誰もが耳にしたことがあるサルモネラ菌。食中毒の原因にもなり、見るからに恐ろしい姿をしています。こんなものが体に入ってくると考えると、想像しただけでアルコール除菌に手が伸びてしまいそうです。
今回は、そんな悪役、サルモネラ菌について簡単に触れます。
※当記事は関連文献および、自社での16S rRNA解析事例を元に執筆しています
目次
サルモネラ菌は普通に存在している
健康個体でも保有する
突然ながら、知っていますか??
サルモネラ菌は自然界に普通に存在しているということを。そしてたくさんの種類があるということを。
実はForemaで腸内細菌を解析したペットの大半からサルモネラ菌が検出されています。ペットフードが悪かったのでしょうか? それともジャーキー?? おそらくは違います。いるのが普通と考えるのが妥当です。
健康な個体だと、だいたい腸内の0.01〜1%未満。検出されるサルモネラ菌の種類もせいぜい3,4種類程度に収まることが多いです。
不具合のある個体で増加する
一方、慢性的にお腹の調子が悪い子だと腸内の2%を超えていることが多く、さらに4%を超えているような個体は不定期かつ長期的な下痢の症状を訴えていることが多いです。この時、検出されるサルモネラ菌の種類は8〜10種類以上に急増しています。
さらに!!
そういう場合に特徴的な現象として、他の病原性細菌も同時多発的に増えていることが大半です。よく見られるのは分類的にもサルモネラ菌に近い「大腸菌」ですが、さらに大きな分類であるエンテロバクター科、その上のエンテロバクター目(もく)全体が大幅に増加しているという点が挙げられます。
さらにまったく分類の異なる「ウェルシュ菌」や「結核菌」、「C.ディフィシル」なども呼応して増加しているような事例もしばしば目にします
つまり、サルモネラ菌がいる事が問題というより、サルモネラ菌が増えている状態、逆にいうと増殖を抑え切れていない状況が問題だと言えます。
宿主の弱体化が病原菌を活気づける
問題の本質はサルモネラ菌にあらず
サルモネラ菌をはじめ、なぜ同時多発的に病原菌が増えてしまうのでしょうか?汚染された食材を食べてしまったなどの強襲的な侵入を除けば、病原菌の急増には宿主が何らかの理由で弱体化しているという根本の不具合があり、よって他の病原性細菌たちが申し合わせたように同時に立ち上がってくるというのが実態です。
そういう場合、仮にサルモネラ菌がいなくても、他のグループが何らかの悪影響を及ぼし始めるでしょう。(荒れた学校を想像してください)
なぜ宿主が弱ってしまったのか?? ここを突き詰める事こそが最重要であり、本当の意味での腸活です。
宿主の弱体化について
弱体化の背景に多いのは加齢ですが、他にも疾患の後遺症だったり投薬の影響、食べ物や環境、そして先天的な理由としか思えないような事例もたくさんあります。それぞれの状況を把握し、その上で個別に対処していく事で、できるだけお薬に頼らないケアが可能になってくるはずです。(なので腸内細菌解析を強くプッシュしている次第です)
尚、サルモネラ菌をはじめとする「プロテオバクテリア門(特にエンテロバクター目)」グループの増加と、炎症を抑制する「バクテロイデス門(特にバクテロイデス属)」の減少は表裏一体のような側面があり、「バクテロイデス門」が枯渇した結果としてサルモネラ菌や大腸菌、その他シュードモナス属などが大幅に増加している事例が多いです。結果として炎症が進み、アレルギー症状の悪化につながります。
こういう場合は乳酸菌サプリより、プレバイオティクスの強化でバクテロイデス属を支援した方が改善につながりやすい傾向があります。
最後に余談ながら…
普段からプロバイオティクス/プレバイオティクスをふんだんに摂取しているForemaスタッフの腸内はとても優秀な組成をしているのですが、そこからもサルモネラ菌はごくごく微量に検出されています。直近の1例では腸内の0.03%ほど。細菌が1万人いたら、そのうちの3人くらい、という感じです。こんなものは全く敵ではありません。
が、もしもストレスや過労、お酒の飲み過ぎが重なると、その数値は10人..50人..とぐんぐん伸びてくるはずです。
それを考えると恐ろしいので、腸内の声に耳を傾けながら自らの生活を見直す動機にもつながり、結果的に体にもお財布にも、そしてきっと地球にも優しい選択へとつながっていくはずです。
世の中に不要なものはあらず。気づきをくれたサルモネラ菌にも感謝の念を捧げます。
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株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。