年の瀬も差し迫る冬至の前日、野営を行いました。今回の主役は猪の骨付きバラとロース。12月にもかかわらず山間部では既に1mを越す積雪の中、降雪のほとんどない海寄りの低地山林にて密やかに催された次第です。
目次
超穴場!?三倉岳キャンプ場
今回は「奥の方の山林のどこか」、ではなく県立の整備された場、「三倉岳キャンプ場」を使用しました。正式には三倉岳県立自然公園というのだそうです。
この場所は初。無料にも関わらずしっかり整備された森林系で、しかしながらハイシーズンでも3割程度しか埋まらないのだとか。にもかかわらず年中開場しているという隠された秘宝スポット。というのも三倉岳というのは登山者が多いらしく、その関連もあって年中人が滞在しているという話でした。
つまりキャンプ場はおまけのようで、極寒の当日は当然ながら貸切状態。日没と同時にミッドナイトで気温もぐんぐん下がり始めた次第です。
滅多に流通しないレアもの、猪バラ肉(スペアリブ)の登場
猟師さんが出したがらないのがスペアリブ
今回の主役である猪バラ肉の登場です。バラというのはお腹周りのお肉で、語源はアバラ。バラ肉はでっぷり脂が乗っているわけですが、今回は骨周りのお肉、いわゆるスペアリブなので比較的脂身は少なく、猪のマッチョなボディを堪能できそうです。
猪のスペアリブは基本的にほとんど流通しません。理由としては猟師さんの間にスペアリブのカルチャーが無い、という背景もありますが、骨周りのお肉を活かすと、本体であるバラ肉(骨無しの、純粋にお肉だけの部分)の方の歩留まりが悪くなるからという理由が大きいようです。
上等なバラ肉を出荷しようとすると骨ギリギリまで肉をカットするので、骨周りにはほとんどお肉が残らない→骨周りは商品価値がない、というのが背景です。今回は、長崎の猟師さんを説得してスペアリブ重視の解体をお願いし、商品化の実現に至った次第です。
冬季の林間木材はなかなか着火しない
現地は降雪がないエリアだけに燃料はふんだんにあります。が、林間だけに湿っており着火に難儀。こういうときの為に紙の資料を多く持参しています。
紙は灰ばかりが舞い上がるので嫌う人も多いのですが、弊社ではあえて紙の活用を行なっています。というのも地方都市の商習慣ではいまだ無駄に紙の資料や配布物が多く、この「大量に配っては資源ごみで回収する」という意味不明なサイクルをなんとか別の道で活用したいと思っているから。
早い話が「無駄紙は早く廃止してほしい」ということ。エコじゃない。特に年末の金融機関によるカレンダーとか手帳の配布圧は絶望すら感じます。(配らされている担当者がかわいそう)
というわけで、着火しづらい湿った燃料を紙の威力で適度に乾燥させ、体が温まってきたところでスペアリブの登場となります。
直火で輝く猪のスペアリブ
猪というと世間ではジビエジビエと連呼するわけですが、アウトドアにおいてはそんなカテゴライズはどうでもよくて、BBQ肉として包括管理されます。
まずはお肉の分厚い外側を下に。あたりは既に氷点下スレスレで、半解凍が逆に本冷凍へと変わりかけていたのですが、すぐにジュワジュワと心地よい音が・・。
やがて雪解けのようにポタポタと脂が垂れ始め、炎が上がり始めます。バラの脂は大変炎上しやすいため、本来であれば炭をもっと鎮火させて分散させるのが良いのですが、今回は写真撮影の側面もあるため、あえて炎を放し飼いに。ビシバシ炎上し始めた段階でひっくり返します。
骨が見えないバラ肉は、絵的にはノーマルなので言及するに及ばず。このまま弱火でしばらく熱を通します。野性鳥獣はとくに生焼けに注意。しっかり火を通すことが基本事項です。
骨ごとにカット。骨周りに火を通す
ある程度火が通ってきたらキャンプナイフやキッチンバサミなどで骨ごとにカット。ぱっと見では美味しそうに見えても骨周りはまだまだ赤いことが多いので、この状態でさらに弱火で炙ります。
