鹿害と書いて『ろくがい』と読みます。数年前から新聞やニュースで鹿害について目にする機会が増えました。 そこで、ここでは鹿外の実態と展望についてご紹介します。
鹿害はどんな害?
鹿は木の皮や植物の若い芽を好んで食べます。一般的な鹿害は、人里まで進出してきた鹿によって田畑を荒らされるというもの。夜の間に農作物を食い荒らし、帰り際に民家の庭先なども荒らしていくケースもあるようです。そして農作物を荒らされた上に庭先まで蹴散らされた農家の人は激怒します。
また、繁殖期の雄鹿は立派な角を生やし、季節がら、かなり短気になっています。地域にもよりますが、立派な雄は70kgを超えることもあり、これがぶつかってくれば脅威です。車との接触事故も絶えず、結果として猟友会の出番になります。
一部の地域でさらに深刻な問題となっているのが山林被害。増えすぎた鹿が木々の若芽や森の下草を片っ端から食べ尽くし、表土が流出します。芽を食べられ続けた木々は弱り、一方でむき出しの表土は雨に洗い流されます。やがて木々は枯れ、山ははげ山に。そして次に豪雨が降った時などに一気に崩れるという構図です。農作物の被害ももちろん深刻ですが、山林そのもののダメージも計り知れないものがあります。
原因は?
鹿は昔からいたはずなのに、なぜ最近になって急に鹿害が指摘されるようになったのでしょうか?実のところ鹿害自体は別に最近始まったわけでなく、昔から駆除したり保護したりの繰り返しで人と鹿が共存してきました。最近なって被害の大きさが際立ってきたというのが実情ではないでしょうか?
まず挙げられるのが里山の疲弊です。高齢化と人口減によって人間と野生動物の勢力図が変化し始めています。そして地球温暖化がこれに拍車をかけます。冬を越せずに死ぬ個体が減ることで、個体数そのものが増加へ向かいます。
増加した鹿を抑制するのは捕食者ですが、その役割を果たしてきたニホンオオカミは20世紀初頭に絶滅してしまいました。オオカミがいなくなったおかげで鹿の天下が訪れ、いつのまにか駆除が追いつかないほどに増えてしまったということです。
それでも山が豊かであればわざわざ危険をおかしてまで人里を荒らしに出てくる必要はありません(※)。人工林で占められた日本の山林。ここにも鹿害の根本的な原因の一つがあります。
※豊かで増えすぎたから出てくるという説もあり
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。