「今日は鹿肉を煮込んで食べた。」
などと話をすると、驚かれるパターンが多いことからも日々感じていることではありますが、ジビエ肉を料理して食べるということは今の日本ではあまりスタンダードではありません。その理由について改めて考えてみました。
まず浮かんだのは、流通が少ないということ。ジビエ肉は普通のスーパーではまず見かけることがないですよね。スーパーの品揃えは、食の流行がタイムリーに反映されており、突然販売スペースが拡大される食材は大体テレビなどメディアで取り上げられている場合がほとんどです。
ご存じの方も多いと思いますが、ジビエ肉は全国的に注目されてきています。
しかしながら、私達が食材を入手する身近な存在であるスーパーに並んでいないのは、スーパーの求める安定供給が出来にくい食材だということが大きな理由の一つだと思います。
また野生の動物を食すということ自体に抵抗を感じている人が多いということや、肉の獣臭がきついというイメージが強いということもあるかもしれません。
日頃から撮影とレシピ作り(&試食)の為に、鹿や猪を調理している私の個人的な意見は、意外と料理しやすい食材。ということです。そして何といっても健康的な食材だということ。
いつも、この季節になると冷えによる頭痛や体調不良に悩まされていた私ですが、ジビエ肉を料理し食べる機会の多かった今年は風邪ひとつひきませんでした。
他にも一応気を付けてはいましたが、ジビエ肉のおかげでもあると身をもって感じているわけです。
さて、そんな天然の健康食材でもあるジビエ肉を料理することに抵抗を感じている方に、ジビエ肉を美味しく料理できるちょっとしたコツを紹介したいと思います。
まず、臭いについて。天然の餌を食べて生きている猪や鹿は、その生息地の野山に多く自生している植物を餌にしています。食べるものが生体を作るので当然、その食べたものが血となり肉となっている訳なので、臭いは産地によって若干変わってくるようです。
臭いと感じる獣臭の強さを左右するのは主に、①仕留めてから解体するまでの適切な処理 ②肉の熟成期間が短い ③個体の産地、性別や年齢の差 の3つだと考えられています。
foremaでは信頼のおける、プライドを持って仕事をしている解体所のお肉を取り扱っていますが、それでも③の個体差は、これもジビエ肉の特徴でもあるので、それも含めて楽しんじゃおう!という部分でもあります。
ただ時期によっては、やはり臭いのきつい時もあります。臭いが強い方が好みの方々はもちろんそのまま調理しても野性の風味を感じられる食材としてとても喜ばれるのですが、どうしても臭いが気になる!!という方には、こんな感じの方法をオススメします。
①肉を今から冷蔵庫に移して、一晩ゆっくり解凍する。または氷水を使ってゆっくり解凍する。
②肉を切って、鍋に水を入れ火をかけ沸いて15分くらいふきこぼして灰汁とともに血を抜き、ざるにあげ流水でキレイに洗い、水を切る。※または、流水に1時間以上さらす。
③日本酒、ワイン、ブランデー、ニンニク、その他香草類で調理する。※ただし香草類を多用すると、使い方によっては破滅的にまずくなるので注意が必要。何でもそうですが、コラボレーションにはハーモニーが必須です。要はバランスの良い調和です。
ある程度の臭みは風味や旨みとして熟成チーズや青カビ系チーズのように楽しみたいところ。香草を使った料理では、特に塩と香草に漬け込みじっくり焼いたローストハムや燻製などもジビエ肉の風味を上手く生かした料理だと思います。是非試していただきたいレシピです。
それから、ジビエ肉の印象でよく聞くのは、『硬い』とか、、、それはもう、百聞は一食にしかず!部位の特徴ともいえる硬さの違い。例えばスネ肉は硬いという定評がありますが、この歯ごたえ・食感がおいしい!と大変好評を頂いている部位でもあります。
その食材をどう楽しむか。ということにもつながりますが、その部位に合った調理法を選ぶのも楽しみ方のひとつです。総じてジビエはシンプルな調理方で食材の良さを引き出すことが基本形かもしれません。
ワイルド感溢れる猪肉を分厚く切ってステーキやジンジャーポークならぬジンジャー猪にしたり、脂肪が少なく焼き過ぎるとパサつきがちな鹿肉は焼くときにまずは表面を焼き付け、旨みを閉じ込めしっとりとした食感をキープする。筋がある部位は筋を丁寧に除く行程を入れる。食べやすいように切り込みを入れる。圧力鍋を活用する、など食材であるジビエ肉と対話するように調理工夫をすると、どうにかこうにか美味しい料理ができたりします。
そして、時々ニュースなどでも拝見するE型肝炎。これについては、「よく加熱してください。生肉はだめですよ。」という忠告をする他ないのですが、ジビエ肉だから危ないという訳ではなく生肉を扱う上での衛生管理(生肉を扱った手や調理器具は洗浄や消毒をするなど、基本的な処理は豚肉や牛肉を扱う時と一緒です)はお肉を調理して楽しむ者としては注意しなくてはいけない事項といえます。
今回は、ジビエ肉を楽しむためのHow toをいくつかご紹介しましたが、どれも難しいことはしていないので、あまり深く考えず気軽にジビエ肉を楽しみましょう♪
やっぱり自然と猫が好き。