先日、奥三段峡のシャワークライミングをレポートしましたが、今回はその下流の景勝地、三段峡のシャワークライミングをご紹介します。
今回は三段峡の長渕から龍の口までの距離を水面から遡上します。距離としては大したコトないのですが、楽しみながら遡上というミッションにより、1日仕事となりました。
ダムより下流で水量も豊富な渓流
大型ダムのない支流の原流域にあった奥三段峡とくらべ、下流のこちらはダム湖はさんで水量も水流も数倍規模のもの。雨が降るたびに濁流が渦巻き、それによって水底が洗われて透明度が復元するサイクルが繰り返されています。
語るよりも見るが早いということで、写真をぽんぽんと掲載していきます。
上流域の生態
このあたりは源流域に比べると下流に位置しますが、それでも川全体で見れば上流に位置します。とある識者が言うには、本来いるべき種類の魚たちがしっかり揃っているらしく、完璧な川なのだそうです。オオサンショウウオも多数生息しています。
上流に大型ダムがあっても完璧な川なのであれば、ダムが無かった頃はさらに魚も水量も豊富だったのかもしれません。(多数の支流がダムのマイナスを払拭しているとも言えます)
アブについて考える
渓流全般に言えるコトですが、タイミングによってはアブが多くて腹が立つ事が多いです。
生き物にはそれぞれ役割があります。アブは、従来は水辺に来た哺乳類の血を吸っていたそうなのですが、こいつらだけは本来の生態系においていったいどんな役割があるのかさっぱりわからず、かたっぱしから迎撃して叩き落とす事に終始する時間もありました。
で、調べてみると、やはりアブは生態系におけるスカベンジャーの役割を果たしており、死肉などを分解しているそうです。で、たとえばアメリカミズアブの幼虫などはフェニックスワームと呼ばれており、飼料としての栄養価がパーフェクトなのだと。
アブは自然界の有機物を土に還す役割を果たし、幼虫そのものはカエルや鳥や魚にとっての大のご馳走なのだと理解できます。(食用としてフェニックスワームを活用する研究もされている!!)
その意味では、本来人間がいるべきではないところで有益な働きをしているのがアブで、そこに我々が入り込んで行って勝手にキレているという構図もないわけではないのかもしれません。いわば生態系の門番。
ツエツエバエ の事例
門番としての似たような事例に(?)アフリカのツエツエバエ があります。ツエツエバエに刺されると激しく痛む上、人も家畜も眠り病という重篤な病に感染する事があるため、結果としてツエツエバエ の生息するアフリカ中央部には西欧人の農耕/牧畜による入植が全く進まなかった(=自然が守られている)という歴史があります。
余談ながらマサイ族にはツエツエバエ の眠り病に対する抗体があるそうです。
姉妹滝と竜ノ口(たつのくち)
この地域の継承スポットとして有名な姉妹滝と龍の口。遊歩道は崖上にあるため、水面からこの景色を眺められる事はありません。
資料には最深部で9mともありましたが、現在は5,6mほどらしいです。
しょっちゅう濁流が押し寄せ、その都度景観の変わる渓流域はまさに生き物。巨大な落石や倒木が月日と共に様々な姿に変わっていくのだと思います。
三段峡の語源である三段滝も、台風によって現在は二段になっている点など、とてもわかりやすい事象だと言えます。
竜ノ口は、いわゆるゴルジュ地形で、深くえぐれた上に水流が激しく、どうやっても突破は無理でした。
自然に抱かれるシャワークライミング。本格的な沢ヤの領域ではない、アクティビティとしての楽しみ方が最も無難だと感じた次第です。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。