健康や環境への影響も…。 抗生物質汚染と食肉への残留について

最終更新日:
公開日:2019/07/30

抗生物質という言葉はご存知だと思います。ただ、具体的には何なのかはあまりよく分からない人も多いのではないでしょうか? ましてそれが健康や環境/生態系にとって脅威になっている可能性がある事はまだあまり一般には知られていません。ここでは抗生物質と環境問題、そして人やペットの疾病との関連について記載するとともに、鹿・猪などの野生動物のお肉の有用性について解説したいと思います。

抗生物質とは何か?

いきなりWikipediaから引用します。

抗生物質とは「微生物が産生し、ほかの微生物の発育を阻害する物質」と定義される。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%97%E7%94%9F%E7%89%A9%E8%B3%AA

20世紀の偉業の一つとして挙げられるのが「ペニシリンの発見」ですが、ペニシリンは一番最初に発見された抗生物質です。以後、結核の特効薬であるストレプトマイシンや、より広範に効果のあるカナマイシンなど、さまざまな抗生物質が開発され、多くの命を救ってきた歴史があります。梅毒を制圧したのもペニシリンの功績によるものです。

そんな輝かしい薬剤が今、ネガティブな響きを帯び始めています。それが抗生物質汚染です。

抗生物質の何が問題なのか?

環境への負荷/抗生物質汚染

聖湖

梅毒ではないのですが、近年「スーパー淋病」というものが登場しています。これは抗生物質の効きにくい淋病のことで、抗生物質に対する耐性を持った菌、いわゆる「薬剤耐性菌」が登場して静かに蔓延しているという話です。

以下、ナショジオからの引用。

CDCの推定によると、米国では毎年約82万人が淋病に感染していて、そのうちの半数以上が報告されている。多くの患者は明らかな症状がないため診断を受けていないが、淋病の治療は以前より困難になっている。昔からある安価な抗生物質は、誤用され、過剰に使用されてきたせいで、今では効かなくなっている。最も一般的な性感染症である淋病、クラミジア感染症、梅毒のうち、抗生物質耐性が最も強まっているのは淋病である。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/040200145/?P=2

薬剤耐性菌の登場の背景にあるのは抗生物質の乱用です。農薬にさらされ続けた雑草群や害虫類の中からやがて耐性持つ個体が登場するように、淋病をはじめとする細菌類の中にも耐性を持つものが現れ、深刻な問題へと発展しはじめています。

聖湖

英国の研究者らによって近年実施された調査で、世界中の多くの河川から抗生物質が検出されたという報告があります。生活/医療排水の中から除去されずに流出したものが大量に自然界に流れ込んでいる事が原因のようです。

再びナショジオから引用します。

英ヨーク大学の研究者らが、フィンランドで開催された環境毒性学化学会欧州支部の学会で2019年5月27日に発表した最新の研究によると、テムズ川からメコン川、チグリス川など、世界中の91河川を調査したところ、3分の2近くで抗生物質が検出された。

この研究を率いた1人であるヨーク大学の環境化学者アリステア・ボクソール氏は、これは大問題だと話す。「生理活性物質である抗生物質を、私たちの社会は自然環境に大量に排出しています」

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO46003500S9A610C1000000/

自然界に抗生物質が多く紛れ込んでいることを差し、抗生物質汚染と表現しています。

これによる問題は、スーパー淋病同様に薬剤に耐性を持つ菌の出現を促すという事で、それらが蔓延すると「薬の効かない感染症」によるパンデミックも想定され、ほとんどSFの世界が現実に起こりうるという事です。

抗生物質汚染…、今後頻繁に耳にするかもしれない、重要キーワードの予感大です。

21世紀は感染症との戦いになるそうです。しかしなぜ今さら? その原因として指摘されているのが気候変動、そして薬剤耐性菌です。ここでは後者にスポットを

体への負荷/腸内細菌へのダメージ

自然界に流出する抗生物質汚染も深刻なのですが、今回触れたかったのはこちらの方。すなわち腸内細菌叢への影響。

ヒトの腸内細菌は1000種を超え、数としては100兆を超える微生物が生息しているそうです。これは赤血球を含めた人体の細胞数にほぼ匹敵するのだとか。これら腸内細菌たちが近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)とかマイクロバイオームとしてにわかに注目を集めています。

ヒト(や動物)が食べたものはお腹で消化吸収されるわけですが、その前段階で数多の細菌たちによって分解されるプロセスがあります。特定の細菌が出す特定の物質が、気持ちを積極的にさせるホルモンの分泌を促す性質があったり、逆にそれを抑制する働きがあったりなど、腸内細菌の活動が「気持ちや行動」、時に「意思決定」にまで影響を及ぼす事が近年の研究でわかってきています(※)。

