鹿ロース

ジビエというもの

鹿のモモ肉ブロック
ニホンジカのモモ肉ブロック

近年メディアなどで耳にする機会の増えたキーワード、ジビエ。どこか不思議な響きを持つこの言葉はフランス語。gibierと書きます。ジビエは狩猟によって得られたお肉の総称であり、鹿や猪を始め、野ウサギや雉、鴨、山鳥などの他、カラスやハト、ヌートリアといった、かの地の生息する「食用可能な野生動物」全般の食肉を指します。秋から冬にかけて山に入り、最も肥えて脂の乗った時期のものがハンティングの対象となります。

いわゆるジビエとは何か?

ジビエは、フランス料理においては最高級の食材とされており、このルーツは貴族階級の狩猟にルーツがあるようです。西洋文化では王侯貴族が広大な猟園を持ち、そこで狩りをする事が貴族階級の嗜みであり、特権であったようです。日本でも武家は鷹狩りと言って山野に出かけ、趣味と兼ねた軍事鍛錬として長く行われてきた歴史があります。

フランスに限らず、狩猟民族である欧州の文化では狩猟は広く行われており、ベルギーやドイツ、イタリアなどでもジビエと同様の価値観があります。英国ロンドンの中心地にある王立公園の一つ、リージェンツパークは今でもリスなどが住む自然豊かな景観が残りますが、ここも王家の狩猟地として保護されてきた歴史が背景にあります。

そんな中でフランスにおけるジビエが狩猟肉の代表として認知されているのは、フランスの食文化の発展と世界からの認知・評価に合わせてのことだと思われます。

そんな欧州文化であるジビエが、近年日本国内で頻繁にメディアに登場しています。

日本におけるジビエ

安芸高田
中国地方の山間部

日本国内でブームのようにジビエという言葉が謳われだしたのは、フレンチブームとか狩猟ブームによるものではありません。鹿や猪による農作物の害獣被害、いわゆる「獣害」があまりにも深刻になり、農水省などが対策を重ねてきた結果、ジビエにたどり着いたと言えます。

獣害の原因は複合的で、基本的には鹿や猪の増加と山間部の高齢化及び都市部への人口流出による過疎化といった理由が挙げられますが、その背景には地球温暖化や捕食者の絶滅、行きすぎた戦後の植林政策、さらには経済構造や価値観の変化、国力の衰退などが絡み合い、農水省だけが対応するには規模が大きすぎるのが実情かもしれません。

そんな状況の中でも農水省は害獣駆除に力を入れ、自治体を通じて猟師さんらに報奨金を支払うことで害獣による被害を食い止めようとしてきました。この流れで登場したのが国産のジビエです。駆除した鹿や猪を食材として有効活用し、できればご当地名物として売り出すことに取り組みました。が、鹿や猪=臭い、という伝説のようなものが定着していたため、つまりはゲテモノというイメージがありました。そういう負の先入観払拭にために導入されたのがジビエというキーワードだったと言えます。これは「知らないものには手を出さない」一方で、「海外で有名なものには寛容」という日本人の特性によく合った、とても良いイメージ戦略だったと言えます。

官製ジビエは普及するか?

中国山地上空を飛ぶ水鳥
中国山地上空を飛ぶ水鳥

国産ジビエが登場して以降、多くの関係者が鹿や猪の売りこみに力を入れていました。ただここに輸入文化によるチグハグさがあらわれてしまいます。ある地域ではフレンチシェフが腕をふるった本場のフレンチレシピを披露する一方で、別の地域では昔ながらのボタン鍋を以ってジビエと称する状況で、全く外部の素人が見ると、ジビエとはなんなのか?という時期が長く続いたように思います。

それでも地域のお祭りや道の駅などでは定期的に猪鍋や猪の串焼きなどが振る舞われ、そういった地道な活動が何年も続いた結果、猪を食べたことがあるという人の人口は大幅に増えたのではないかと推測されます。

結果として、国産ジビエとはフレンチのような崇高かつ高級なものではなく、「いわゆる鹿とか猪」といったゆるーい定義に落ち着いたのではないでしょうか。

ジビエに地産地消は必要か?

