人間との暮らしが長く馴染み深い猫ですが、猫の祖先が日本に来たのは1,400年前とも2,000年前ともいわれています。祖先はリビアヤマネコで、彼らの主食はネズミです。
本来は齧歯類を捕食していた猫にとって、鹿肉は最適な食事なのでしょうか?
ここでは、猫に鹿肉を与えることについて考察します。
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目次
猫に鹿肉を与えても良いか?
猫に鹿肉は与えても問題ありません
結論から書くと、猫に鹿肉を与えることは問題ありません。
ただし、家庭で与える全てのお肉に言えることですが、「齧歯類を骨や内臓ごと食べるという本来の食事とは異なる」という点は留意が必要です。
鹿肉は栄養価も高く、スーパーで販売されている一般的なお肉と比べても大きなアドバンテージがある食材です(後述)。一方で、自然界で捕食していた齧歯類と比較すると、当然骨や皮、そして齧歯類が食した穀物が消化/分解された栄養素/内臓などは足りていません。
よって、総合栄養食や骨(現実的には骨粉)、内臓類、鹿脂などは別途補ってあげることで、より完璧に近い食材になります。
内臓は、本来であれば生が望ましい一方、現実的には(疫病の観点からも)厳しいため、加熱してお肉と一緒に与えてください。
ジャーキー加工した内臓で代替するのも手ですね。
鹿肉のメリット、デメリット
猫は肉食で、お肉を食べることによって体に必要な栄養を摂取しています。しかし、ただお肉といっても牛肉・豚肉・鶏肉・ラム肉など、簡単に手に入るお肉から、スーパーなどではなかなかお目にかかれないお肉まで色んな種類のお肉がありますね。
そんな中で猫に鹿肉を与えることは他のお肉と比べてどうなのか?メリット・デメリットについてお伝えします。
鹿肉は高たんぱく、低脂肪、低カロリー、低コレステロール。私たち人間には嬉しい健康食ですね。特に鉄分や亜鉛などのミネラルが豊富で貧血、高血圧の予防になります。低アレルギーなので食物アレルギーがある場合にもおすすめ。
通常家畜である、牛、豚、鶏は、成長ホルモン剤や感染症を防ぐ抗生剤、素性のわからない輸入飼料が使われることが多く、過密飼育の為ストレスの多い環境で育てられています。
しかし野生動物である鹿はそれらの環境からは無縁。野山を駆け回り、自然の恵みたっぷりの植物を食べて生きてきた命なので、得られる恩恵は数知れず。
ミネラルやアミノ酸のバランスも良く、体を温めるので免疫力アップにも効果があります。また、猫の必須アミノ酸であるタウリンも豊富に含まれています。
鹿肉のメリット
- 嗜好性が高いので食いつきが良い
- ダイエットに効果的
- 食物アレルギーの代替食になる
- 毛艶が良くなる
鹿肉のデメリット
- 腎機能が低下している場合には不向き
生食としての鹿肉
肉食動物である猫にとって、生でお肉を食べることはどうなのでしょうか?生食からしか得られない栄養素(酵素)は存在し、生のお肉を食べることは非常に有益だと考えています。しかしながら家畜含め全ての生肉に細菌類は存在しています。生食から得られるメリットは大きいですが、現在では行政指導により、全てのお肉において「要加熱」となっています。
それでも生食が諦められない場合、お肉の酵素を壊さない低温調理という方法があります。これは、殺菌に必要な65℃以上、酵素が壊れない70℃以下で加熱する方法で、敏腕のシェフが鹿肉を調理する際にもしばしば行われています。(お肉の内側温度が65℃だと15分,68℃だと5分の加熱)
猫の食生活について
猫の習性
猫は完全肉食です。小型の哺乳類やげっ歯類、爬虫類や鳥類など様々な生き物を食べます。動体視力がとても優れているので動いているモノを目で追い捕まえる能力に長けています。猫を飼っている人はスズメやトカゲを捕まえて来てびっくりしたという経験はありませんか?捕まえた戦利品を自慢するために見せに来るのも(諸説あります)猫ならではの習性です。
