農業で、三姉妹農法という方法があります。以前サクッと取り組みを開始し、いつの間にやら失敗していたので、教訓のためにもここに経緯を記載しておきます。
目次
三姉妹農法とはなにか?
三姉妹農法は、とうもろこしを軸に、豆類、そしてカボチャをセットにして育てるもの。
とうもろこしが天にそびえ、豆はそれを支えにして一緒に伸び、カボチャは地表を覆って雑草の繁殖を抑えます。アメリカの原住民が古来から行なっていた農法だとされています。
豆類は土中に窒素を固定するので、土中細菌にとってもその他の植物にとっても良い環境が生まれます。化学肥料に頼らないのであれば、窒素の固定は外せないところです。
一方、カボチャが横にわさわさ伸びて豆類とともに地表を覆うことで雑草類の進出を阻み、また表土を直射日光から守ることで土中の保水が継続します。
書けば簡単。誰でもできそうでびっくりします。が、現実にはそうはならなかった。
Forema 農園での取り組み
この三姉妹農法は、不耕起栽培と組み合わせ、弊社の廃校物流センター近くにあるForema 農園で今年の初夏から実戦したもの。
その流れは下記の通りです
- 5月末
- 広島市内の本社事務所プランターにて、とうもろこしと豆類を播種。すぐに芽が出てすくすくと育つ。少し遅れてカボチャも登場。とうもろこしと豆類は市販のものである一方、カボチャの種は無農薬農家さんから購入したカボチャから採取したもの。基礎体力の高さに期待。
- 6月上旬
- 少し遅めながら先にとうもろこしだけForema 農園の不耕起エリアに移植。2列の計12本。
- 6月中旬
- 枝豆、ささげ豆をとうもろこしの間に移植。少し遅れてカボチャも移植。
- 6月下旬
- 梅雨前半は雨が少なくひやひやするも、とうもろこし、カボチャ、豆類共に健在。特にとうもろこしの伸びは在野の草花を圧倒するものであった。
- 7月中〜下旬
- 異様に雨が多く、光が出ない。この間カボチャが在野の草花に押され、地表を覆うどころか逆に覆われる羽目に。
- 7月上旬〜
- 枝豆がとうもろこしに巻きつき始める。が、とうもろこしが思ったよりヤワで、枝豆に引き倒されそうなシーンもあり。この頃から在野の草花の猛追が始まる。
- 8月上旬
- 梅雨明けとともに在野の草花が驚異的な伸びを見せ始め、とうもろこしを果敢に追撃。この頃にはカボチャの存在は皆無となる。
- 8月中旬
- お盆前の時点では密林状態ながらも切磋琢磨していたこうもろこしと豆類の2姉妹でしたが、お盆前後の連続した猛暑日で壊滅。お盆が開けてみれば、豆類がとうもろこしを地に引き倒し、全滅の様相でした。豆類は、他の大きめの在野草花にかたっぱしから絡み、下の方では果敢に横に伸び、8月末の時点で、最大の勢力に到るのでした。
なんでそうなったか?どうすればよかったか
子供のケンカに手を出せ
今回は、あえて水やりもしない、初回以外はほぼ草刈りもしないという観察フィールドだったので、なるべくしてなったとも言えます。ではどうすればよかったのか?
明快なのは、少し草を刈って手助けしてあげる。たったそれだけのことを何度かやるだけで良かったように思います。子供の喧嘩に大人が出るというわけです。
お水は雨水の汲み置きがあったので、たまにはあげればさらに良かったのだろうと思います(※)。(※今回は自然界の中での共存・生存が主だったので、おいしいかどうかはまた別)
在野の草木は生き残り、野菜が死滅した理由
今回の三姉妹農法で、あえて放置に徹したのは、在野の草木が育つのならば(=オーガニックな健全環境であれば)野菜たちも健全に育つだろうという仮説があったからです。
が、現実にはそうはなりませんでした。なぜか。
野菜は畑という「親切な環境」に最適化して進化して(というか改良されて)きたから。農業の始まりは8000年前とも言われますが、自然界の中の突然変異種を人間が選別して育ててきたのが始まりです。
その突然変異種は、自然界の中だと淘汰されていたかもしれない種で、要はサバイバル向きではないという事。
また、在野で取捨選択され生き残ってきた種と、どこかの種メーカーが化学肥料ありきの前提で量産した種のポテンシャルが同じではないという話です。発芽率は悪いが抜群にタフな種と、”よわよわ”かもしれないが80-90%が発芽する種。商品になるのはどちらかと問われれば、今の日本社会は後者をえらぶのだろうと。
その”よわよわ”は、当然在野のサバイバーには太刀打ちできないというのが真相だと感じました。だから子供の喧嘩に親が出て行って草刈りをしなくてはならない。
農業の起源については、下記の書がとても参考になるのでおすすめ
余談ながら、ここで1種生き残った枝豆と同じプランター出身の株が、私の自宅の家庭菜園でも一人勝ちしていたのですが、秋口に気まぐれでまいたサラダ菜に完敗しました。サラダ菜は、ちょっと触ると破れるほどにやわなのに、そうではない別の力学で圧勝したのでしょう。
どうも土の下で何か起きていたっぽいのですが、詳細はよくわかりません。サラダ菜は、まくタイミングが悪かったのでほとんど芽が育たなかったのですが、枝豆の周りでだけすくする育ち、やがて主人を倒してしまったという流れ。
自然界の不思議。
Forema 農園のその後
最後に、完敗した三姉妹農法の脇で、ひっそりと生き残っていた他の野菜について、サラッと紹介しておきます。
このたび幸いにも知見を得られたため、来年はさらに(??)有益な農園へと発展させたいですね。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。
農家でも何てせもありませんが三姉妹農法にちょっと興味があったので記事を読ませていただきました。実際やったらどうなるかすごく分かりやすかったです。こうしてコメントしてる一番の理由は民俗学や人類学が好きでジャレドダイアモンドのファンだからなのですが、農業素人のイメージとしては三姉妹とも旱魃にも冷害にも虫にも病気にも強そうなイメージがあったものの豆最強すぎという展開は自力では想像し得ませんでした。もしかしたらそれぞれあまり品種改良してないものと原産地の気候風土ならうまくいくのかも知れませんね。子供の喧嘩に介入すべしってのは自分自身が兄弟姉妹に虐げられっ放しだったリアルな過去があります。無為自然になるようにならせて置くのも一つの手なんでしょうけど、もし自分に子供がいたら無意識に介入してたと思います。ただ人間以外の生物の共存はどこで線引きすれば良いか、自分はそれぞれの生物でないから分からないのが動物でも植物でも難しいところだなってこのコメントを書いてて思いました。
コメントありがとうございます。今年で3年目ですが、適度な草刈りで適度な畑になっています。草刈り以外の要因としては、種の発芽や苗付のちょっとしたタイミングも重要で、自然の草花より先にスタートダッシュを切れるかどうかは地味ながらも大きな要因と感じています。(今年のカボチャは在野イネ科の猛追を振り切っています)
一方で、どんなに手をかけても、弱い種は発芽の段階から弱く、手をかけても結局は虫がついて淘汰されていく事がわかりました。
いわゆる害虫は、弱った株にだけつくので、害虫被害というのは害虫の問題なのではなく、野菜側の問題なのだと改めて感じます。