牛のいる牧場の風景

抗生物質と人工飼料のお話

最終更新日:
公開日:2020/12/12

漠然と「アメリカ産のお肉=肥育ホルモン」とか「危ない人工飼料..」、そんな漠然とした不安をお持ちの方も多いはず。その表現が正しいかどうかは別として、アメリカの畜産業界は薬剤や資料に対しての規制が緩いという実情があります。

そんな流れで、ここでは人工飼料と抗生物質について触れてみたいと思います。

人工飼料とは何か? それは悪いこと?

家畜である時点で、資料は人工と考えて良いでしょう。問題は、それがどこから来たか。何が含まれているか、という点ではないかと思います。

牛の場合、本来の飼料は牧草ですが、実際にはとうもろこしを原料とした飼料が多かったりします。牧草の場合はそれに含まれる農薬の問題、またとうもろこしの場合も農薬や遺伝子組み換え、そしてそもそも牛はとうもろこしを食べるよう進化していないという背景は重要です。

英国に端を発したかの狂牛病は、飼料の肉骨粉が原因でしたが、元の食性を無視した飼料という点においては、(あくまで観念的なものですが..)とうもろこしも同じ軌道上にあると評せます。

人工飼料に含まれる抗生物質

家畜の飼料には、微量の抗生物質が含まれている事が多いです。これは感染症の治療という理由での使用ではなく、「なぜか成長が早く、大きくなる」から。

家畜飼料への抗生物質の配合は日本でも行われており、基準値はアメリカよりは厳しく、欧州よりは緩いというもの。欧州はそもそも禁止となっており(※)、それを過剰という声もありますが、ともあれ欧と米の違いが出ている興味深い事象だと言えます。

※欧州が禁止した理由は薬剤耐性菌(=後述)の問題を考慮したため

抗生物質が成長を促す?

抗生物質が発見されたのは1920年代のお話ですが、製剤として量産され世に登場したのは1940年代の事。抗生物質の投与が家畜の成長を促すことは、アメリカの研究者たちの間では比較的早い段階でから知られていましたが、理由はよくわかっていませんでした。

が、近年の研究で「細菌類との戦いが有利になることで、本来そこに費やされていたエネルギーが成長に使われるようになった」という説が浮上しています。

もちろんそれは家畜だけのお話ではありません。

第二次大戦以降、日本人の背がどんどん伸びているのはご存知かと思います。これは、「正座をしていた文化」から、「椅子と机を使う欧米式の生活様式」に切り替わったからという説が有力でした。

その側面は当然あるでしょう。

が、生活が欧米式に切り替わった後の70年代に比べても、現在の平均身長は伸びており、女性のバストサイズもどんどん大きくなっているのだそうです。

これは日本だけでなく先進国共通の事象で、栄養価が高くなったからだとも言われますが、飽食の時代になって以降も数値が伸び続けているため、別の事情があるのではないかとの仮説で研究をした研究者がいます。

結果、ここでも「抗生物質の投与と成長に相関関係あり」という研究結果が出ています。具体的には、生後まもない段階での「抗生物質投与群」の方が、体格や成長の伸びが早く大きかったというもの。

マウスでの実験および、人間の追跡調査で明らかになっています。

細菌が減る事でエネルギーが節約できた可能性

その研究者は、抗生物質投与で成長が早まった理由として、体内の細菌たちの存在を指摘しています。幼少期は、良い細菌、悪い細菌ともどもまとめて体に取り込み、それらは淘汰を繰り返しながら体内免疫系とのやりとりを経てマイクロバイオーム(体内の微生物生態系)が組成されていきます。

この時、抗生物質の投与によって宿主に不利な細菌群が制圧されてしまうことで、本来これらと戦うことに費やされていたエネルギーが”節約”でき、その分を成長に回すことができるという仮説が成立しています。

これだけ聞くと良い話なのですが、抗生物質は悪い細菌だけでなく、良い細菌もまとめて滅ぼしてしまいます。

抗生物質という言葉はご存知だと思います。ただ、具体的には何なのかはあまりよく分からない人も多いのではないでしょうか? ましてそれが健康や環境/生態系に

決して良い事ではないかもしれない

体格が良くなったと同時に、自己免疫疾患の増加も報告されています。これは本来免疫系に対して重要な役割を果たしていた種の細菌類の減少もしくは不在に起因する可能性が高く、平たく言えば免疫機能の組成段階で不具合が生じたということ。