味付けは岩塩のみ。ゴリゴリと振りかけて終わり。普通にバーベキューソースでもいいのですが、野生味を堪能するのであれば前半は岩塩か塩胡椒のみで味わうのがオススメ。
スペアリブの良いところはその形状。野外で骨を持ってかぶりつく経験は、特に子供達にとっては記憶に残る人生体験です。かく言う私自身も幼少期に河川敷で食べた巨大な豚のスペアリブの記憶が未だ鮮烈に残っています。実際には普通の小ぶりなスペアリブだったらしいのですが、子供にはとても大きな肉の塊に見えるわけです。ささやかながらもアウトドアロマンの原点。
民間のアウトドアイベント「野営の人Vol.8」の一コマ。12月の寒中キャンプでひたすら猪のスペアリブを焼くという、ただただ本能直撃を目指すための動画。深夜に見てはならない類の映像。
猪の骨つきロースが登場
ロースをのこぎりでカット
今回アウトドア環境でどうしても試したかったのがこれ。猪の骨つきロース。ラムで言うところのチョップ。牛肉であればトマホークステーキ です。猪の場合、牛肉のように骨を長く確保できないので、「トマホーク風」と言うのが妥当でしょう。
ロースというのは背中の方のお肉で、背骨周りから肋の根元の方。先出のバラ肉と対になっている部分。肋骨の根元はロースで先っぽはバラ。で、骨つきの場合、バラとの違いは背骨の有無。背骨でがっちり繋がっているので、切り分ける場合はのこぎりが必要となります。
飲食店であれば調理用のノコギリを使いますが、ここアウトドア現場では、あえて木材用のノコギリを使用。兵庫県のSAMURAI鋸(サムライノコギリ)が真価を発揮することとなりました。
SAMURAI鋸が光る
SAMURAI鋸というのは見ての通り、刀のような形状のアウトドアマン向け(?)のマッチョアイテム。木材相手には大活躍します。
・・・が!
かちんこちんの猪の背骨には葉が荒すぎてなかなかかみ合わず大苦戦。既にあたりは氷点下でこのプロセスは大変な苦行を伴う事に。背骨祭壇には、金属用途ノコギリのような、もっと歯の目が細かいものが適しているようでした。
とは言え、一度刃が通り始めるとその威力は鮫の如くであっという間に祭壇。押さえる手が冷たくて冷たくて・・。
ともあれ途中で妥協し、そのまま炎へ。以後柔らかくなったところで改めてカットして無事指定席に着席となりました。
以後、作業が雑になり写真もろくなものが残せなかったわけですが、さすがロースだけあり、バラとはまた違った柔らかくもサクッと食い込む肉質の良さが尋常ではありません。
さすがに美味。高級豚でもここまではあるまい。無添加かつ圧倒的な運動量を誇る山岳猪だけが持つ驚異の肉質。サプリ顔負けの栄養分とアンチエイジング、そして精力増強など、自然界からの恩恵は計り知れず。
そんなわけで気がつけ日付も変わり、ストーブのあるタープ内に避難し、1日を終えるのでした。
次回は山間部の雪中野営を予定しています。広島界隈でご興味のある方はお気軽にご連絡ください。
野営の人Vol.7 冬の山で猪のお肉を焼いている(切っている?)だけの動画です。環境過酷くなれども味は最良なり。
骨つき猪のご購入について
今回使用した骨つきのお肉は以下のページで扱っています。個体差が大きい上、お届けまで1週間以上かかる場合もあるので、2週間くらい余裕を持って早めにご注文いただくのが安全です。
猪は秋冬だけだと思われがちですが、春以降も出荷あります。ただし脂は秋冬にくらべるとすごく少ないです。とはいえ、夏に脂こってりは厳しいので、その季節にあった肉質だとも言えます。実際、春夏物も秋冬とは違った美味しさがあります。
三倉岳キャンプ場
株式会社Forema(フォレマ) 代表。生態系保全活動の傍ら、自社ラボで犬と猫の腸内細菌/口腔細菌の解析を中心に、自然環境中の微生物叢解析なども含め広く研究を行なっています。土壌細菌育成の一環として有機栽培にも尽力。基本理念は自然崇拝。お肉は週2回くらいまで。