「食が細い..」「食べることに興味が無い..」そういうご申告のある犬や猫の腸内から、歯周病菌が多めに検出される事がしばしばあります。通常、腸内から歯周病菌がまとまって検出されることはあまりありません。
こういう場合、お口にトラブルが起きている可能性が高いです。
※当記事は関連文献および、自社での16S rRNA解析事例を元に執筆しています
痛くて食べられないのかもしれない
犬や猫の食欲がない、ずっと寝ている/塞ぎ込んでいるという場合、食欲が無いのではなく、食べたくても食べられない、痛くてそれどころではない、というのが実情なのかもしれません。
口臭や歯石などで明らかに口腔トラブルだとわかる場合は良いのですが、歯周病菌は主だったものでも10数種類あり、それぞれ挙動がことなります。歯根で骨を破壊しているようなタイプだと、膿瘍が悪臭を放つよりも痛みの深化の方が早いかもしれません。
事実、弊社で腸内細菌を解析した結果、複数の歯周病菌が明らかに多く検出されている場合でも、主治医の先生には「歯周病なし!」と診断されているケースはしばしばあります。(この場合、飼い主さんは最新のテクノロジーよりも先生を信じてしまいがち..)
歯周病は口腔トラブルだけにとどまらない
歯周病は歯肉トラブルだけでなく、時に致命的な疾患につながります。最悪なのは癌です。例えば「F.ヌクレアタム」という歯周病菌は結腸癌の周辺で検出され、癌が進行するにつれて数を増やしていく事が分かっています。そのため、結腸癌の発がんと進行に関与していると考えられています。Foremaで解析してきた中では、だいたい4,5頭に1頭くらいがこの細菌を保有しています。
一方、口腔内の悪の御三家の中核をなす「P.ジンジバリス」は、膵臓がんに関与という報告を始め、リウマチ、肝硬変、うつ、認知症やアルツハイマーにも関与していることが分かっています。歯周病にも関わらず脳からも検出され、しかもシナプスの働きを抑制していたという恐ろしい暗躍ぶりが解明されてきています。(BBB:血液脳関門を突破しているようです..)
古今東西、今も昔も食欲のなさは健康のバロメーターに違いありませんが、口腔内の破壊者がまさかここまで暗躍しているという事は、まだあまり知られていません。
獣医さんが1人で歯までカバーするのは大変なので、飼い主さんが普段から気を付けてあげるのが最善なのだと感じる次第です。

株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。
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