Forema の倉庫の奥の方に、「ワケあり」として眠っていたペット(犬・猫)用のお肉の中から、SALE品としても出荷できない最低ランクのものをピックアップし、社内スタッフ用に調理しましたのでご紹介します。
目次
人間が食べられるお肉
今回登場するのは全てペット用のお肉です。「なんだ、ペット用の、しかも廃棄品をスタッフに食わせるのか。ひどい男だな!」と思われるかもしれません。
が、私たちはペット用のお肉を日常的に試食して出荷しているため、これはむしろ普通のことだとご理解ください。
ちまたに溢れる「ヒューマングレード」という言葉は定義がきわめて曖昧なため、Foremaではあまり使っていません。その代わり、実際にヒューマンたちが食べて「美味しい!」と豪語することで品質の良さを証明しています。
- 内容:500gパック x 2
- 種類:ホンシュウジカ / キュウシュウジカ / エゾシカ
- 産地:西日本/九州各県/四国各県/長野県/北海道
- 部位:切り落とし混合
冷凍庫の奥に眠る謎肉
さて、Foremaの冷凍庫はそれなりに大きいので、ロス商品を分けて置いておくとそのうち忘れ去られ、謎肉としてアンタッチャブルな存在となります。今回はその中から4品をピックアップ!
冷凍庫に眠る謎肉の中からランダムに持ち出して解凍します。ぱっと見だと何かさっぱりわかりませんが、あまり良くなさそうな事だけは分かります。
袋を開けて中身を確認してみました。
今回使用したお肉のご紹介
謎肉の封を開け、洗って並べると見違える様にきれいに! 謎肉の素性が明らかになりましたのでご紹介します。手前から順に…
- ・徳島県の鹿肉(B鍋)
- もう一年以上前の話ですが、とある産地さんが出荷前の処理を誤り、大変匂いが強くて使い物にならなかったお肉がいくつか入荷した事がありました。その時の生き残りがこれ。腐敗はしていないので臭気の除去が課題。まさに出荷NG品。
- ・兵庫県島嶼部の鹿肉(B鍋)
- Foremaでの出荷が始まる前の段階の、新しい産地さんからサンプルとして入荷したもの。まだ勝手がわからず、この時点では処理が大変雑でそのままでは出荷できない品。(多くの血のりが残っており、見た目も封の雑さも一般消費者には耐えられない)
- ・どこかの猪のスジ肉(A鍋)
- これもサンプル入荷したものですが、スジ肉としか書いておらず、また霜で中身が見えず、鹿肉と思って開けたら猪だったというもの。単に倉庫の奥に置き忘れられていた昔のお肉。大変もったいないので活用します。おそらくは愛媛か兵庫島嶼部のもの。
- ・兵庫県西部の鹿モモ肉(A鍋)
- ブロックでサンプル入荷したもの、封が大きく破損し、気がついたときには霜がびっしりついていてどうにもならなかったもの。霜は見た目の問題が大きいですね。あとは冷凍焼け。お肉の処理自体は問題なさそうで本来は優良なお肉だったはず。
ペット用のお肉の廃棄品を調理していく
臭いお肉はしっかりと水で洗う
封を開けお肉が溶け始めると、匂いの強いお肉がやはり匂い始めます。こういう時はひたすら水で洗います。しばらく流水につけておくのもいいですね。これで匂いの8割方は除去できます。
ブロックは半解凍の状態で切り分ける
半解凍だとしゃりしゃりしていてカットしやすいです。今回はブロック系のお肉が多かったのでいい感じ気切り分けます。一部のお肉が良くないので、いくばくかの血生臭さがあります。
産地側の処理が雑だったお肉は、血のりが多い上に部位的にも硬くて良くはなく苦戦。除去した血のりや皮膜などは社内コンポストで土に還します。
野菜は適量を適度に切っていく
今回用意した野菜は
- にんじん
- じゃがいも
- ニンニク
- 玉ねぎ
- マッシュルーム
- そしてローリエ
この中で、ニンニクと玉ねぎはお肉の臭みを取るのに重要な役割を果たします。
切ったものは全て赤ワインにドボン
臭みを取るために赤ワインに漬けます。通常のワイン煮込みなどであればせいぜい数時間〜半日ですが、今回はお肉が良くないので24時間以上は漬け込みました。
全て大きなボールに入れ、冷蔵庫で眠ってもらいます。臭いお肉が混ざっているため、ローリエを多めに。
