広島県と島根県の境にある大佐スキー場。タイサではなくオオサと読みます。先日フラッと山頂へウォーク・滑走してきたので軽くレポートします。
目次
ファミリーに人気 大佐スキー場
初級者に最適なワイドなゲレンデ
多さスキー場の最大の特徴は、縦より距離のある超ワイドバーン。斜面も緩いのでかなり安全に上達できる優しいゲレンデ。まさにファミリーやカップル向けのスキー場で、この日も大学生と思しきグループがスキー教室で微笑ましいシーンを展開。他にもど素人カップルが平和的に雪と接しており、いわば将来の雪山ユーザーを優しく育てるインキュベート施設の側面あり。最初のゲレンデでどういう思いを味わうかで今後雪山が好きになるか嫌いになるかが分かれるので、こういうアットホームな場は貴重だと感じます。
山頂付近は閉鎖コース
大佐スキー場は下部の初級者エリアと上部の上級者エリアに分かれています。上級者コースのさらに上にはもう一機リフトがあるのですが稼働していません。聞けば2011年を最後に閉鎖されたのだとか。私は当時東京在住だったので稼働していた頃を全く知らないのですが、ともあれ自然散策には最適だろうと考え、軽い気持ちで登ってきました。
スキー場への到着は平日7時半頃。リフトが動いていないどころか人すらおらず。贅沢な貸切状態からのスタート。上級者コースのリフトは15分んほど遅れてスタートするらしく、1度初級者コースを滑った後にスノーシューを背をって出発します。
大佐山山頂へ
旧 里見尾根コース
現在の上級者コースをリフトで登ると、さらに上にもう一機リフトが見えます。かつての名称を里見尾根コースというのだそうです。今は閉鎖され、使われていないリフトと同じく閉鎖されたレストハウス、そして春めいてきた日差しが晩冬ならではの物寂しさを感じさせます。
と、カラスが鳴きながら飛来。30mくらいの距離にある枝にとまり、威嚇するように鳴きます。彼のテリトリーなのでしょう。スノーシューを装着し、ポールを調整してボードを背負うまでの数分の間、ずっとこちらを観察しています。
カラスが賢いというのは周知の事実ですが、近年の研究ではズバ抜けて賢いという事が分かってきています。60年代にチンパンジーが道具を使う事が判明して世界を驚かせて以後、道具を作って使う動物はチンパンジーとオランウータンのみとされてきました。が今ではそこにカラスとオウムが加わっています。カラスは道具を自作し、それを共有し、次の世代に伝えるという、自然界では極めて稀な能力を保持しています。
道具を自作する動物はごく少数だ。用途に応じて決まった形の道具を作るとなると、さらに珍しい。チンパンジーが道具を作ることを霊長類学者のジェーン グドールが発見するまで、道具作りはヒトだけの能力であり、それが高度な知能の発達を促したと考えられていた。
引用:ナショナルジオグラフィック日本版2018年 2月号 「鳥の知能」より<
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/18/011800004//p>
また、自分に攻撃してきた人の顔を何年経っても決して忘れず、しかも仲間と共有するという事が研究結果として報告されています。
そんな地元のカラスに敵意が無いことを伝え、ウォーキング開始。
なぜか圧雪してある
今回は手軽な自然散策かつ非圧雪コースの滑走という趣旨で登り始めたのですが、不思議なもので、かつてのコースが今も綺麗に圧雪されています。これは冴えない。仕方がないのでリフト下のモフモフを掻き分けながらショートカット。するとタヌキやテン、ウサギやキジといった典型的な里山動物の足跡が多数。こういう自然界のちょっとした営みの痕跡に出会えるが雪上ウォークの醍醐味だと言えます。
コース自体は初級〜せいぜい中級向きで、滑走という点においては大きな魅力は無さそうです。が、山頂付近だけに絵k式がよく、その名の通り遠方には界隈の集落、人里が素朴な景観がありました。
リフトからさらに上へ 大佐山山頂
