健康診断などで、「胆泥症(たんでいしょう)です」と言われることは多いと思われます。
症状もなく、いつも元気に過ごしているのに、何か怖い病気なような気がして不安ですよね。
この記事では、犬の胆泥症について、
- 原因や症状とは?
- 診断や治療方法
- 予防や対策はできるのか?
などを解説しています。
愛犬が胆泥症と診断された場合には、ぜひ読んでみてください。
目次
犬の胆泥症とは?原因について
犬の肝臓には『胆のう』という消化液(胆汁;たんじゅう)が貯まっている袋があります。
胆汁とは、脂肪を消化するために必要な液体で、
- ビリルビンという黄色い色素
- コレステロール
- 胆汁酸塩
- 水分
などから成り立っています。
食事の刺激によって胆のうが収縮することで胆汁は放出され、総胆管という管を通って十二指腸に流れこみ、そこで脂肪の分解を助けます。
通常の胆汁はサラサラした液体なのですが、ドロドロになってしまった状態を胆泥症と言います。
胆泥症の原因として、
- 年齢(加齢)
- 食事内容(高脂肪食、おやつのあげすぎなど)
- 体質
- 犬種(ミニチュアシュナウザー、コッカースパニエル、シェットランドシープドックなど)
- 基礎疾患(胆のう炎、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、高脂血症など)
などが考えられていますが、分かっていないことも多いです。
胆汁の収縮能力が低下していることも原因の一つです。
犬の胆泥症の症状
胆泥症それのみでの症状はありません。
そのため、健康診断等で偶発的に見つかるケースが多いです。
ただ、あまりにもドロドロになって胆汁がうまく分泌されなくなると、通過障害や閉塞によって胆のうが炎症を起こしたり、破裂してしまうことがあります。
その場合には、急激に症状が出ることが多く、
- 黄疸(白目や耳、おなか、歯ぐきなどが黄色くなる)
- 何度も吐く
- 食欲不振
- ぐったりする
- 発熱
- 腹痛
といった様々な症状があらわれます。
早期に対応しないと、胆汁によって腹腔内が汚染されて腹膜炎になってしまうこともあります。
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犬の胆泥症を診断する方法
犬の胆泥症は超音波検査にて診断をします。
診断自体はとても容易にできる病気です。
通常、胆のうはサラッとした液体が貯まっているため、エコーにて黒く抜けてうつります。
胆泥症になると、ドロっとかたい成分になるので、エコーにて白っぽく砂状・泥状にうつってきます。
エコー検査においては、胆のうの状態に加えて、総胆管や十二指腸、すい臓等の観察も行います。
また、血液検査にて併発疾患や基礎疾患の有無、肝臓の数値などもあわせて確認していきます。
胆のうの破裂によって腹水が出ている場合には、穿刺にて腹水検査も行います。
犬の胆泥症の治療法
胆泥が貯まっている状態のみで、症状がない場合には、積極的な治療はいらないと考えられています。
ただ、胆汁の排出を促す目的で、ウルソやスパカールなどの利胆剤や抗生物質が使われることも多いです。
もちろん、積極的な治療が必要な状況もあり、
- 胆汁の流動性が損なわれている場合
- 胆石症にて症状を示している場合(犬ではまれ)
- 血液検査にて肝酵素が高い場合(胆泥症のみが原因ではないことも多い)
などに対しては内科療法を、
- 胆のう粘液嚢腫(ムチンに富んだ液体が貯まって、胆のうが拡張している状態)
- 肝外胆管閉塞(胆汁の出口が閉塞している状態)
- 胆のう破裂
という状態になってしまった場合には、緊急的な処置(=手術による胆のう摘出)が必要となります。
外科的治療を行うような状況の場合には、腹膜炎をともなっていることもあり、最悪命を落としてしまうこともあります。
さらに、手術がうまくいったとしても、長期の入院が必要なことも多く、その分費用もかかってしまう疾患です。
また、胆泥症が何かほかの基礎疾患が原因で生じている場合には、そちらの治療も必要となります。
基礎疾患を治療することで、胆泥症がよくなる、胆泥がなくなるといったことも多いです。
胆のうを取っても大丈夫なのか
「胆のうを摘出しても大丈夫なの?」と思われる飼い主さんも多いと思います。
基本的には胆のうがなくても、それに対する症状は認められないため、治療は必要ありません。
あくまでも胆のうは『胆汁が貯まっている袋』であるため、胆汁が出なくなるわけではなく、貯められなくなるだけだからです。
胆のう摘出後は、胆のうがないことに対する治療は特に行うことなく、元気に過ごしている子がほとんどです。
胆のうがもともとない動物(馬など)もいることから、特に胆のうがないことでの障害はないと考えられています。
犬の胆泥症の予防と対策とは
胆泥症は老齢性変化でもあるため、予防が難しいこともあります。
ただ、低脂肪の食事を摂ったり、おやつをあげないようにして、バランスのよい食事をとることで予防が可能な場合も多いです。
低脂肪・高繊維など専用の療法食を中心に、ささみや胸肉などの低脂肪の食事を与えていきます。
「家族の誰かがこっそりおやつをあげていた!」なんてことも多いので、みんなで協力して対策をすることが重要です。
ただ、急におやつをストップするとストレスが溜まってしまうため、野菜など低カロリーなものに切り替えて対策するのもいいでしょう。
また、適度な運動も大切です。
太りすぎは脂質の代謝が上手にできなくなるため、胆汁もたまりやすく、ダイエットも必須となります。
おもちゃを使って一緒に遊んだり、晴れた日にはドックランやちょっと遠くにお出かけすることもいいですね。
あわせて、定期的な健康診断によって、早期発見や治療をすることも重要です。
特に胆のう疾患の好発品種や中高齢以降の犬の場合には、最低でも半年から1年に1回は健康診断を受けるようにしましょう。
【まとめ】犬の胆泥症について
犬の胆泥症は、健康診断で偶発的に見つかることが多い病気です。
症状や基礎疾患がない場合には、積極的な治療が必要ではないことも多いです。
ただし、胆泥がかたくなってしまったり、胆汁の通過障害が起きるような場合には、緊急的な処置が必要になることもあります。
また、胆のう疾患から肝臓疾患に移行することもあり、注意が必要です。
バランスのよい食事や適度な運動、定期的な健康診断を行い、胆泥症の早期発見と早期治療に努めるようにしましょう!
参考資料
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press
獣医学経験者。ペットに関することを、なるべく分かりやすくお伝えしていきたいと思います。