伐採後の杉林 安芸太田町

人工林を切った後・・

最終更新日:
公開日:2017/03/27

日本の山林の大半を覆う杉やヒノキの人工林。これらが切り時を迎えて伐採された後は、表土流出を防いだり水源の保全のため、山林所有者は一定期間内に再植林を行う義務があります。

これは必ずしも針葉樹林を植えなければならないというわけではありませんが、お金にならない広葉樹林を植えるケースは少ないようです。よって、増えすぎた杉やヒノキが再び植えられるケースが大半なのですが…。

添田町の人工林
添田町の人工林。英彦山のふもとを通って日田に抜ける途中のエリア。

近年、再植林されずに放置されているケースが増えているのだそうです。理由は高齢化に加え、植えるお金が工面できないから。国産木材価格の低下によって林業経営が成り立たず、伐採したものの再植林費用までカバーできなかったという事。大規模な土砂崩れの原因にもなりかねず、問題になっている地域もあります。

例えば九州全体で調査が行われた結果、英彦山の周辺では再植林が行われていないケースが特に目だったという記事があります。先日偶然にも英彦山周辺を通りがかったのですが、確かに伐採後一定期間経過しているのに放置されているように見える山がいくつかありました。

英彦山麓の伐採跡地
英彦山麓の伐採跡地。車内からの撮影なので分かりにくいが、この辺りはこういう伐採跡地が多くあった。

放置は良くはありませんが、見方を変えれば不自然な人工林の再生産が抑制されたとも見て取れます。儲からないのだから針葉樹林はやめて元あった落葉樹・常緑樹に復元する好機と言えます。が、それであっても植林のお金がない。では、どうなるのか?

伐採後の人工林について、以前とある大学(うる覚えなので不明・・)の研究室(?)が10年近くにわたって研究観察を行ないました。人工的に作られ人工的に皆伐された森は、放置された後に果たしてどうなるのか?

結果、何もしなくても元に戻ったそうです。当たり前ですが、近くの山に生えていた木や草が優先的に勢力を広げ、森を復元していったとの事。放っておけば時間はかかっても何とかなるようです。

似たような調査事例として、静岡県(森林・林業研究センター森林育成科)の資料があったのでリンクを貼ります。

→ 人工林の伐採後放置された場所は森林に戻るのか

もちろん近年は雨の降り方も加速度的におかしくなり、放置という選択は困難になってくる可能性があります。また、資料でも少し触れられているように、これも近年加速度的に増えた鹿によって若木・若芽がことごとく食い尽くされ、よって人の手で植林し、さらにそれらを防護策で囲むという手間とお金が発生する事態にもなっています。

木材を積んで走るトラック
木材を積んで走るトラック。林業の盛んな大分などではよく見られる光景。

そんな中、2015年なかばくらいに海外で話題になったのが植林ドローン。これはセンサーで事前に地形を調査し、種子を肥料で包んだカプセルを上空から散布するというもので、最適な深さに埋まる高度を計算して設定するというもの。あとは雨が降れば勝手に芽が出て、やがては時間が解決してくれるのだとか。(↓実用化はおそらくまだ)

ただし、ここにも問題が立ちふさがります。2017年初頭の現時点で、国内ではドローンからモノを投下することが法律で禁じられています。爆弾などの危険物を想定しているっぽいのですが詳細はよくわかりません。そのため、農業用ドローンからの農薬散布も通常はNGです。(近々規制が緩和される動きのようです)

農業用ドローン
農薬散布用途の農業用ドローン。アグラス エムジーワン? DJI正規代理店SEKIDOの講習会にて。

とはいえ、やはり植林ドローンは有望で、急勾配の荒野を効率的かつ大規模に植林できる可能性を秘めています。特に日本のような多雨な気候下では比較的早期に初期状態の復元が可能に思えてきます。ここでの問題はやはり鹿ですが、駆除や電気柵だけではない、違ったアプローチが必要な時期にきているように思えます。

その「また違ったアプローチ」の一つとして、興味深いのが「犬」の活用です。これは広島のローカル紙で記載があった試みで、web上に記事が見当たらないのですが、要は犬を放すわけです。犬の縄張り意識を利用して獣を追い払うという極めて原始的なもの。この広島の取り組みが画期的なのは、猟犬を使うのではなく、保健所で引き取り手のない犬を訓練して活用しようという点。まだ始まったばかりな上、放すのではなくあくまで「農家に飼ってもらう」というスタンスなので効果は限定的かもしれませんが、やり方によっては根本的な解決に近いポジションが見えてきそうな気がします。

というのも、以前も紹介したオオカミ再導入論ですが、つまりは捕食者(もしくは負荷を与える存在)が鹿や猪の活動を抑制するわけで、必ずしもオオカミである必要はなく(DNA的には犬もオオカミもほぼ同じ)、一般的な犬であってもベクトルとしては同じ方向の効果が見込めるのだと思います。少なくとも局地的に鹿や猪の侵入を防ぐという役割においては、犬の存在はとても有用なのではないでしょうか?

伐採後の針葉樹林の地表
伐採後の針葉樹林の地表。杉などの葉は脂分が多く、なかなか分解が進まない。

ちなみに、オオカミの補足ではありますが、「何十万頭もの鹿猪を抑制するのに一体何万等のオオカミが必要だと思ってるんだ!」 という批判をしばしば耳にします。が、オオカミ(というか捕食者)の存在は、獲物を食べるて減らすという効果だけではなく、被捕食者に負荷(ストレス)が加わる事によって出産数が減るという側面もあるのだそうです。

で、そのストレスついでに話が飛躍するのですが、先に触れたドローンが、実は野生動物にストレスを与えているのではないかという話もあるそうです。

 極端な例では、ドローンが接近すると、1分間の心拍数が39から162へと400%以上も増加したクマがいたと研究を主導した米ミネソタ大学のマーク・ディトマー氏は指摘する。2回宙返りするジェットコースターに人間が乗ったときよりも激しい上昇率だ。

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/082700237/

ドローンのプロペラ音は確かに不吉で、山でドローンを飛ばすと鳥たちが騒ぎ始めます。私自身も現時点でかれこれ100回近く現場で飛ばしていますが、未だにあの音は嫌ですし、緊張します。逆に言うと、鹿や猪に特化したストレスドローンの開発という選択肢も将来的にはあるのかもしれません。(あるのか??)

 

平成28年度の林野庁の予算は、補正予算を合わせると3,525億円にも及びます。国の山林保全が主とは言え巨額な公金が注がれています。観光立国をうたう日本の観光庁予算(平成28年度概算要求)が145億円程度なので、いかに膨大な予算が山林に費やされているかが分かります。それら林野庁の予算割り振りを、公共事業的な土木分野だけでなく、広葉樹林再生への基礎研究に振り当てればもう少し状況は良くなるのではないかと感じた今日この頃です。

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