広島市内で、毎年恒例の? ジビエ花見BBQを開催しました。場所は原爆ドームから上流に1.2kmほどさかのぼった元安川川沿いの桜並木。デルタ地形の上に立つ広島の恩恵をうけながら鹿・猪を堪能した様子をレポートします。
使用した食材
今回使用した主な食材は下記の通り。
- 猪の骨つきロースブロック1kg(長崎県産)
- 猪のロースブロック1kg(福岡県産)
- 鹿の骨つきモモ肉ブロック1本(福岡県産)
- 鹿ロースブロック500g(大分県産)
- 夕方に水揚げされた牡蠣30個(広島県産)
- 鯛(広島県産)
- 通りがかった焼き芋屋さんの焼き芋 2個
参加者16人に対してジビエは3.5kg弱で1人あたま200g程という腹八分コースに設定。酒の席に有りがちなフードロス回避を目指します。
ダッチオーブンで猪のロースト
今回の主軸が、トライポットとダッチオーブンによる猪のロースト。1.5時間ほどかけてじわじわと熱を通します。火が通ったあとは「別に用意したミネストローネの大鍋」に肉を削いで投入する事を想定しています。
レシピ→ https://www.fore-ma.com/recipe/151
ダッチオーブンと火との最適な距離は手探りです。が、最適解は不明なため遠目の位置で放置。あとは時の流れに身を委ねる結果となりました。
結果。柔らかくじんわり火が通り、脂も適度に落ちて上々のできあがり。ただし猪の背骨は非常に強靭なため、効率よく肉だけを切り離すのは簡単ではありません。適度に肉を削いだあとは骨のまま鍋に投入して有料具材へと昇進させるのがおすすめです。
鯛のプランクBBQ
鹿ロースはいつものとおりプランクBBQで最適な仕上がりに。それに加え、今回はあらたに鯛でプランクBBQに挑戦しました。本場のアメリカではプランクBBQで魚介類を調理する例も多いらしく、それに倣って瀬戸内で取れた”そこそこの鯛”を使用。
ダッチオーブン用の火元が丁度良い具合だったので一時拝借して20分ほど加熱。蓋を開ければ泣く子と地頭も喜ぶ鯛のプランクBBQが完成となります。
ここで使用しているのは広島県産のプランクBBQ板。県北で切り出された杉の間伐材が原材料です。
鹿の骨つきモモ肉
今回参加者から静かに注目を集めていたのが「鹿の骨つきモモ肉」。いかにも足のような形をしているので、火を通す前は「え!あしっ!?」「何?うさぎ!?」などたじろぐ声も。食材としてのお肉と野生動物がリンクし、一部参加者に小さな動揺が生じたようです。そしてそれが食の本質。だから食料廃棄は回避に向け努力するのがすじ。
とは言え、火が通り始めるころには「原始人のお肉」、「ギャートルズ(※)」などのキーワードが飛び出し、初めて見る食材への興味、産地の背景にも関心が向いた人もいました。
※参加者はアラフォー/アラフィフが半数
レシピなど詳細については下記の記事に記載しています。
シメは瀬戸内の牡蠣
BBQのシメは瀬戸内海で取れた牡蠣。夕方に水揚げされたばかりのものです。というのも、この日は宮島近くの海辺で撮影のお仕事があり、車を止めさせてもらった空き地が偶然にも海辺の牡蠣屋さんの敷地だったという縁。なんと1つ30円という産直価格でいただけるという好機をえました。
牡蠣はポン酢やレモンという人もいますが、そのままカラ付きで網焼きにすれば塩味がきいていて上質なもの。かつては赤潮に代表されるように水質のあれていた瀬戸内も、近年は随分と改善しきれいな海が戻りつつあります。
余談ながら、広島県や岡山県では水質が改善したことにより養殖ノリの「色落ち」被害が出ており、漁協関係者から「下水排水規制緩和運動」が起きています。結果、一部の下水処理場では排水基準を緩和しています。簡単に言うと、少し汚い水を海に返しているということ。
海が痩せたとすれば、それは下水処理場の水が綺麗になったのが根本の原因なのではなく、ダムが山から流れる土砂と栄養素をせき止めていること、また人口の針葉樹林が増えすぎて流れ出す栄養分が減っている現実から目をそらす事はできません。
漁業関係者を助ける応急措置としては「あり」かもしれませんが、高級措置として排水基準緩和に頼るのは愚策のように思えてなりません。
ジビエBBQ、参加者の反応は?
今回の参加者16名のうち、半数ほどがジビエが初めて、もしくはほとんど馴染みのないビギナーたち。そしてその反応はすこぶる上々なものでした。特に女性陣からの鹿の評価はおしなべて高く、単価の安いモモ肉であっても高評価を得ており、潜在需要を垣間見たように思います。
料理人目線で食材を選ぶとハイシーズンのロースばかりに需要が集まり、流通に極端な偏りが発生します。ところがエンドユーザー側では鹿のロースに対しての執着は見られず、まして価格が下がるのであれば鹿のモモ肉の方にこそ大きな需要があるのは間違いなように感じました。
ともあれ、現時点ではまだ鹿や猪を食べると言う食文化が日本には普及していません。いや、かつて存在していた食文化が失われたまま食の欧米化・工業化が進みすぎてしまったのが現在の状況だと言えます。
国産ジビエの活用が叫ばれる背景にあるのは深刻な獣害問題であり、回避できるのであれば回避すべき殺生である事は間違いありません。が、現状では有効な回避策が登場しておらず、であればせめて食として活用する事で”ある程度”自然界のルールに寄り添うことができるのではないかと考えています。
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。