鹿肉スライス

鹿肉の仕入れについて

飲食店向けのジビエ発注システム、Forema Pro(フォレマプロ)がスタートしました。現時点でまだ産地側の在庫登録が追いついていなかったりしますが、すでに南は鹿児島から、北は北海道まで、十数箇所の生産地の、100品目近くが登場しています。

Forema Proのおしらせ

Forema Proの普及により、ジビエ食材の仕入れが容易になり、消費が増える事で無駄に捨てられていた鹿や猪が少しでも有益に活用されていくことを願っています。(年内に国内産地60箇所カバー予定)

そんな流れで、今回はForema Proを使った鹿肉仕入れのメリットと、鹿肉を取り巻く背景について書いてみたいと思います。

日本国内の鹿肉流通について

鹿ロース
鹿ロース。鹿一頭から取れる食肉の量は牛は豚、猪に比べてもずっと少ない。

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2017年の4月現在、野生の鹿や猪(いわゆるジビエ)を扱っている飲食店は全国で800店舗くらいあるらしいです。そのうちの600店舗くらいが鹿で、猪は200店舗くらいとの事。日本ジビエ協会がぐるナビの「ジビエ」キーワードで簡易的に調べた数なので、あくまでざっくりとした数値だと思います。(山間部の食堂などは含まれていなさそうです)

鹿肉に偏っている理由は「フレンチでの需要が強い」からだと思いますが、他にも「鹿の方が生息数が多い」とか、「エゾジカが比較的流通している」という背景が挙げられそうです。

フレンチでの需要という背景

鹿ヒレ肉葡萄ソース
鹿ヒレ肉葡萄ソース。ヒレ肉は一頭からとれる量が非常に少なく希少。鹿肉の中では一番美味しいという声も高く、シェフの間では鹿ヒレばかりに需要が集まる事も。

ジビエという言葉自体がフレンチ用語なので当たり前なのですが、ジビエの中でも鹿肉は王道のようです。今のようにジビエがブームになるずっと以前から、鹿のステーキは高めのお店では比較的目にすることが多かったようです。私自身も幼少の頃、どこかのレストラン(普通のお店)で鹿の「ステーキ 日本風なんたらかんたら」というのを食べた記憶が残っており、子供心ながらにとても美味しかったのを覚えています。必然的に鹿肉需要を支えてきたのがフレンチ系のお店だったのは想像に難くありません。

フレンチ以外だと、北部系のイタリアンやドイツ料理、オーストリア系でも需要があるようですが、特にドイツ、オーストリア料理というのは国内飲食店ではごく少数派だと思われます。

猪より鹿の生息数が多いという事情

海藻を物色する鹿
海藻の匂いを嗅いで物色する鹿。厳島で撮影。

環境省の調査では、2013年度末時点の鹿の生息数は305万頭。しかも北海道はのぞいた数値だそうです。なぜ北海道を除くのかは定かではありませんが、北海道は統計が取りづらく、それによって本州の数値がブレるのを防ぐという理由なのかもしれませんし、単にホンシュウジカとエゾジカを分けているという背景かもしれません(両者は亜種の間柄)。ちなみに北海道は2013年度末で推定54万頭との事。

一方の猪は同年度末で98万頭で、実に3倍もの開きがあります。西日本に住んでいる人にとってはこの数値は意外に感じるかもしれませんが、鹿の方が圧倒的に多いんですね。これは猪の生息域には北限があり、純粋に生息可能面積の違いかもしれませんが、人工林の影響もあるかもしれません。杉や檜の人工林は猪にとって餌となる要素が少なく、彼らにとっては住みづらいと言われています。生息できたとしても、人工林エリアの猪は「秋冬でもガリガリで食べられたもんじゃない」という猟師さんもいます。

北広島町の人工林
北広島町の人工林。2月撮影。元々鹿の少ないエリアながら、近年鹿が増えてきた。

一方の鹿にとっては事情が異なります。人工林に入れば分かりますが、暗い場合が多く、下に生えている主だった植物もクマザサくらいしかありません。が、このクマザサが鹿にとっては食料となるため、人工林エリアであっても鹿にとっては生息エリアに該当します。下草がなくなると木の皮を剥いで食べ、これが立ち枯れにつながって林業に打撃を与えている地域もあります。奥多摩などでは林そのものが壊滅して表土が崩れ去った事故がクローズアプされ、鹿害(ろくがい)が注目されるきっかけにもなりました(※)。ただ、それ以前の問題として、杉は根をはるのが浅く、人工林自体が元々表土が崩れやすいという構造的問題を抱えている点は指摘されなければならないように思えます。

※例)シカが森を破壊する http://www.tamamori.jp/special_deer/special_deer.php?m=detail_01

エゾジカが普及している背景

鹿カタ肉のポワレ(パルサミコソース)
鹿カタ肉のポワレ(パルサミコソース)。Foremaのレシピより。赤身が多い鹿肉野中でも肩肉は比較的牛肉に近い部位。

先に触れたフレンチのお店を始め、国内の飲食店で食べられている鹿の多くはエゾジカのようです。エゾジカが流通している理由としては、北海道は早くからエゾジカ被害に悩まされており、本州より早い段階で鹿対策及び食肉活用が進んでいた背景があります。北海道が県を、いや道を挙げて対策に乗り出した結果、スキーリゾートのホテルなどで活用が進み、また東京都内への出荷も進んでいます。また、エゾジカはホンシュウジカに比べても体格が3倍くらいあり、一頭の駆除、解体に対して得られる食肉の数が多いという背景もあり、単価が下がりやすいという事情もあるでしょう。

