昨今、主には女性の飼い主さんたちの間で「犬にも腸活」という意識が広まってきているようです。人間の間で少しずつ普及しはじめている腸内細菌(腸内フローラ)検査を愛犬にも! という需要も少しずつ増えており、Forema でもペット用の腸内細菌/腸内フローラ解析を実施しています。
ここでは、犬の腸内細菌(フローラ)検査の費用目安と、その内訳について可能な範囲で記載します。
目次
犬の腸内細菌解析っていくらかかるの?
2021年の相場は18,000円!
実施している企業自体がとても少ないのですが、他社さんを見渡したところ、2021年時点での相場は18,000円(税抜き)のようでした。これは人間とほぼ同じ価格です。対象が人であろうと動物であろうと、腸内細菌を解析するプロセスは同じなので、基本的にコストは同じです。
(大手保険会社さんがもう少し安く実施で実施できているのは、実際には保険料で回収するというモデルです)
18,000円もかかってしまう理由として、解析にはたくさんのプロセスが必要なため。ここの過程(DNA抽出や増幅、各サンプルへのインデックスマーカーetc..)で使用する薬剤や消耗品類が、なかなか高いという実情があります。
(例: 60ccで16万円とか..)
また、解析そのものに使用する機材の問題もあります。
昔は数千万円だった!?
腸内細菌を解析する機械は次世代型シーケンサーと呼ばれるもので、ほんの十年と少し前までは億単位の価格でした。それが数千万円台まで下がり、現在は一千万円台のものが民間解析で主流になっています。
これによって、かつては1回の解析価格が数千万円もしていたものが、3万円以下で実施できるようになったのが今の状況です。これはDNA解析も同じで、テクノロジーの恩恵と言えます。
腸内細菌の解析結果は何を意味するのか?
腸内細菌データは未知のジグソーパズル
実はここが難問です。腸内細菌解析によって実に多くのデータが得られるのですが、それが何を意味するのかが分からない。よって、世界中の研究者が広大なジグソーパズルを埋めるように少しずつここを解き明かしているのがこの数年の状況です。
Forema の腸内細菌解析サービス「byOm(バイオーム)」でも、解析結果から日々多くの情報を得ていますが、その過程で論文の参照をしていると、例えば10年前の論文と3年前の論文では、全く違うことが書いてあったりします。
わずか7年の差で膨大情報が上書きされ、真実が完全にアップデートされているということです。
論文と現実が異なる事もある
腸内細菌の解析分野は最もホットな研究領域の1つです。世界中で日々新しい論文が登場する中、比較的新しい論文で報告されている内容と、実際のユーザーさんのところで起きている状況が異なっている場合もあります。
この場合、まだ研究室では知られていない未知の真実があるか、またはその個体にだけ特別な事情があるのか..?
先日ユーザーヒアリングをしたときには、「実はその時期は○○のサプリを飲んでいた」とか、「軽い負傷で数日ぐったりしていた」「抗生物質を飲んでいた(※抗生物質だとは知らなかったらしい)」といった特殊事情が出てくるものです。
同時に、実際に論文の内容がそこまで正しくない事もあるわけで、その場合は新たな真実を自社の知見として蓄えていくのが有益なのだと思います。
腸内細菌(フローラ)の検査頻度ってどのくらい?
犬の腸内細菌解析は少なくとも2,3ヶ月に1回
かつて腸内細菌検査は年に1回の実施で十分とされていました。理由として、(大人の)腸内細菌は頻繁に変わるものではないという前提があったためです。が、実際には、腸内細菌は数日単位で(場合によっては数時間で)大きく変動することが分かってきています。
よって1年に1回では少ないと言えます。ましてドッグイヤーは7年。人間にとっての1年後は、犬にとっては7年で、その間に何か異変が起きていても検知できないのは良い事ではありません。
解析と変更を繰り返し、最適解を導く
愛犬の腸内細菌/腸内フローラの解析を実施することで、食べ物やサプリを変える飼い主さんは多いのですが、「ではその結果どうなったか」の答え合わせをする人はまだ多くありません。変えた事で満足しているのだと言って良いように思います。
が本当に重要なのは、むしろ「変えた後にどうなったか?」であり、その答え合わせの結果、さらに食べ物やサプリを微調整をし、その個体にあった「最適解」を目指すことが不可欠です。
その結果、その子だけの黄金率が把握でき、本当の意味での未病、健康寿命の増進が実現できるはずです。
そのためにも、複数回実施できるようForemaでは少し無理をして解析価格を下げています。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。
こんにちは。
とても興味深い記事が多く、全ての記事を拝見して、愛猫の腸内細菌解析サービスを御社にお願いすることに致しました。
ちょっと気になるのは、ワンちゃんに関する記事が多いのですが、猫の研究はまだまだという事でしょうか?
コメントおよび、解析のご依頼、まことにありがとうございます。
犬関連の記事が多いのは、現在の顧客比率がどうしてもワンちゃん寄りになっているという事情があります。また、ワンちゃんの方が潜在的な健康課題を抱えている割合とても高いと感じており、腸内細菌解析が急務だという背景もあります。
(=困っている人口が多い)
とは言え、猫ちゃんの飼い主さんからの依頼も3割近くを占めており、実際には健康問題に悩まれている方が多いのだと感じています。猫ちゃんは不具合を表に出さないのでなかなか気づきにくいのですが、だからこそ前もって解析をしておくことが重要なのかもしれませね。
現状としては、猫ちゃんのデータもまとまった量が集まっており、文献でもあまり見られない興味深い実例を把握しつつあります。猫ちゃん関連の記事につきましては、別途時間を取って少しずつ書いていきますので、もう少々お時間をください。