※例えば体内のセロトニンの95%が、脳ではなく腸内の特殊な細胞に含有される事が解明されてきた

もちろん免疫力や各種疾病にも影響を及ぼしており、下痢や便秘はもちろん、鬱や脳梗塞、心筋梗塞、さらにはアルツハイマーや自閉症にまで腸内細菌が関わっているという驚異的な事実があります。

鬱のマウスの腸内に健康なマウスの便を移植することで鬱が改善した、という実験結果もあります(その逆のパターンも実証あり!)。こういった研究が応用され、人間用の先端医療では「便移植」という治療も登場しています。

そんな重要な腸内フローラ/マイクロバイオームですが、これらを一網打尽にするのが抗生物質。良い菌も悪い菌も絨毯爆撃で制圧してしまいます。

以下名著より引用。

マイクロバイオーターの恩恵は、私たちの健康に絶大な効果を及ぼす。よく言及される主な恩恵には、腸が処理できない食物成分の商家の支援、身体による代謝の統制、食物とともに体内に取り込まれた有害な化学物質の処理や解毒、免疫系の訓練や統制、病原菌の侵入や増殖の防止などがある。

「腸と脳」エムラン・メイヤー 著

ここで引用した名著「腸と脳」は、文体はガッチガチに硬いのですが、この領域における直近の叡智が一般人にも分かりやすく凝縮して記述されている有益な書物。さらに以下のように続きます。

マイクロバイオームの異変や撹乱は、炎症性腸疾患、抗生物質の投与に起因する下痢、喘息などの様々な疾病を招き、自閉症スペクトラム障害、さらにはパーキンソン病などの神経変性疾患にも結びつく可能性がある。

腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか

上記の一文は間接的な表現ですが、本書ではマイクロバイオームを撹乱する要因として、抗生物質がしばしば登場します。

抗生物質投与後に便通をはじめとする体調の乱れが起こるのは以前から知られていた事で、それは時間の経過とともに回復します。健康な個体であれば腸内細菌も再び増殖し始め、元の状態に戻るのだとか。

問題は幼少期/胎児期における抗生物質の摂取で、これによりまだ完成していない腸内細菌叢が撹乱され、本来あるべき相を構成できないまま固定化され、成長後に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

お肉に含まれる(?)残留抗生物質

鹿肉でプランクBBQ
鹿肉でプランクBBQ

ここで触れておきたいのが食肉に含まれる(かもしれない)残留抗生物質です。現在畜産業界で使用される抗生物質は国が定めた基準値以内に定められており、残留は無い事になっています。

厚労省の「食品中に残留する農薬、動物用医薬品等のポジティブリスト制導入の取組」(2016.6.30)から抜粋します。

個別に規定されたものを除き、
 「食品は、抗生物質を含有してはならない。」 
 あるいは
 「食肉、食鶏卵及び魚介類は化学的合成品たる抗菌性物質を含有してはならない。」
ただし、対象食品の範囲は整合を図る。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/040630-1a1.pdf

また、近年では薬剤耐性菌の問題を考慮し、家畜に対しての抗生物質の使用は慎重に行われ始めているようです。以下、農水省のウェブサイトより抜粋します。

2015年5月にWHOが薬剤耐性に関する国際行動計画(グローバルアクションプラン)を採択し、薬剤耐性に関して関連分野が連携して世界的に取り組むべきとされたことを踏まえ、2016年4月5日に我が国の行動計画(アクションプラン)が策定・公表されました。

中略

農林水産省は、科学的知見に基づき、動物用抗菌性物質製剤(抗菌剤)と抗菌性飼料添加物についてリスク管理措置を実施しています。

http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/koukinzai.html

上記(厚労省)には食品には「含有してはならない」とありますが、厳密には含有0%というより「基準値以上の含有が規制されている」という点に留意が必要です。度々引用で恐縮ですが、日本調理科学会誌に詳しくまとめてありましたので紹介します。ただ資料が古いので最新では状況が変わっているかもしれません。

動物用医薬品の残留基準値設定に当たっては,動物を用いた急性毒性試験,慢性毒性試験,発癌性試験や変異原性 試験,更に微生物(腸内常在細菌叢)に対す影響や生体内 運命(吸収,分布,代謝,排泄)等の様々な安全性に関する情報が用いられている。これらの試験データを基に許容一日摂取量(Acceptable Daily Intake, ADI)を設定し,日本人の平均的な畜水産物の一日摂取量(厚生労働省国民健康・栄養調査成績)から試算される理論最大摂
取量が ADI を超えることがないよう残留基準値が設定されている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/43/6/43_366/_pdf

当時の科学的根拠に基づくものなので、担当省庁の方々はやるべき事をしっかりされていたのだろうと思います。一方で、基準値内のお肉を食べた人のマイクロバイオームへの影響は当然考慮されたものではないと思われます。そこから時は流れ、詳細の解析ができるようになった今、より踏み込んだ”科学的根拠”に基づく規制を期待したいものです。

仮に残留抗生物質が体に影響を与えていたとすると?