また、土地柄もあってか銃猟もまだまだ盛んで、捕獲方法の幅が広いという理由もあるのかもしれません。走り回るので急所を狙うのが困難な猪に対し、「鹿は止まってこちらを見るので打ちやすい」という事もあり、また熟練の猟師さんが多い土地柄というのも関係ありそうです。

猪にしろ鹿にしろ、走って逃げたのを仕留めたとか、罠にかかって暴れていたのを仕留めたという場合、体温が上がって肉が燃えた状態になり、「味が落ちる」と猟師さんらは口を揃えます。一番いいのは「向こうが気付く前に遠くから一撃で仕留める」というもので、恐怖感すら与えずに一瞬で終わらせることで最高の肉質が保てるのだそうです。

・・こんな背景の中、Forema Proが南は鹿児島から、北は北海道まで、ジビエ食材の仕入先を集約しています。

Forema Proで鹿肉を発注するメリット

全国から鹿が仕入れられる

鳥取県大山近辺
鳥取県大山の麓エリア(3月)。この辺りは猪が多いが、ここから東に行くに従って鹿の生息数が増える。

全国仕入れが可能になるメリットは、在庫の安定です。例えば北海道のA産地の先週の在庫状況は「モモ肉が出せない。それ以外は在庫あり」という話でした。多くの産地では、通常鹿のロースから品薄になっていくのが一般的です。他の産地では品薄の鹿ロースが、A産地では十分な在庫があるという事です。翌週になればA産地のロースは在庫がなくなっているかもしれませんが、今度は別の産地で新たな在庫が入っている可能性があります。

産地が増えれば増えるほど「どこかには在庫がある」という状況が整い、これまでは「在庫が不安定」と言われていたジビエが、「全体としては安定している」という事になります。仕入れる側にとってのメリットは大きく、結果として消費の裾野が増えれば産地にとってもメリットです。

エゾジカとホンシュウジカ、双方を仕入れられる利点

九重町の山林
大分県南部、九重町の山林。これは三月上旬の写真。人工林が大半の北部とは明らかに山の相が異なる。県境を越えて熊本に入れば山の表情はまた変わる。

今までエゾジカだけを仕入れていたお店が、ホンシュウジカを仕入れると料理の幅が広がりそうです。というのも両者は亜種の間柄ではありますが、体格も生活圏も大きく異なるため、別種に近いと評しても差し支えがないように思います。シングルモルトで例えれば、ハイランドとローランド、というくらい違いがあります。また、川魚でも20cmと30cmで肉質が大きく変わるように、エゾジカとホンシュウジカの違いは顕著です。

さらに言うと、ホンシュウジカの中でも山によって、さらには同じエリアでも風土によって違いがあります。例えば九州の大分県北部は鹿の生息数が多くて、南国にも関わらず体格が大きいです。これは福岡と大分の県境にある英彦山(1199m)を中心に標高が高い影響があるようで、この山系の鹿は本州に比べても一回り大きい傾向があります。

熊本エリアの山地
九重から熊本方面に抜ける山地から阿蘇市街地を望む。地表50mくらいから撮影。

逆に大分県南部は山の相も全く変わり、鹿の種類も別ものに。さらに熊本に入ると風景が激変するとともに鹿の生息エリアからは外れてきます。そこからずっと南下した鹿児島においては、鹿の生息数は再び増え、サイズは標準的(〜やや小型)となりますが、たとえばボンタン畑が多いエリアの鹿はボンタンの葉っぱを食べまくっている関係で臭みが無く、とても美味しいと言われています。鹿児島では、養殖魚の出荷も一週間前かボンタンを配合した飼料を与える生産者もあるらしく、それによって臭みが消えて非常に美味しいらしいです。私もこの産地の鹿は何度かいただきましたが、どの部位も非常に美味しいです。

余談ながら、Foremaの事務所がある広島ではレモンが特産となっており、養殖魚の飼料にレモンフレーバーが配合され、やはり臭みが消えるとの事で評判になっています。それらは広島サーモンとか、広島レモンサーモンというブランドで全国に出荷され始めているとの事。そんな流れの背景で、鹿児島ボンタン鹿、広島レモン鹿みたいな天然鹿が元気に駆け回っているというわけです。(広島のレモン山地においては、実際には鹿ではなく猪ばかり)

こういう地域の特色は地酒やシングルモルト同等のバリエーションを展開し、食通の心を刺激するのは間違いないように思います。実際にお酒との組み合わせまで提案できれば、食材としての広がりはもちろん、エンターテイメント性においても有望で販促や他店との差別化に役立てることも可能ではないでしょうか?

年内に国内60産地

Forema Proでは今後も仕入れ可能な産地をどんどん増やし、ジビエ仕入れのプラットフォームとして充実を図っていく予定です。予定としては2017年末までに60の生産地からの仕入れができる状況を整え、東京五輪の頃には全国の生産地を網羅できる状況を目指したいと考えています。

※Forema Pro は飲食店の方のみのご利用となります。一般の方の鹿肉購入・通販はForemaをご利用ください。

https://www.fore-ma.com/products?search%5Bcategory1%5D=1

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