広島ジビエの件

Foremaの本社は広島県にありますが、これまで広島の商品を扱っていませんでした。産地の方達とは以前から交流があり、出荷についての話し合いを行ってきたのですが、単に出荷体制の問題から取り扱いに至っていなかったという経緯があります。

そんな中、今月に入りようやく広島産の取り扱いが可能となりました。先日からお伝えしている「毛利の鹿!ジビエBBQセット」はもちろんそうですが、業務用のForema Proにおいても広島産の鹿モモ、鹿スネ、鹿ロースの取り扱いが始まりました。

なぜ広島産を押すかというと、これまで「なんで広島の会社が広島をあつかっていないんだ?」という突っ込みが多かったという事情もあるのですが、それとは別に食べ比べの選択肢が増えたという点があります。

これまで取り扱っていた産地は、大枠では北海道(Forema Pro限定)、近畿、九州の3エリアでした。四国は鹿がまだ少なく、北日本は原発の関係から出荷が難しい。残る大生息地は長野や奥多摩などの西関東と紀州エリア、中国地方に大分されていたのですが、そのうちの一つが埋まったという事で多少安堵しています。

野生動物というのは個体群で評価・管理されます。自然界のことなので地理的な要因などで生息地が分断されている事が多く、同じ種類の動物でも違う気候風土で育っています。南北高低差の大きい日本国内では特に地域差が非常に大きく、それが地域ごとの野生動物の特色に大きく影響しています。

極端な例が蝦夷鹿と九州鹿で、体格も脂のつき方はほとんど別種です。どちらがいいという話ではなく、ただ違いが大きいです。とは言え、同じ九州でも英彦山系の鹿は非常に体格が大きい系統で、逆に鹿児島などは屋久鹿の系統だから小柄な傾向があり、小柄な分、柔らかくて味わい深いという特色があります。気候的なものとは別に、その地域の特産(鹿児島であればボンタン、大分であればクヌギ)も捕獲される野生動物の味に影響を与えているとの声が強いです。(駆除される動物は大抵人間の作物をたらふく食べている)

そういう地域色の違いの中、新たな風として広島産というエリアが加わったという流れです。

広島の鹿の特色とは

広島は県外から見ると工業都市のイメージが強いかもしれませんが、県北エリアは一大農産地だったり、豪雪地帯だったりと自然豊かな側面があります。西中国山地における鹿の生息地は決して多くはないのですが、それらの大半が広島県中西部の一エリアに集中しています。霧の中から60頭くらいの鹿の群れが突如現れる、という北海道のような現象が、マツダ本社から1時間くらいの距離で繰り広げられている、それが広島だったりします。

Foremaで扱いのある安芸高田産の鹿の特徴は「若い」という点が挙げられます。この地域の鹿は本当に多く、駆除が追いつかないくらいで、それゆえに早い段階から行政が頭数制限に力を入れてきました。よって長寿の鹿が少なく、結果的に若い鹿ばかりが育っており、食材という視点で見ると柔らかくて美味しい、という評になります。

これだけ聞くと、大半を駆除してけしからん!という声もあるかもしれませんが、鹿の繁殖力はとても強く、年間に全個体数の30%くらいの駆除圧を受けたとしても、資源(餌や生息環境)があれば1年で回復するのだそうです。(参考文献:北海道大学の論文)

http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/54808/1/65_2_108_116.pdf

また、業務用の仕入れにおいては、産地の違い=送料の違いでもあります。例えば中国地方のお店が広島から仕入れる場合と北海道から仕入れる場合だと、送料は2倍ほど違います。蝦夷鹿にこだわる必要がない場合、地元に近いところから仕入れる方がリーズナブルという側面もあります。また、やはり飲食店の場合ですが、企画として特定の地域に絞った「なんとかフェア」をやる場合、その地域に属したジビエ食材を使うと説得力が出ます

そういうわけで、今回は広島視点の記述に終始しましたが、色々な地域での食べ比べ及び、トータルで見た時の在庫の安定感が増すという意味でも、複数産地の取り扱いは有益であると考えています。