猪肩肉スライス
猪の肩肉

このような流れでがありながら、全国で駆除(最近では捕獲という)された鹿や猪はまだ多くが未活用のまま槌に埋められて処分されているといいます。一番の要因は解体処理施設の問題で、他には肉質だったりしめ方だったり病気だったり、という問題があるようです。

が、それらの諸問題が改善されたとしても残るのが販路という課題です。当Foremaでも国産ジビエ食材の販路拡大の役割を大いに担っていますが、その過程で強く感じるのが、地方それぞれの地元意識です。

多くの生産者が地産地消という言葉を重視し、地元で採れた猪や鹿を地元で振る舞う事を大切にしています。それは当然のおもてなしであり、地元に特権、喜びであってしかるべきです。ただ、国産ジビエそのものの販路を拡大し、市民権を得させるには、地元にいない都市圏の人々への流通が不可避であり、そこに「地域を盛り上げる」という気持ちが入りすぎるとむしろ国産ジビエ普及には足枷になるかもしれません。

都市部のジビエ好きやビギナーにとっては、それがどこで採れた名産であるかはどうでも良く、美味くて安全で、比較的安定して食べられることの方が重要です。エンドユーザーに食を提供する飲食店にとっても同様で、できれば安定した仕入れを行いたい。国産ジビエの産地の状況を俯瞰すると、とある地域では鹿モモが少ない、ヒレなどは扱ってもいないという一方で、別の地方では鹿モモが一番とれてあまり気味だといいます。ヒレも地元ではあまり食べないのである程度在庫はあるのだと。

こういう事例は多数あり、在庫の不均衡が常態化しています。よって、国産ジビエ全体ではどこかに在庫があるにもかかわらず、個別の産地で見ると超不安定、といった状況が未だ続いています。

これらの現状を改善する際に、地元で採れた鹿、猪、という意識はやや抑え、地元の名産というこだわりは捨て、とにかく外に出荷する事を最優先すべきです。地元産のラベルネーミングにお金を使うのではなく、流通経路確保にお金を使い、それらが確立できた上でブランド化を行方がスムーズでは無いでしょうか。

実のところ、猪も鹿も地域差は大きいです。山が豊かな地域ほど肉質も良質ですし、豊かな山自体も地域によって豊かさの種類(木々の種類)が異なりますし、地形の緩急、標高によっても個体の特性は大いに現れます。それらの違いを体系化し、明確にPRできるようになった段階ではじめて地元意識を出しても決して遅くはありません。

その時は、国内向けはもちろん、海外に向けた国産ジビエというブランディングも視野に入っているかもしれません。

ブームの先にあるもの

ジビエ盛り合わせ
ジビエ盛り合わせ

昨今のジビエは、ニーズがあるというよりも、作られたブームの感が少なくありません。マスメディアがこぞって紹介するのは旬なネタだから紹介している側面が強く、彼ら自身が実際にジビエ好き、というケースは極めて少なく、食べたことすら無いケースも多々あります。(弊社にもマスコミ関係者からの問い合わせが多くある中で強く感じます)

もちろんそれ自体は問題ではなく、ただ、一過性のブームはやがては去るということです。ブームが去った後にも残る確かなニーズ、市場を作り確保しておく事こそがブーム中にやっておくべきミッションなのは間違いありません。そのためには地産地消にこだわるのではなく、とにかく地域外に出して都市圏での消費、販路を太くしていく事。幸いにも猪肉にコエンザイムQ10やイミダペプチド、同じく鹿モモ肉にもイミダペプチドが豊富に含まれている事が研究でわかってきており、ジビエ消費の動機付けは以前よりも強くなってきています。やり方次第では5年後にヘルシーフードのスタンダードになっている可能性もあるかもしれません。

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