ペットの猫は日々ご飯をもらえているので食べることには困っていません。食べるためというよりは本来の肉食動物としての「狩る」という本能で捕まえてくるんですね。(猫のレジャーハンティングは生態系保全の観点からは脅威)
もし愛猫がトカゲやゴキブリを持ってきても、怒らず驚かず、軽く褒めてあげて下さいね。
食事の食べ方
猫は一気に食べるのが苦手で、1日に複数回に分けて食べます。何回与えたらいいのか迷う人もいるでしょうが、回数は特に決まっていません。1日に摂取するカロリー(厳密である必要はありません)の量を数回に分けて与えて下さい。
ドライフードの場合は傷みにくいので置き餌でいつでも食べれるようにしておくのも良いですが、一度口をつけたフードには猫の唾液などが付着し、細菌類の増殖や腐敗が進みます。半日以上食べ残したものは継ぎ足しをせず全部下げて、清潔な食器に新しいドライフードを入れてあげてください。
最初はどの程度の量を食べるか分からないでしょうから、まずは少量ずつ入れ、食べきったら数時間あけて新しく用意するのがよいですね。また、手作り食やトッピングの場合は、置きっ放しにはせず、食べ残したらその都度下げるようにしてください。
- 内容:500gパック x 2
- 種類:ホンシュウジカ / キュウシュウジカ / エゾシカ
- 産地:西日本/九州各県/四国各県/長野県/北海道
- 部位:切り落とし混合
猫に必要な栄養素
人間と同じく、猫も多くの栄養素を必要としています。タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、水。どれも生きていく上で欠かせません。しかし、雑食性の人間と肉食の猫とでは1日に摂取する栄養素の必要量が変わってきます。高脂肪・高タンパク質の食事が必要な猫に、人間と同じものを毎日与えていては栄養が偏ってしまいます。逆に人間が猫と同じ物を毎日食べていては肥満になってしまいますね。
「猫は肉食」ということをしっかり理解した上で、飼い主は愛猫に必要な栄養を適切に与える責任があります。
タンパク質
タンパク質は体の臓器や筋肉などの組織の基本的構成物質で、ホルモンや酵素、抗体を形成する重要な栄養素です。猫は、1日の食事量の約30%を体が必要とするアミノ酸をバランスよく含んだ良質なタンパク質で摂取する必要があります。
特に重要な必須アミノ酸(体内で合成できないアミノ酸)はアルギニンとタウリンで、これらが不足すると様々な不調が起こりやすくなります。必須アミノ酸は動物性タンパク質に豊富に含まれています。
脂質
脂肪は臓器や筋肉を動かすための重要なエネルギー源です。皮膚被毛を健康に保ち、脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きをします。猫は体内で作ることができない必須脂肪酸(体内で合成できない脂肪酸)であるリノール酸やアラキドン酸を食事から摂る必要があります。ただし、余分に摂り過ぎると肥満になるので、摂取量には注意が必要です。
炭水化物
多くは植物材料から得られる栄養素で、糖質と繊維質で構成されています。糖質は体のエネルギー源として、また繊維質は消化器の機能を正常に保ちます。完全肉食の猫は、タンパク質と脂肪からエネルギーを得るので特に炭水化物は必要ではありません。しかし全く与えなければ良いという訳でもありませんので、少量与えるようにしましょう。
ビタミン
体の機能を維持することに大きく関わる栄養素です。水分に溶ける水溶性ビタミンと、脂肪に溶ける脂溶性ビタミンに分類されます。猫はビタミンKとCを体内で合成することができますが、ビタミンE、A、B1、B2、B6、Dなどは体内で合成できないので食事から摂る必要があります。特にビタミンB1は人よりも多く必要で不足すると欠乏症になるので注意が必要です。
ミネラル
