室内で飼える小動物として静かな人気を維持し続けるフェレット。この愛らしい動物に、近年鹿肉を与えるという行動様式が登場しています。
はたして、このような愛らしい小動物が、自分の数十倍以上の鹿を食べるという事がありうるのでしょうか? 自然界の原理原則の観点から考察します。
フェレットは肉食動物
飼っている人からすれば当然の話ですが、フェレットは肉食です。それもかなりの。
先日、とあるフェレットオーナーさんにForema の鹿肉を使っていただけたのでご紹介します。
フェレットとはすなわちペット化されたイタチで、そのルーツはヨーロッパケナガイタチなどに由来するもの。イタチは、自然界においては下位の捕食者で、どちらかというとスカベンジャー(掃除屋)の側面が強いです。
山林における階層をざっと記述すると下記の通り。
- 超点捕食者:オオカミ/大型猛禽類
- 中間捕食者:キツネ/中型猛禽類
- 下位捕食者/スカベンジャー:イタチやテン、タヌキやアナグマ、イノシシなど
- 被捕食者:ネズミやウサギ、小型鳴禽類、シカなど
これらの他に、当然蛇や両生類、昆虫などがいるのですが割愛。
スカベンジャーの役割
イタチの属するスカベンジャーというのは、和訳すると「掃除屋さん」で、動物の死骸を食べるグループ。厳密にいうと、あらゆる肉食動物は動物の死骸も食べるのですが、プレデター(捕食者)とスカベンジャー(掃除屋)は区別されています。
山林で動物が死ぬと、タヌキやキツネ、イノシシやイタチ、テンなどあらゆる生き物がやってきます。奥山であればツキノワグマもやってきます。ツキノワグマは頂点捕食者に見られがちですが実際には雑食性で、生態系においてはスカベンジャーの役割を大きく果たしています。(ヒグマに関しては完全な捕食者)
フェレットの属するイタチのグループも、スカベンジャーとして、大型の鹿や猪の死骸を食べにやってきます。タヌキやイノシシ、アナグマが雑食性の延長で動物の死骸を食べに来るのに対し、イタチやテンは、肉食動物として死骸を食べにやってきます。
フェレットに与えるなら鹿肉?
自然界においても、(生息地にもよりますが)イタチは鹿肉を食べている事は多いので、フェレットに鹿肉を与えることは理にかなっていると言えます。ただしその子が好んで食べるのであれば、という前提ですが..。
加熱するか、生で与えるかはその飼い主さんの判断によるのですが、かわいらしい小動物という観点ではなく、生態系内における本来のポジションという文脈であれば、むしろ鹿肉は推奨すべき食材と言えるでしょう。
尚、イタチ本来の生息域は水辺が多く、両生類やサワガニ/ザリガニなどの甲殻類、昆虫類も捕食するので、そういったところから得られる成分を補っているのが既製品のフェレット用フードなのだと理解しています。
足りないタンパク質を補う、もしくは本来の嗜好性に沿ったフードを与えたい、そんな時に鹿肉や猪肉といった選択が有益ですね。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。