夏も終わりに近づいてきましたね。この夏に帰省やレジャーで、山間部をドライブをされた方も多いと思います。その時、動物のシルエットが描かれた黄色い標識を見ませんでしたか?今回はそのお話です。
写真:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:KomoriHirai_mossy_surface_20140629.jpg?
1日あたり100件近く? ロードキルの実態
山間部の暮らしに欠かせない車、そして道路。その道路が野生動物の生活圏を分断している時、動物たちは道路に侵入してきます。そして起こってしまうのが車との衝突事故、「ロードキル」です。動物と車の事故は、国内の高速道路に限ってみても、年間で3万5千件も起きていて、しかも年々増え続けているということです。一日あたり100件近くも起きている計算になります。
被害が多いのはタヌキ
特にロードキルの件数が多いのが「タヌキ」で、全体の4割も占めるそうです。なぜタヌキが被害に遭いやすいのでしょうか?それはタヌキが、驚くとうずくまって動かなくなる習性をもつことが関係しているようです。また、タヌキは雑食で、ロードキルに遭った他の動物を餌として路上に侵入してくることがあるそうです。ロードキルの2次被害に遭ってしまうのですね。
子離れの時期に増える
さらに、タヌキのロードキル件数は10~11月に増えるという話もあります。これは、タヌキの子別れの季節です。タヌキはその時期になると突然、手塩にかけて育てた子供を噛みつきながら追い回します。その後、両親が交互に体をなめて丹念に毛づくろいをしたのち、子供を置き去りにするそうです。そんな厳しくも温かい儀式を経て独り立ちし、生活圏を離れた場所に求めて移動する子ダヌキ。その旅の途中でロードキルに遭ってしまうなんて…。親の立場で考えると、胸が締め付けられるような話です。
私たちにできることとは?
ロードキルを防ぐため、自治体も様々な対策をとっています。まず道路建設の前に、野生動物の生息域や行動範囲の調査が行われます。そして生息場所には注意喚起の標識を設置することはもちろん、侵入防止のフェンスを立てたり、道路の下に「けもの道」をつくったり。
それでも、動物の路上への侵入は完全に防ぐことができません。ロードキルを起こさないよう、ドライバーができることは何でしょうか?次のようなことは当たり前かもしれませんが、頭に置いておきたいものです。
- 野生動物注意の標識付近では速度を落とす
- 街頭の少ない地方の道では、状況に応じて上向きライト(ハイビーム)を積極的に使う(離れたところにいる動物を発見しやすくなる)
- 動物に対する危険予測をする(急に飛び出してくるかも、一匹去ってもそれを追って他の動物が飛び出してくるかも)
- 夜間から早朝は夜行動物(タヌキなど)に遭いやすいので、特に慎重に運転する。
By alpsdake [Public domain], via Wikimedia Commons
もしもロードキルを起こしてしまったら、他の交通事故と同じように警察に連絡して指示に従いましょう。ロードキルは見て見ぬふりをされやすいのですが、路上に動物の死骸があると、先述したようにタヌキなどが寄ってきて2次被害が発生しやすくなります。だたし、道路から移動させようと素手で野生動物の体に触ることはしないでください。思わぬ病気に感染することがあります。
地方の道では動物が出てくるのは当たり前。私たちは動物たちの住処を走らせてもらっている。増え続けているロードキルが減少に転じるためには、私たち一人ひとりの野生動物への配慮が不可欠だと思います。
