手のひらで輝く海ほたる

宮島の「夜の水族館」に行きました

最終更新日:
公開日:2017/08/03

宮島水族館開業50周年事業「夜の水族館」に行って来ました。この事業は抽選で、私はこういうのが当選する事がない人生でしたが、機運上昇の瑞光か今回運良く”繰り上げで”当選する事ができた次第です。(落選連絡後に当選連絡が来た)

夜の水槽内
夜の水槽内。ライトアップはほとんどせず、ショーではなく観察に主眼を置いているのが分かる。ほの明るいのは1つだけある月っぽい照明と天窓からの外光。広島の日暮れは東京に比べ30分遅い。

夜の水族館というと、東京をはじめ全国で取り組みがされているようですが、当宮島水族館(みやじマリン)においては、エンターテイメントの要素を少なめにした、レジャーではなく「研究と観察」に主眼を置いた内容だったように思います。これは個人的にはとても賛成で、水族館や動物園はショービジネスの場ではなく、教育と啓発の場にする事が時代の要請だと感じています。というよりも、そうしないともう地球がもたないところまで来ているいのだと思います。

ストロボなしであれば撮影OKとの事だったので、抜粋ではありますが概要をお伝えします。

真っ暗の中を懐中電灯で歩く

暗い水槽を照らす
暗い水槽を照らすと魚の姿が浮き上がる。昼間は鮮やかなタイプの肴でも、夜間は色が落ちる。

横文字でナイトアクアリウムと書くと、幻想的な照明でロマンティックな演出を想像しますが、こちらは漢字で夜の水族館。文字通り(?)そのまんまの内容でした。夜なので館内は照明がダウン。その中を飼育員さんの懐中電灯を頼りに水槽を観察するという内容でした。(60人が15人ずつ4グループに分かれて行動)

牡蠣筏の生態系を再現した水槽
牡蠣筏の生態系を再現した水槽。全国でも宮島水族館にしかないもの。地味ながらも身近な生態系がある。

見ての通り、色気やエンターテイメント性は皆無ですが、海としてのリアリティがあります。写真は広島名産の牡蠣筏を再現した水槽ですが、本物同様の生態系が構築されています。よって夜になってようやく活動を開始する生き物がいるとの事。この時も牡蠣殻のあいだから「なんとかエビ」が現れ、甲殻類ならではの生態を披露していました。

懐中電灯を片手に水槽を覗き込む。
懐中電灯を片手に水槽を覗き込む。多くの水槽で昼間とは違った姿、生き物が見える。

生きた化石カブトガニ

カブトガニ
生きた化石とも呼ばれるカブトガニ。化石として発見された太古のものと現物がほとんど同じという意味。

海においても夜行性の生き物は多いですが、そんな中でも瀬戸内海で有名かつ貴重なのがカブトガニ。地味ですが、2億年前から形を変えていない事から生きた化石と呼ばれています。シーラカンスは3億6千万年前とか4億年とか言われていますが、概ね似たような世代なのだと思います。ちなみに人気のダイオウグソクムシは最古の化石が300〜400万年前なので、その意味でも2億とか3億年前という年月の凄みがわかります。

裏返したカブトガニ
裏返したカブトガニ。懐中電灯の効果もあり、特撮とかエイリアンを彷彿とさせる姿。実際にはエイリアンのモデルは他にいるらしい。

長い間姿を変えていないという事はその形態であらゆる環境に適応できたという事ですが、その環境自体が激変している今、変わらない事が致命的になる可能性があります(これは企業も同じ)。事実、近年生息エリアおよび生息数が激減しており、今後が危ぶまれるのだとか。夜だから動きが活発かと思いきや、昼間とあまり変わらなかったです。擬人的な表現をすると「マイペース」とか「不器用」な部類に入るように感じました。

カブトガニに触れる
カブトガニに触れる子供達。生息地域は減少しているが、一方で瀬戸内海の水質は改善。今後は産卵地保護の取り組みが重要になるのかもしれない。

暗闇の中で照らされる風貌はエイリアンを彷彿とさせますが、実際にはとてもおとなしい生き物。子供達が大喜びでした。

夜になるとイカがイワシを食べる

牡蠣の水槽の底辺部分
牡蠣の水槽の底辺部分。夜はイカがイワシを食べるらしい。

冒頭でも触れた牡蠣の水槽(の底の方)。衝撃的だったのが、水槽内のイカが「夜になるとイワシを食べる」という真相でした。水族館の中の生き物は、サメであっても小さな魚は食べない、という不文律がいつのまにか刷り込まれていましたが、実際には食べているという・・。

水槽内のイカ
夜の水槽内を泳ぐイカ。夜間に動きの鈍ったイワシを捕食する。

見ると確かにイカが泳いでいます。で、よく聞くとこの水槽にはイカが2種類いるのだそうです。そのうちの1種がイワシを捕食するらしいのですが、そのイカがいるせいでイワシたちが群れで丸まって泳ぐようになるとの事。自然界に近い状況になるので生態系の再現としてもリアリティが増すのだと思います。よって水族館の立場としても「イワシを食べるけれど、いてくれると助かる」存在なのだそう。

