中国山地でのイノシシ
中国山地では古くから猪と人は共に暮らしていた歴史があり、古くは縄文時代から猪を捕獲して食べていたことも遺跡から見つかっているそうです。中国地方には「山くじら」という言葉があり、猪肉の隠語と言われていました。江戸時代に獣肉食が禁忌とされていた時代に、イノシシ肉を食べることを隠すために「山くじら」と呼んだことが由来だそうです。
古くから私たちの身近にいた生き物なのですね。
猟師をしている私は猪肉が大好きです。箱罠、猟銃でも猪を獲ることが多いので、今回は猪について語りたい!回をさせていただきます。猪の山での生活、生態、好きな部位のことをお話しできたらと思っています。
季節によって違うイノシシ
発情期のオスのお肉は松ヤニみたいな匂いがする。私が猟を初めて一番驚いたことです。冬、猟期真っ只中、オスの猪たちはメスの猪を奪い合うために首から肩、肘くらいまで硬いプラスチェック程の脂肪の塊を蓄えます。これを猟師たちは「鎧」と呼んでいます。名前の通り固くて食べられないので皮を剥ぐときに一緒に取り除いてしまいます。しかし冬場のオスのお肉は松ヤニのような匂いがすることが多い印象です。
一方でメスの猪は「産まずのメス」という言葉があって、子どもを産んでいない猪が一番美味しいのだと言われています。子育て中の猪は乳腺が発達していて、他の猪と比べて痩せていたのを見たこともありました。かといって美味しくないことは決してなくて、食べ方を変えるとどの猪もみんな美味しいと感じています。
牛や豚とは違い、季節によってこんなにも身体的に違いのあるお肉なのです。
肉と内臓、捌く時の大まかな流れ
猪が取れるとまず表皮を洗います。これはお肉を捌き始める時に土などの汚れが食用部分のお肉に付着することを防ぐためです。
次に内臓を取り出します。内臓は大まかに上から下の順番で捌いていきます。私は内臓の中でも胃袋が好きなので胃の内容物を出して綺麗な水で洗い、中の皮を剥がして食べます。このとき猪の食べたものを観察できることも嬉しく思っています。猪は雑食なので季節によって食べ物は違いますが、通年でクマザサなどの植物を食べているのをよく見かけます。犬猫も植物を食べますが、猪も一緒でお腹の調子を整えることもあるのでしょうか?
肉は骨から外したあとは、部位ごとに切り分けます。骨の周りのお肉も絶品なので、オーブンで焼いたり圧力鍋で煮てスープにして食べることが多いです。

私たち人も美味しいと思うお肉や骨、嗅覚も味覚も鋭い犬猫さんにはたまらないご馳走なのではないでしょうか?
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部位ごとの特徴と食べ方
猪肉の部位の名称は豚肉とほぼ同じ名称で呼ばれています。猟師の私がそれぞれの部位を食べての特徴とお気に入りの食べ方も紹介します。
ロース
猪肉の中でも特に脂身が多く、冬場には厚い脂身がつくのが特徴です。薄く切ってしゃぶしゃぶ、中心温度65度を計りながら塩を揉み込んで一晩寝かせたブロックごとじっくりローストするのがお気に入りです。
赤身が細かくきめが細かいのが特徴です。秋冬にかけて脂がのり、オスの鎧がつくのがこの部位です。
首の部分はさらに細かく「ネック」と分けられることがあり、唾液腺やリンパ腺の部分は焼くと豚トロのようで美味しいです。
モモ
外モモと内モモに分けられます。外モモは夏場は赤身のうまみ、冬場は歯ごたえのある赤身と脂身が楽しめます。内モモは適度な脂がのっていてジューシーさがあり、筋が少ないのも魅力です。
ヒレ
背ロースの下にある細い希少部位とされるお肉Foremaのお肉でもなかなか見かけません。筋膜の中に包まれていて筋がなく柔らかくて食べやすいです。ベタにぶつ切りにしてヒレカツで食べることが多いです。
バラ

ロースの下に位置し、白い脂身が特徴です。アバラ骨に肉を残して、骨付き肉として焼いて食べるのも美味しいですよ⭐︎
猟の一コマ

猪の大きさはウリボウのような小さなイノシシから写真のように大きな100キロを超えるイノシシまで様々です。
このイノシシはお尻に傷がたくさんあって、年老いたイノシシがだんだんと世代交代して、次の若いイノシシが優位に立ち始めたことがわかります。イノシシを猟を通して獲り、出会うことはイノシシの人生、猪生と出会うことでもあるように思います。
野生のイノシシには個体によって色んな特徴があるのも魅力ですね。
Foremaでは日本津々浦々の産地のイノシシ肉が販売されています。産地で選んで購入するのも選ぶ一つの楽しみになるのではないでしょうか。その土地の自然環境にも目を向けながら愛犬の食事として選んでいただけると幸いです。


広島県の過疎地、安芸太田町の廃校本社に勤務するスタッフたちが交代で記事を執筆しています。
