これは鹿肉がブラウティア属を増やしたとも考えられますが、高タンパク低カロリーな鹿肉摂取により内臓脂肪が減り、結果としてブラウティア属の増加に繋がったとも捉えられます。
ブラウティア属が直接癌に関与しているというより、内臓脂肪の増減と何らかの関係があると見た方が自然なように思います。
上述のブラウティア属に関する知見は人間の腸内でのものですが、人間と多くの細菌を共有しているペット犬の場合、人間で得られた知見がいくらかは当てはまると考えられます。
少なくとも鹿肉摂取でブラウティア属が増えているというのは、高タンパク低カロリーというキャッチコピー通りの効用で、とても分かりやすい事例だと言えますね。
関連商品: オススメの鹿肉一覧
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。