イカの卵
イカの卵が見れるとの事。今回産卵したのとは別の種類のイカがイワシを捕食している(と解説があったように記憶)

海ほたる

海ほたる
手のひらで光る海ほたる。海ほたる自身が光っているのではなく、身を守るための蛍光物質を放出している。囮とか威嚇という意味合いらしい。

首都圏で海ほたるというと東京湾アクアラインですが、地方では”海ほたる”といえば”海ほたる”です。と言っても地方に住んでいても実際に目にすることはありません。いても夜に海に入る事がない上、実際には真っ暗な海というのは地方にも少ないので、身近でも遠い存在なのかもしれません。

海ほたるの発光
円柱形の水槽。分かりやすいように微弱電流で刺激を与えたところ。海ほたるに負荷がかかるのであまりできないそう。
手のひらで輝く海ほたる
手のひらで輝く海ほたる

この海ほたるは宮島の本土とは反対側(人が来ない方)で飼育員さん自らが捕まえたものだそうです。海ほたるは暗くて干上がらない内湾にいるという話でした。夜に海に入る勇気があれば出会えるんだろうと思います。

大人と子供の観点は異なる

タチウオの水槽と子供たち
タチウオの水槽に張り付く子供たち。大人よりも子供の方が楽しんでいるようす。
幼児でも分かる
幼児でも分かる、いや幼児だから分かる。

今回の取り組みは「水族館=ショービジネス」という捉え方に慣れていると、なんだか地味でつまらないと感じてしまうかもしれません。が、先入観の少ない子供たちはとても生き生きしていたのが印象的です。単に暗いのでワクワクしていたという側面もあるとは思いますが、一つ一つの暗い水槽を食い入るように見ていたのは大人ではなく子供。明らかに大人より楽しんでいました。

照らされた水槽を凝視
照らされた水槽にへばりつく子供たち。そこからさらに観察は続く。
水槽を凝視
昼間とは違う水槽を凝視。ほの明るいのは天窓から差し込む日没後の残光とワンポイントの照明。

20年くらい前の事ではありますが、島根県にアクアスという水族館がオープンしました。オープン当初の評判はあまり良くはなく、中には「最悪じゃ」と酷評する私の知人もいたほどです。で、実際に行ってみると、私はとても優れた水族館だと感じ、何が最悪なのか理解に苦しんだ記憶があります。

その時の価値観のギャップについては、以後も各地の水族館にいくたびに思い出され、その都度理由を考えてきたのですが、つきつめると水族館を「ショービジネス」と捉えるか「観察」と捉えるかの違いではないかと今では思っています。観察というと堅苦しいので鑑賞でもいいのですが、言い換えれば「演出」を見ているのか「生き物」を見ているのかの違いと言えるかもしれません。ちなみにアクアスは、今では島根県内の代表的な勝ち組施設となっています。

水槽の横を歩く
大型水槽の横を歩く子供達。

子供というのは、派手な演出でも当然喜ぶのですが、何もない、何が面白いのかわからないものでも喜んだりします。今回子供達が喜んでいたというのは、おそらくはとても良い内容だったのだろうと思います。

水族館で得られるものは多いですが、もはや水族館でしか見られない生き物が少しずつ増えているという事を子供達が学んでいく事は重要だと思います。この数年で水産資源はもう崩壊スレスレのところに来てしまった現実を、大人たちはほとんど子供に伝えられていません。

ビジネスニュースなどを見ていると「かっぱ寿司が食べ放題にしたら大盛況」とか、「スシローのビジネス戦略が云々」みたいな事が賢そうに語られています。

それは違うだろ・・

と普通の感覚で言える大人が増える事を願うのみです。

夜の厳島神社

で、せっかくなので帰路に撮った夜の鳥居の写真でも。手持ち撮影なのでノイズがグワっと・・。

宮島の鳥居
ライトアップされた宮島の鳥居。
夜の厳島神社
鳥居の外側から撮影した厳島神社。潮が満ちて来たので構図の選択肢皆無!

神社の入り口と本殿の位置は微妙にずれているという事を、多くの日本人はなんとなく知っていると思います。厳島神社も例に漏れずそうなっており、殿正面に立つと鳥居の足の部分になります。引き潮で海の通り道が見えるので分かりやすいですが、これは正中をずらすという古来からの様式なのだそうです。

神道関連は一見難解なものが多いのですが、説明を聞くと古来からの日本人の自然観が伝わって来てすんなり入って来ます(すぐ忘れますが・・)。

宮島水族館

〒739-0534 広島県廿日市市宮島町10-3

TEL:0829-44-2010 / FAX:0829-44-0693

http://www.miyajima-aqua.jp

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