ニホンアナグマ

乱獲かもしれない..ニホンアナグマの駆除について

以前猟師さんに聞いた話ですが、アナグマはとても美味しいのだそうです。それを証明するかのように、昨今一部のシェフの間でアナグマが話題になっています。曰く「とても美味」なのだと・・。

※冒頭写真:作者 Alpsdake (投稿者自身による作品) [CC BY-SA 3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

日本アナグマは日本の固有種

アナグマは、正式にはニホンアナグマ。日本固有の種なのだそうです。タヌキと良く似ており、タヌキと巣穴を共有することから「同じ穴のムジナ」という言葉が生まれました。ムジナというのはアナグマの別名です。地域によってはタヌキをムジナという場合もあり、非常に紛らわしいです。

そんなアナグマが害獣として駆除されているのは主に九州で、特に鹿児島での捕獲数が多いです。昔から畑や家屋を荒らすからという理由で害獣扱いされているのですが、鹿児島での駆除が特に多いのはボンタン生産と関連があるのかもしれません。島根や山口においては柿の実をたくさん食べているアナグマが、鹿児島においてはボンタン農家の敵になっているという構図だと思われます。(今度猟師さんに詳しく聞いてみます)

アナグマの駆除数が急増している

10年間で43倍に

そんなニホンアナグマについて、懸念の声が出始めています。つまり駆除しすぎているのではないかという事。

鹿児島では2015年〜16年の1年間での駆除数が4300頭を超えました。これは前年の1.7倍で、1000の大台に乗ったのもここ数年の話。2005年の駆除数は100頭だったそうで、実に43倍の増加。急速に駆除が進んでいることが分かります。そしてこれに対して研究者の間から警鐘が鳴らされているわけです。

レッドリストには掲載されていない

IUCNのレッドリストには現時点でニホンアナグマ含まれておらず、しかしながら環境省においても駆除の実態を把握しきれていないのが実情。一方の鹿児島県行政は昔からの慣例で「許可を出した猟師さんによる駆除」を認めているという状況です。

アナグマ駆除が急増した理由として「ジビエとしてのアナグマ人気」の可能性を指摘する人もいます。高く売れるから積極的に捕獲しているのではないのか?という憶測なのだと思います。

または、単に鹿や猪同様に純粋に個体数が大きく増えたという可能性もあります。ただ、一頭のメスの出産数は1回で2頭前後という事で、鹿や猪のように爆発的に増える事は考えにくいのだとか。

さらには補助金の不正取得のため、一頭の駆除を数頭に水増しする虚偽申請が横行したという可能性も排除できません。

このあたりは誰も全体像を把握てきていないのが実情のようです。

農作物被害は増えている

ただ、鹿児島県下における農作物のアナグマ被害額を見る限り、2007年から3倍に増加しており、その意味では個体数が増えたという背景は少なからずありそうです。もちろん駆除数43倍というクレイジーな増加に比べれば微々たるものだといえますが。

鹿児島県の鳥獣による農作物被害額の推移(鳥獣・年度別)

一方で、駆除が進んでも農作物被害が減っていない点をみると、駆除圧以上の繁殖をしているか、駆除数そのものが間違っているという可能性も指摘できそうです。

実際のところこういった調査はあまり進んでおらず、詳細は誰もよくわかっていないというのが野生動物事情だと言えます。

猟師さんたちは何と言っているか?

こういう「よく分からない領域」については、複数関係者の証言を突合させるとおぼろげながら全体像が見えてきます。例えば同じ九州エリアでも、福岡西部ではアナグマは稀にしか罠にかからないそう。南部でも同様で、むしろアライグマが多い。大分西部では捕獲していない、中部では普通にたくさんおり、罠にかかれば獲る。そして鹿児島は時々入るから需要があれば出荷する etc…

これらの声を聞く限り、いるところではたくさんとれるし、いないところにはいない、という感じです。猟師さんの間では「アナグマをジビエとして積極的に出していこう」というマインドはそんなに強くないという感触です。

結局、アナグマというマイナーな(?)動物に対しての調査がほとんどなされておらず、個体群の分布や個体数も未知。Foremaとしては、ニホンアナグマの実態について、今後はより注意深くアンテナを張っていきながら、随時情報を発信していきたいと考えています。

ニホンアナグマ の参考資料が有益

調べてみるとなかなか秀逸な資料がいくつか見つかったのでご紹介。識者の英知に簡単にアクセスできるのが今の時代の恩恵だと強く感じます。

ニホンアナグマのHSIモデル

ニホンアナグマの生態については、日本生態系協会の資料が非常に詳しいので紹介します。PDFです..。→ ニホンアナグマのHSIモデル

HSIというのはHabitat Suitable Indexの略で、直訳すると生息地的各指標。その野生動物にとって適正な住処かどうかというのを数値化したものだと言えます。

ナショジオトピックス

「動物写真家 福田幸広さんが捉えた、アナグマの貴重映像」というコラムでアナグマについての記載がありました。→ アナグマの貴重映像

とても地味な上、タヌキに似ているから混同されているという背景もあってほとんど誰も生態を知らない(興味がない)というのが実態なのかもしれません。

東京農工大学農学部

マイナーで誰も詳細について知らないニホンアナグマ。そんな我が国の固有種に対して精力的に研究を続けているのが東京農工大の農学研究院にいらっしゃる金子弥生という方。長年にわたって相当詳しく研究されているようで、第一人者と言って間違いなさそうです。

鹿児島のアナグマについて

科学界の権威であるネイチャー誌にも掲載されたそうです。

Natureにアナグマの保全関連の学術情報が掲載されました

これについてはハフィントンポストに寄稿されたネイチャージャパンの記事でも記載がありました。全般、とても詳しいです。

ニホンアナグマの駆除に懸念

金子さんの活躍がすごい

動物にしろ、植物にしろ、昆虫にしろ、誰も知らないような物事がしっかりと図鑑に載って人類の英知として共有されている背景には、ごくごく一部の誰かが徹底的にそれを研究し尽くし、それらニッチな知識が集大成として持ち寄られているからなのだと改めて気づかされます。

ハフポストのネイチャージャパンの記事で触れられている金子氏は、「動物の顔面パターン認識装置による個体識別」というものに2010年頃にすでに取り組んでおり、かなり尖った人なのだと推察されます。これはつい先日 iPhoneX に搭載されて話題になった顔認証と同じ領域で、野生動物の場合は個体数調査だったり個体群の追跡に役立つ自然界のビッグデータがガシガシ蓄積される非常に有益な技術。実際これがどのくらい実用レベルで運用されているのかは分かりませんが、予算が割り振られずに進んでいないというのが研究現場でのありがちな実情かもしれません。

むしろこういう領域は経済界の英知と組み合わせた方が良く、本当の意味での産学協同が自然保護に有益な結果をもたらすのだろうと感じます。

ともあれ、ニホンアナグマ については今後もアンテナを貼って行きたいと思っています。

↓続編書きました。

ニホンアナグマの駆除は乱獲か

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