ミネラルは生命維持に不可欠な栄養素で、細胞を正常に働かせる役割があり神経や筋肉を活発にします。ミネラルには、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩素、イオウ、マグネシウム、鉄、フッ素、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素などがありますが、他のビタミンやミネラルとのバランスがとれていないと上手く作用しない場合があります。特に、カルシウムとリンのバランスは重要です。また、過剰摂取すると病気を引き起こす要因となります。
水
砂漠地帯に生息するリビアヤマネコの子孫である猫は、尿を濃縮することで摂取水分が少なくても生きていける身体を持っています。そのために猫の腎臓はいつもフル回転で働いていますので、高齢になると慢性腎不全になりやすくなるのです。飲み水は大点重要なのでいつでも新鮮な水が飲めるように用意しておいて下さい。
缶詰が主食の場合は缶詰から約75%の水分を摂ることができますが、ドライフードの場合は約10%以下しか水分が摂取できません。ドライフードを主食にしている猫は、特に水をたくさん飲めるようにしてくだい。
猫にとって、タンパク質と脂質と水は何よりも欠かせない栄養素です。1日の必要カロリーは年齢や体重、運動量によって変わってきますので、その子その子に合った量を与えるようにしてくださいね。
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猫と鹿肉について補足
ここでは、あくまで一般論として、鹿肉の成分およびメリット/デメリットを記載します。おさらいとしてご一読ください。
鹿肉の成分について
- エネルギー:119kcal
- 水分:71.4g
- タンパク質:23.9g
- 脂質:4.0g
- 炭水化物:0.3g
- 灰分:1.2g
- 食塩相当量:0.1g
文部科学省の食品データベースより。
ただし鹿肉は季節差、個体差が大きく、オス/メスや部位によっても数値が異なります。数値はあくまで参考程度に留めておくことをおすすめします。
鹿肉のメリット
- 高たんぱく低カロリー: 鹿肉は高たんぱくで低カロリー(低脂肪)が特徴です。人間よりも肉食性の強い犬、そして完全に肉食性の猫において、必要とされる栄養素を豊富に含んでいます。また、高齢化による心臓病や、室内飼いによる肥満のリスクが高い個体にとって、低脂肪の食材は良い選択と言えます。
- アレルギー反応の低減: 鹿肉は鶏肉や牛肉など、一般的な肉類に対してアレルギーを持つ個体にとっては良い選択肢です。一般的なお肉と比較すると、鹿肉は抗体獲得の可能性が低く、アレルギーリスクは低いと言えます。さらには、肥育剤や残留抗生物質の懸念が極めて少ない点も大きなアドバンテージと言えるでしょう。
- 鉄分とビタミンBが豊富: 鹿肉には鉄分やビタミンBが豊富に含まれており、健康な血液や神経系の維持にとって有益な栄養素です。
デメリット
- 入手困難: 一般的なスーパーでは鹿肉はなかなか手に入れる事ができません。そのため、愛犬/愛猫の食事に鹿肉を定期的に取り入れるには、信頼できる販売店を見つけなければなりません。
- コスト: 鹿肉は一般的な肉類と比べると高価な傾向にあります。そのため、定期的に与えることを考えると経済的な負担が増えるかもしれません。
- 適切な調理が必要: 鹿肉を与える際は、適切に調理して与えることが重要です。日本の場合、野生鳥獣解体処理施設において病気の個体は除外されるため、疫病的なリスクは低い一方ものの、それでも生食は(鹿肉に限らず)一定のリスクがあるという点は知っておく必要があります。
以上の点を考慮に入れつつ、ペットの健康状態や好み、またあ経済状況を鑑みながら、可能な範囲で鹿肉を導入してみてくださいね。
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保有資格:愛玩動物飼養管理士一級、動物看護士