ちなみにワインは安物です。
お肉に焼きを入れる
24時間漬け込んだお肉は臭みがほぼ消失しており、消臭チームの効能に脱帽。ここでお肉だけを取り出し、強火のフライパンで焼き色をつけます。
お肉が浸るくらいまで水を加え、ここからワインが半分になるくらいまでコトコト煮込みます。2時間くらいでしょうか。
ちなみに今回は、比較的程度の良いお肉をA鍋。臭いの強いお肉や処理の雑なお肉はB鍋に分けました。
とろ火にかけてコトコトやった後は、冷まして冷蔵庫で1晩寝かせます。
煮込むコトで柔らかくなると同時に、中身の水分や成分が流出し、臭みも一緒に溶かし出します。(香草やニンニクに処理させます)
食材は冷える時に水分を吸い込むので、野菜たちの旨味や消臭成分が染み込みます。(浸透圧の変化で起こる)
次の日も煮込む
一晩寝かせた両鍋はとてもいい具合に。調味料の類はまだ入っていませんが、既に臭気は皆無でとても美味しそうです。
経験上既にお肉も柔らかくなっているので十分美味しく食べられるのですが、さらに煮込んで一晩寝かせるコトで、最低ランクだったお肉がホロホロになる感動を味わえます。
圧力鍋だと手っ取り早いのかもしれませんが、今回はあえて「時間が解決する」手法を選んでいます。
というわけでここから煮込み、以下の調味料を加えて味を整えます。
- みりん
- フラクトオリゴ糖(通常は砂糖でOK)
- 塩/胡椒
- しょうゆ
- デミグラス缶
そして最後にバターを50gほどドボン。そしてもうひと晩寝かせます。
- 内容:鹿のミンチ500g x 2パック
- 原産国:日本
- 種類:ホンシュウジカ/キュウシュウジカ
- 部位:混合
翌日、美味しくいただくことに
一晩明けた鍋は、変な言葉ではありますが「鹿のビーフシチュー」。ぱっと見だとただのカレー。これを一旦業務用冷凍庫で凍らし、Foremaの廃校物流センターに移動させ、皆で頂くことができました。
凍らせる事でさらに美味しくなるという説もあるのですが、今回は単に運びやすいように冷凍させただけ。
とは言え、結果的には非常に美味しく、「これが最低ランクの廃棄品だとは思えない!」を実践できたように思います。
B鍋はトマト煮込みに
「臭気が強いお肉」と、「処理の雑なお肉」を集めたB鍋はトマト煮込みに仕上げました。早い段階でバルサミコ酢を加え、終盤でデミグラス缶の代わりにトマト缶を投入。キッチンにあった謎のソースを少しだけ加え、雑踏のような深み(?)に至りました。
- 内容:鹿肉500gパック x 2 / 猪肉500gパック x 2
- 種類:ホンシュウジカ / キュウシュウジカ / エゾシカ / ニホンイノシシ
- 産地:西日本/九州各県/四国各県/長野県/北海道
- 部位:切り落とし混合
横文字、ヒューマングレードという言葉
ヒューマングレードって実際に食べているの?
昨今、多くのペットフードで「ヒューマングレード」という言葉が使われているのですが、横文字の解釈はすごく曖昧で、「読んだ人に勝手に解釈させる」ような手法も目立つ様に感じます。
グレードってそもそもなんだろう⁉️
実際食べている人はいるんだろうか⁉️
ここはメーカー各社でかなりの幅があるのかもしれません。
4Dミートという言葉
ヒューマングレードとは対極にある言葉の「4Dミート」についても、死んだお肉とか病気・障害がある個体の肉という言葉で(メーカーさんのページなどで)不吉な表現がされていますが、自然界では病気や障害のある個体こそが優先的に捕食されていき、また死んだお肉も有益に消化されるのが本来の姿です。
4Dミートの「本質」は、死んだとか障害とかにあるのではなく「なぜ死んだか⁉️」
「どうして病気や障害に至ってしまったのか⁉️」という、業界の背景や環境にある様にも思います。
などと考えながら、ワケあり商品を意地でも美味しく仕上げ、自分たちで食べて満足するという試みを達した次第です。
【まとめ】
・横文字には注意
・ニンニクと玉ねぎに感謝!
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。