廃校にたたずむ桜の名木
Foremaの廃校物流センターでは、先日桜が満開を迎えました。空き物件として初めてこの廃校を紹介されたのがちょうど1年前の桜の季節。当時は曇天続きでしたが満開の古木に一目惚れしたのは言うまでもありません。
あれから1年。さまざまな紆余曲折を経て廃校物流センターも無事稼働を開始。快晴続きの今年は本当に見事な桜満開の季節を過ごすことができました。
COVID-19の影響で、花見すらも自粛の雰囲気が漂う2020の春。過疎地の津浪集落では人影もまばらで、誰にも愛でられることもなくひっそりたたずむ古木には、様々な哀愁と自然美を同時に感じることができました。
50年前には人口1000人を数えた津浪集落も、現在では300人を切り、そのうち大半が高齢者です。そんな集落の中心に位置する旧 津浪小学校の開校は明治8年頃で、明治維新によって全国に学校が開設された時期に登場したようです。
当時は今とは別の場所にあったらしく、以後平家の校舎に変わり、移築を経て、現在の2階建ての形になったそうです。
学校の詳しい歴史については役場の人に聞いてもよく分からず(今の役場は合併前は別の自治体だった)、また集落の重鎮に聞いても正確な年代がぼんやりしているため、また追って詳細を確認したいと思っています。
樹齢80年の古木?
ソメイヨシノの寿命は、一般的には50〜60年ほどと言われていますが、環境がよければ100年以上生きる場合もあるのだそうです。
現在Foremaで使わせてもらっている職員室には過去の写真がいくつか飾ってあるのですが、昭和53年の写真には、校庭にはすでに立派な桜の大木が2本そびえています。写真の向かって右側は現在若木が育っていますが、42年前には左右同じくらいの大きな桜がドンと構えてありました。(その当時で屋根より高いサイズ)
別の廃校では桜が切られる
冒頭の満開写真を撮影したわずか数日前、同じ安芸太田町内にあった廃校・旧戸河内中学校で解体工事が始まりました。校舎解体の下準備として、卒業生の植えた桜や椿などの樹木がことごとく伐採され、たったの数時間できれいな更地になってしまいました。
解体着工に先立って前月に開催された住民説明会では、桜の木の温存や移植の要望が出たのですが、建物自体に倒壊の危険があるという理由でどうにもならかなったそうです。
誰に聞いても「もったいない..」というこの話。「住民の安全のため」という大儀で「住民の要望に即さない行為」がなされてしまうという、人間界にしばしば存在するしょうもない矛盾を露呈してしまった当件。「桜の木を切ったらバチがあたるよ..」などと囁く人もいたのですが、そのわずか数日後に現職の町長が、国会議員から選挙がらみの現金を受け取ったことが発覚。伐採から1週間もしないうちにスピード辞任という強烈なオチがつきました。
植えるのも人ならば、簡単に消し去るのも人。桜の木はとても分かりやすい事例ですが、自然界に対しての同じような事例は世に溢れかえっているように思います。
巨大な悪が存在しているのではなく、(特に行政の)ちょっとした気配りの欠如や小さな怠慢の積み重ねが「非常にもったいない」事態を全国に量産しているのだと日々感じています。(なのでForemaでは、民間手動でより良い前例を作っていくべく奮闘しています)
旧津浪小学校でも同様の危険があった?
Forema物流センターのある旧津浪小学校は2016年の3月を最後に廃校になりました。その後2年以内に使い道を決めるという事だったそうなのですが、2019年3月の時点で将来の予定は空白のまま。そのタイミングでたまたまForemaが縁を頂くことができたという流れです。
実は今もなのですが、すでに雨漏りがひどく、この後どうしようかという話も出ていた様子。一歩間違えれば校舎は解体、桜の木も伐採という可能性も無かったとは言えません。それでも雨漏りは修理すれば治りますし、逆に放置すれば校舎を腐らせます。
活かすも殺すも人。
事業をさらに成長させ、校舎も桜も末長く生き続けられるよう尽力する次第です。来年は一般の方にもご来校いただけるよう、施設を整えていく予定です。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。