二次曲線的な伸びを見せ続けている自己免疫疾患の原因として指摘されているのがまさにこの点で、幼少期の抗生物質投与と自己免疫疾患には明らかに正の相関がある事が複数の研究でわかっています。

また、悪いとされている細菌が、本当に悪い細菌かどうかは実際には判別しづらいという実情もあります。例えばピロリ菌(の中の特定の種類)は、間違いなく胃癌の発生に関与しているのですが、それは中年以降の話で、幼少期にピロリ菌が不在の子供は小児喘息の罹患率が高いという研究結果があります。

小麦
2012年のカナダでの話。二十歳の女性がボーイフレンドとキスをした直後に死亡するという事故がありました。原因は、男性が数時間前に食べたピーナッツバター

体格はよくなるが、マイクロバイオーム の組成にダメージ

まとめると、抗生物質の投与で家畜も、人間の子供たちも体格的な成長が加速しますが、一方で体内のマイクロバイオームの組成に問題が起きるリスクが上昇し、結果として内側の成長(というか健康)に問題が起こるという構図です。

家畜においてはとうの昔にこの問題にさらされていたと見て良いのかもしれません。

残留抗生物質はあるか?

人工飼料に含まれる抗生物質(=微量)が、実際にどの程度食肉に残留するのかは分かりません。

一方の治療用途の構成物質使用においては一定期間の残留があるため、厚生労働省では抗生物質の残留基準値が設定されています。もちろん国内ルールです。米豪加(アメリカ・オーストラリア・カナダ)のお肉の基準はもっとゆるいです。

ファミレスのメニューで、下の方に小さくお肉の産地が書いてある事があるのですが、米豪加ばかりの印象があります。(基本的にファミレスで食事をしないので違ったらご指摘ください)

これは米豪加のお肉を使うファミレスがけしからん、という意味ではなく、ただ「安さ」の背景には事情があるという事です。

地球環境をぶっ壊してまで育成している大型哺乳類たちを格安で食べるという行動様式は地雷そのものだと感じています。

人も人間も、増え続けるアレルギー。原因はアレルゲンと呼ばれるタンパク質であるとされており、対策として低アレルゲンの食事に切り替える方法が一般化していま

抗生物質汚染について

自然界に溶け出す抗生物質

家畜の人工飼料に抗生物質が含まれることは、お肉の品質とは全く別のところにも問題を生じさせます。それが抗生物質汚染です。

資料に含まれた抗生物質は、やがて排泄物としてのに流れ、水系に流出し自然界に溶け込みます。

抗生物質はそこにある細菌類を制圧するわけですが、その中に一定数、抵抗力があって生き残ってしまう細菌が存在します。生き残った細菌の株は、その抵抗力を維持したまま増殖するので、抗生物質の効きにくい細菌が自然界に誕生したことを意味します。それが病原性のある細菌であった場合、小さな脅威です。

21世紀は感染症との戦いになるそうです。しかしなぜ今さら? その原因として指摘されているのが気候変動、そして薬剤耐性菌です。ここでは後者にスポットを

自然界に薬剤耐性菌登場のリスク

流出と耐性。これが繰り返されることで、薬が効かない細菌が登場し、やがてパンデミックとなるのではないかと疫学者らから警鐘が慣らされています。

例えば、薬の効かない結核や破傷風など。なんでもない怪我で人が死んでいた時代が再びやってくるというわけです。事実、(畜産経由ではないのですが)すでにスーパー淋病というものが登場しており、静かに蔓延しています。薬の効かない結核も静かに流行し始めており、それらに対しての有効な打開策は見つかっていません。

アメリカのお肉はなんかヤバそう、という印象は概ね正解なのですが、それは食品として危ういという以上に、生態系にとって相当危ういと言えます。

ワラビー
以前、除草剤のネオニコチノイドが宍道湖の生態系を破壊しているといった趣旨の記事を書きました。ウナギやワカサギなどの稚魚が、ネオニコチノイド導入によって
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