皮膚トラブルはかゆみや脱毛、発疹がある…など見た目でよく分かるので、飼い主さんが気づいてあげられることが多いです。
犬の皮膚病の原因はたくさんあり、その原因によって治療法も全く異なるため、適切な診断が必要となります。
また、遺伝的な要因や基礎疾患があることも多く、治療が長期的に続いたり、費用がかかることも多いです。
この記事では、犬の皮膚トラブルの原因を7つに分けて解説していきます。
検査法や対処法も解説しているので、愛犬がよく掻いているな…皮膚に赤みやかさぶたがあるな…など皮膚トラブルを抱えている場合には読んでみてください。
目次
犬の皮膚トラブル7つの原因
犬の皮膚トラブルの原因は、
- 感染症
- 自己免疫疾患
- ホルモンの異常
- アレルギー
- 精神的要因
- 腫瘍
- 原因不明
といった大きく7つに分けられます。
以下で一つずつ分けて説明していきますね。
①感染症
犬の皮膚トラブルの中で最も多い原因が感染症です。
ひとえに感染症といっても、細菌や真菌(マラセチアや皮膚糸状菌など)、寄生虫(疥癬虫、ニキビダニ、ノミやダニなど)…とたくさんの原因があります。
なかでも「膿皮症(のうひしょう)」という細菌感染による皮膚病は多く、赤みや痒み、皮疹をともなうことが多いです。
抗生剤の飲み薬や塗り薬、抗菌シャンプーなどで治療をしていきます。
また、独特のにおいと見た目を呈すマラセチアは、犬の外耳炎の原因にもなります。
感染症による皮膚トラブルの場合には、基礎疾患があることも多いので、なぜ感染が起きたのか?を考えていくことも大切です。
②自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、様々な自己免疫細胞が自分の体を攻撃することで発症する疾患です。
原因自体は分かっておらず、症状は体全体に及びます。
天疱瘡、多発性紅斑などがあり、免疫を抑えていく治療を行います。
③ホルモンの異常
ホルモンの異常(内分泌疾患)で皮膚に症状が出る場合もあります。
犬で多いホルモンの異常は、
- クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
- 甲状腺機能低下症
- 性ホルモンの異常
といった病気によることが多いです。
痒みを伴わないことが特徴で、皮膚の病変以外にも、
- 元気や食欲がない
- 水をたくさん飲む
- 感染症が起きやすい
- 太っている
などといった全身症状がみられる場合もあります。
血液検査で診断がつき、生涯にわたって薬を投与する必要があります。
④アレルギー
アレルギーは、本来なら体にとって無害である物質(アレルゲン、抗原)が自身の抗体に結合し、様々な炎症反応を引き起こす疾患のことです。
花粉やほこり、ノミダニや食物などに対してアレルギー反応が生じ、強い痒みが生じることが特徴です。
柴犬はアトピー性皮膚炎の好発品種であり、各種アレルギー反応により痒みや脱毛など皮膚トラブルが生じやすい犬種です。
⑤精神的要因(ストレス)
犬がストレスを感じると、体を異常に舐めたり噛んだりして、一部の皮膚が炎症を起こしたり脱毛することがあります。
足先が唾液によって赤茶色く変色していたり、太ももなど舐めやすい部位に限局して脱毛がみられたりします。
長時間の留守番や、飼い主さんとの関係の悪化、何かしらに不安や恐怖を抱えているときに生じることが多いです。
⑥腫瘍
皮膚型のリンパ腫などでは、皮膚病変をともなうこともあります。
赤みやフケなど、一見他の皮膚病のように見えるため、診断が遅れてしまうこともしばしばあります。
病理検査にて診断を行い、ステロイドホルモンや抗がん剤にて治療をしていきますが、効果的な治療法は確立されていません。
⑦原因不明
ポメラニアンの脱毛X(だつもうえっくす;アロペシアXともいう)やパターン脱毛、両側性膁部脱毛といった原因不明に脱毛をしてしまうこともあります。
脱毛Xは痒みを伴わない左右対称性の脱毛をすることが特徴で、原因が不明のためこれといった治療がありません。
遺伝も関係し、ポメラニアンの他にも、アラスカンマラミュートやハスキーなど北欧犬種が好発品種です。
オス犬での発生が多く、去勢手術で改善する場合もあります。
ただ、あくまで美容上の問題のみで、特に積極的な治療はせずに経過を観察していく場合も多いです。
犬の皮膚トラブルの検査内容
犬の皮膚トラブルの検査内容は、多岐に渡ります。
視診で分かるものもありますが、
- スタンプ検査(病変部にスライドガラスを押し当てて細胞や微生物などを見る)
- 皮膚掻把検査(皮膚を削って疥癬虫やニキビダニなどを観察)
- 抜毛検査(毛を抜いて、皮膚糸状菌などの微生物や毛根の状態などを観察)
- ウッド灯検査(特殊なライトで皮膚糸状菌を検出)
- 真菌培養検査(被毛を特殊な培地で育て、皮膚糸状菌を特定)
- 細菌培養検査(どんな細菌がいるのかを培養して検査する)
- ホルモン検査(甲状腺ホルモンやコルチゾール、性ホルモンなど)
などをあわせて行い、診断をすることも多いです。
上記で診断がつかなければ、「皮膚生検」という皮膚の一部を切り取って病理検査を行うこともあります(局所麻酔や全身麻酔をして行います)。
また、アレルギーが疑われる場合は、血液検査や皮内反応などでアレルゲンを特定できる場合もあります。
基礎疾患があると難治性となることがある
皮膚病に何回もなったり、治りにくい場合には、基礎疾患があることもあります。
例えば、糖尿病やクッシング症候群があると感染症になりやすいため、単純に皮膚病のみを治療しても再発がしやすいです。
また、もともと脂っぽい犬種であるシーズーやフレンチブルドック、しわの多いパグなどでは、皮膚病が慢性化する傾向にあります。
再発を繰り返す場合や、治りが悪い場合には、今の治療が本当に正しいのか?を確認する必要があります。
どの病気であってもスキンケアは重要!
どんな皮膚病であっても、ブラッシングやシャンプー、保湿、服を着せたり…など皮膚を守ることは非常に重要です。
薬用シャンプーを使ったシャンプー療法のみで皮膚病が劇的によくなるケースも多々あります。
(薬用シャンプーには、抗菌作用のあるもの、角質をとるもの、保湿作用が強いもの…などたくさんの種類があるので、主治医の先生とご相談の上使用するようにしましょう。)
また、スキンシップも大切で、皮膚の新陳代謝をよくしたり、トラブルにいち早く気づけるだけでなく、飼い主さんとのコミュニケーションにもなります。
【まとめ】犬の皮膚トラブルについて
犬の皮膚トラブルには様々な原因があります。
ぱっと見で原因がわかるものから、検査を重ねないと分からないものまで様々あります。
基礎疾患があると治りが悪かったり、再発しやすかったりする場合があります。
皮膚トラブルの場合、飲み薬や外用薬に加えて、シャンプー療法がとても大切です。
日常的によくスキンシップを取り、愛犬のストレス発散と病気の早期発見に努めるようにしましょう!
獣医学経験者。ペットに関することを、なるべく分かりやすくお伝えしていきたいと思います。