で、”仮に”抗生物質の残留する食肉を幼少期から食べ続けたら一体どうなるのか?? ここ数十年で子供達に肥満や鬱、その他特定の疾患が増え続けている背景の一つとして、残留抗生物質についても考慮しておく必要はあるように思えます。

このように書くと化学物質恐怖症みたいな捉え方をされてしまうかもしれないのですが、肥満や鬱以外にも、例えばアメリカにおける「自閉症スペクトラム障害」の割合などは激増しています(1966年 1万人に4〜5人→2014年 58人に1人! )し、アルツハイマーやパーキンソン病も同様。自己免疫疾患や代謝異常も増えており、これらはマイクロバイオームの異常・撹乱に由来すると考えられる点で共通しています。その異常・撹乱の原因の一つとして「抗生物質の広範な使用(※)」が考えられる、といった状況です。(※当然医療行為も含む)

他にも添加物だったり、残留農薬だったり、ホルモン剤だったり、わけの分からないなんやかんやが疾病の原因として疑われているわけですが、そのルーツが何であれ、共通するのはマイクロバイオームへの悪影響である事は間違いなさそうです。

下記は、抗生物質ではありませんが食品添加物がマイクロバイオームに影響を与え、自閉症につながっていると指摘する記事。

加工食品などに使われているPPAを妊娠中に過剰に摂取すると、腸内細菌のPPAが増える可能性があるという。それが胎児の脳の発達に影響し、グリア細胞の増殖、神経構造の異常、炎症の増加などを引き起こし、自閉症のリスクを高める可能性があるのだとナサー博士は説明する。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/07/post-12597_1.php

次世代型シーケンサーの登場によって、(例えば腸内1000種の)細菌のDNAレベルまで解析ができるようになったため、現在この領域は急速に研究が進んでいます。

既存の経済界にとっての不都合な真実はゴロゴロ転がっているはずで、当初は混乱するも、やがては人類にとって有益な研究領域になるのだろうと勝手に期待する次第です。

鹿や猪が抗生物質フリーという話

で、ここからが本題みたいな部分もあるのですが(..マジか??)、国内でジビエジビエともてはやされる鹿や猪。当然ながら抗生物質の残留がありません。無添加という言葉がありますが、さらにピンポイントで抗生物質フリーという言葉を強調したいです。(※添加/無添加は加工品の話なので、お肉そのものに対してはフェアではないような気もします)

人間ではそこまで多くは聞かないのですが、ペットの場合、家畜の牛や豚でアレルギーが出て、鶏肉にしたけどシニアになってやはりアレルギーが出て..馬肉、ラム肉..と渡り歩くケースが多くあると聞きます(一般論においてもそうですが、弊社ユーザーアンケートでもこれは顕著)。

そんな中で最後に鹿や猪にたどり着くというケースが多々あります。

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市販のドッグフードでアレルギーが出始め、手作り食に切り替えたという人が増えています。 牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉…。そして最後に鹿肉にたどり着くというケ

アレルギーというのは特定のタンパク質がアレルゲンとなり、体の免疫が過剰反応する事。一見アレルゲンが悪者に見えますが、そのアレルゲンに対しての抗体があったとしても必ずしもアレルギー反応が出るわけではなく、それを発火させる「なにか(増悪要因)」があるようです。

それはストレスだったり老化だったり、外部刺激だったり、そしておそらくはマイクロバイオームの変調だったり。過度のアレルギー反応は先に触れた自己免疫疾患そのものであり、由来は腸内と断言しても良いのかもしれません。

人においてもペットにおいても世の中には数多疾患が存在し、その原因は様々でも、免疫系を制御するマイクロバイオームが健全かどうかによって結果に影響を及ぼすのは間違いなさそうです。

長くなったので続きはまたいずれ。

↓追記:続き書きました。

人間のみならず、ペットの疾患においても近年急増しているアレルギー。老化とともに症状が悪化し始め、食べられる食材が限られてきたために鹿や猪を食材として選

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