かつてのリフトの最終地点から上に向かいます。が、、。ここでも綺麗に圧雪の跡が。歩きやすすぎて申し訳ないほどで、写真を撮りながらゆっくり登っても1時間程度のウォーキングでした。
山頂はほぼ平地のなだらかなエリアで、木の山頂標識がなぜか粉砕されていたのが痛々しかったです。積雪に上に木片が散らばっていたので比較的最近の破損のように見えました。
大佐山の標高は1069m で、1300mを超える恐羅漢と比べると空の青さは深みが足りず。それでも景観は清々しいもので自然崇拝とか山岳信仰のマインドがすっと入ってくる気がします。
見渡せば遠方には島根県側に風力発電の風車が見えます。島根県は早い段階から風力発電に取り組んでいるようで山の尾根にはしばしば風車が並んでいます。そんな中、この大佐山付近にも風力発電の話が持ち上がっており、地元住民が知らない間ににどんどん話が進んだ事で物議を醸しています。
風力発電は自然エネルギー由来なのでエコなのは間違いないですが、超低音による健康被害の問題や、野生動物、特に鳥類への影響が指摘されています。この辺りは数が少なくなったクマタカや、今はもういないかもしれないイヌワシの生息地で、自然保護の観点から風車に異論が出ています。
山頂から滑走
山頂からはそのまま1500m滑走が可能です。が、コース的には特に際立ったものはなく、景色がいいので写真を撮りながらゆっくり滑走します。滑りながらファインダーを構えて撮影ができるくらい広くて優しいコースでした。
なお、このコースが閉鎖したのは赤字コースだったかららしいのですが、自分がここの経営者だったらどうするかを考えてみます。
答えは一つで、ツリーランという結論に行き着きます。
小さなスキー場はバックカントリー路線で生き残れ!?
ファミリーメインの客層のスキー場が山頂に初級者コースを用意してもそのコースが繁盛するのは難しく、であればコアな層を狙ってオフピステのツリーランコースとサイドカントリー的な林間上級コースを3、4本整備する事で、界隈のパウキチさん、ツリーランナーたちが集まってくることは間違いないように思います。
要は木をたくさん植えて元の山林に近い状態に復元し、その中にコースを作る(というか放置する)。バブルの頃のスキー場の価値観は今の雪山ファンの間には存在せず、一方でバックカントリーやサイドカントリー需要は大きいです。アウトドアメーカーの売り場やカタログを見てもその傾向は明らかで、アウトドアそのものに対する探求と憧憬はブームの域に達しているように思います。なので当ゲレンデに限らず、下火のスキー場には是非ともやってほしいですね。バックカントリー。
関係ないですが、中国地方の秘境、奥大山スキー場が来年いっぱいで消えるかもしれないとの事。こちらもやってほしいですね。バックカントリーコース。
直近2期は赤字に転落。町は一般会計から2015年度は2750万円、2016年度は1792万円を、スキー場運営に関する特別会計に補填しました。
リフトの老朽化も進んでおり、1992年に設置した第1リフトは更新時期を迎えています。更新費用として2億円が必要とされています。
こうした状況を受け、町では直営での運営継続をあきらめ、指定管理者制度を導入したうえでリフトを更新する方針を固めました。2017年に2度にわたり指定管理者を募集。しかし、これまで応募する企業は現れていません。
潰れそうなスキー場はバックカントリーをどんどん推進し、「救助費用を払える人だけウェルカム」みたいなブランディングに徹すれば界隈から金持ちばかりが集まるので過疎地にお金が回る仕組みができそうです。この場合、救助費用に利益分をしっかり上乗せする事が重要です。
バックカントリーは危ない!けしからん!という世論は一定数あります。バックカントリー同様に安全神話にも根強いファンがいるのです。そしてそういう人のためにVRがあるのだと思います。(知りませんけど・・)
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。