人口は減り続け、鹿や猪は増え続けているというのが定説です。一方で、近年ではいくつかの産地で鹿や猪の捕獲数が減少しています。
捕獲数が減っている理由には「猟師さんの高齢化」という事情もありますが、それ以外に「特に猪が減っている」可能性があります。背景にあるのは豚熱(旧称:豚コレラ)です。
豚熱とは?
豚熱は、かつては豚コレラと呼ばれていた伝染病です。人間にも関係する「コレラ」とは関係なく、豚や猪以外には無害です。日本は2007年に豚熱の清浄国となりましたが、2019年に再び感染が広がり、今なお鎮静に至っていません。
豚熱は養豚場だけでなく、野生の猪にも広がり、多くの野生個体の病死につながっている可能性があります。農家にとっては朗報かもしれませんが、豚熱ウイルスの起源は養豚場での突然変異(欧州)という説もあり、自然界に対する人災という側面は大きいように感じます。
感染個体が発見された地域からは豚のみならず猪の出荷も規制されるため、捕獲された個体は埋蔵もしくは焼却処分となります。無益です。
鹿の影響
一方で、鹿が増えすぎたせいで猪が減ったという可能性もあります。猪は、鹿が来るといやがるようで、やがてその地域から姿を消していきます。猪鹿の双方が豊富に見られる地域は、山がとても豊かな一部の地域に限られているようです。
尚、この場合は猪が消えてなくなるのではなく、別の地域に移動するだけなので、そちらで逆に農作物被害が増える事が予想されます。
鹿が賢くなった
猪と異なり、鹿の生息数は増え続けているようですが、地域によっては捕獲が減っています。一説には、鹿が賢くなっているからだとも言われています。
罠にかかりやすい個体はだいたい狩り尽くされ、後には警戒心が強くて頭の良い個体ばかりが残ってしまった、というわけです。当然その子孫は同じような行動様式となります。
離島に持ち込まれたのヤギの駆除現場でも似たような事例が世界中で起きているようで、最終的に頭の良い一群だけが生き残り、それらが再び繁殖する事で駆除は大抵失敗に至るようです。
私たちは何も知らない
鹿や猪の個体数は、環境省や農林水産省がデータを公表していますが、統計による推定値のため、最低予測と最高予測のあいだに3倍ほどの開きがあります。データの開きの幅が大きすぎ、このまま放置するとどうなるのかもよく分かりません。つまり私たちは何も知らないのです。
一方で、日本で鹿の生息密度が最も高かった屋久島で、急激に鹿(ヤクシカ)の生息数が減っています。個体密度が増えすぎたための自然淘汰と考えられていますが、なぜ今なのか? これもよく分かっていません。
繰り返しますが、私たちは何も知っていません。その中でできることは、
「山林再生への取り組み」「若者の山間部移住の促進」そして「命を無駄にしない事」であると考えています。
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株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。