近年カンガルーのお肉が食用として流通し始めているのをご存知でしょうか?冒頭の写真がカンガルーのお肉。部位はランプです。広島市内の「わなり」というお店で調理していただきました。
結論。これはほとんど牛肉です。脂肪がほとんどない(2%以下!)赤身のお肉で、鹿肉にも近いです。筋肉質のカンガルーがこんなに柔らかいとは!! これにはシェフも驚きでした。
なぜカンガルーのお肉が流通するのか
生息数は人間よりも多い
さて、カンガルーのお肉が食用に流通しているのはオーストラリアでカンガルーが増えすぎているから。人口を凌駕し、その数は5,000万頭とも。
草原が荒らされるなどの理由から害獣として駆除対象になっており、年間の駆除枠は780万頭。日本の猪・鹿が80万頭前後の駆除で推移していますから、実にその10倍もの駆除枠という計算です。
が、実際に駆除されたのは140万頭ほどで、やはり駆除そのものに賛否両論が渦巻いているのだそうです。
個体数の調整は必要?
カンガルー個体数の増減は干ばつの有無に影響される事が多いらしく「人間が手を加えなくても自然調整される」という専門家の声もある一方、「苦しんで餓死するのなら人間が仕留めて活用した方が人道的であり、経済面においても有益」という意見もあります。
カンガルーを狩り、その肉や皮を売って個体数を管理するという、オーストラリアが数十年来行ってきた方法が物議を醸している。当局は、数が増えすぎればデリケートな草原が荒らされるため、カンガルーの間引き駆除は必要であるとの立場から、年間の駆除割当数を設定して狩猟を許可している。しかし、一部の生態学者や動物愛護団体は、狩猟が非人道的であり、持続可能でもなければ必要でもないと主張する。
この状況を外野から見ている限りでは、日本のように農作物が大打撃を受けていたり生態系が崩壊しているわけでもないので、何もそこまで躍起になって駆除しなくてもいいように思えます。
5,000万頭という数字の統計根拠も危ういという指摘もあります。
カンガルーの捕食者は?
ちなみに現在の生態系におけるカンガルーの敵はディンゴですが、もともとアボリジニー(原住民)もカンガルーを捕食していたらしく、さらにアボリジニーとディンゴが上陸する前はフクロライオンとかフクロオオカミといった肉食性の有袋類が生息していました(※ディンゴはアボリジニが持ち込んだ説が有力)。
人類到達で大型の捕食者が絶滅する流れはアメリカ大陸と同じで、以後頂点捕食者の座は人類が占めています。となると生態系的にカンガルーを抑制するのは人類の役目という解釈もできます。
もちろん気候が厳しすぎてそもそも捕食という淘汰がそこまで必要ないという可能性もあります。
「カンガルー珍しー! 美味しー!」のあとに、ちょっと生態系の背景について思いをはせてみると、”食”への理解が広がるように感じました。
(関連記事:カンガルーのお肉という話)
なお、この件についてはナショジオニュースにて詳しく紹介されています。

株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。
この記事を読んだ人にオススメしたい商品
