ペット愛好家の間で、トライプというと胃袋を指します。一方で、グリーントライプも、同じく胃袋を指します。両者の違いはどこにあるのでしょうか? なんとなく曖昧にされている概要をまとめてみました。
ペット用は全てグリーントライプ?
結論から書くと、ペット用のものはほぼグリーントライプと言えます。グリーンは、緑色ということですが、それはあくまで名称の話。区分としては「洗浄していない胃袋」という解釈で問題ないでしょう。
というのも、欧州やアジア諸国、中米においても人間用のトライプというものが存在しており、これらはしっかり洗浄され真っ白くなっています。
日本の場合、焼肉屋さんで目にする牛の胃袋(ミノやハチノスなど)がまさにそれで、国内ではトライプという言い方はしませんが、欧州では 普通にTripe として人間用に扱われています。
海外版のWikipedia にトライプの記述がありましたのでリンクを貼っておきます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Tripe
こうした、人間用トライプ(Tripe for Humans)とは別の商品として、グリーントライプというものが存在しています。
グリーントライプは緑色か?
グリーンというのだから当然緑色と思われますが、実際にはそうでもありません。グリーントライプは胃袋および内容物なので、当然食べたものの色が出ます。それが草由来であれば緑色になるのですが、秋以降の植生を食べた場合、秋色の草木や木の実の色が反映されます。
逆に家畜であれば、季節問わず人工飼料の色が出るのでしょう。
世にあるペット用のグリーントライプは、だいたい海外産で、ラムやビーフ、稀にベニソンが存在します。基本的に家畜ですが、飼育環境の良いニュージーランド産のものが多く出回っている印象です。(ニュージーランドでは国策として大規模な鹿牧場が存在します)
一方、Forema で出荷しているものは国内の野生種で、季節を問わず出荷しています。なので当然その地域と季節の色が出ます。
安定品質かと問われれば、「否(いな!)」です。
自然界に安定品質はありません。
自然界に、”いわゆる安定品質”はない
自然界に、工業製品のような品質の安定性はありません。
ただ、何を以て安定とするか。
色やサイズや形状、成分も、個体や季節で日々移り変わっていきます。鹿をはじめ野生の草食動物は、その時々の植生を食べて命をつなぐよう進化しており、また在野の植物たちもその時々の気候と昆虫と土中細菌に合わせて進化してきた太古からの営みがあります。
それら植生を適切に分解して栄養素とすべく、鹿の第一胃にはセルロースを分解できる好気性・嫌気性の細菌類が大量に生息しています。この体内の共存は一つの生態系(=マイクロバイオーム )で、鹿が鹿としていまの形に進化するはるか前から成立してきたと考えられており、そのルーツは種の起源的な、生物進化のロマンの領域となります。
そのロマンの延長線上に存在するグリーントライプ。色やサイズや風味や成分がばらついていたとしても、セルロースなどを分解してビタミンB12などの有益な栄養分に変えるという仕組みは盤石であり、その意味では「安定品質」だと言えます。
名前が紛らわしいので仕方ないのですが、グリーントライプの真髄は色にあらず。
時々入荷しますので、在庫があればぜひ。
愛犬用と思われがちですが、ニャンコにも是非。自然界の大型捕食者はむしろネコ科!
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。