鹿のグリーントライプ

誰もが気になる..!? グリーントライプのリスクとメリット

一部のペットオーナーの間で注目されている健康食品、グリーントライプ。単にトライプと言われることもあります。

これは一体なんなのか? それは胃袋です。海外では牛や豚、羊など草食の家畜全般の胃袋を指しますが、国内ペット市場においては特に「鹿の胃袋(鹿のグリーントライプ)」がトライプの代名詞として注目されている感があります。

以下、鹿のトライプについての一般論から海外の論、調べて分かってきた事など、できる範囲でリスクやメリットを記載します。不明な点も多い領域なので間違いがあったらコメント欄でご指摘ください。

トライプの定義

トライプは先述のように胃袋です。フランスやギリシャなどの欧州、インドや中国、インドネシアなどのアジア諸国、エクアドルなどの中米においても人間用途の食材として活用されています。

が、一口に胃袋といっても簡単ではありません。というのも反芻動物には胃袋が4つあるからです。

日本の事例でいうと、焼肉でもおなじみのセンマイ(胃袋)がありますが、これは牛の第3の胃袋。

牛の場合、

  • 第1の胃袋=ミノ
  • 第2の胃袋=ハチノス
  • 第3の胃袋=センマイ
  • 第4の胃袋=ギアラ

という名称が付けられており、焼肉好きなら分かるようにそれぞれが別の部位のような存在です。この中で実際に(生物学的に)胃としての働きをしているのは4番目の胃袋であり、他の3つは微生物によって植物の繊維を発酵・分解させる場所となっています。特に第1の胃袋が一番大きく、第2第3と続いて分解され、第4で消化吸収されるという流れです。

これは羊やヤギ、そして鹿においても同様です。

で、ここで解釈が分かれます。

国内で鹿のトライプというと、

  • 第4の胃を指すケース
  • 第4の胃の中身を指すケース
  • その両方を指すケース
  • それ以外の胃(第1〜第3)

などあり、統一見解が無い様に見えます。(そもそもそういうカルチャーが無い)

Foremaにおいてはいくつかの理由(後述)から、第1〜第3の胃をトライプとして扱っています。この部分での内容物は未消化の草であることが多いため、中身は除いています。

ちなみに豚の場合は反芻動物ではないため、通常の胃袋(〜周辺内蔵)が、そのままトライプとされています。(国によって多少扱いが違うかもしれませんが・・)

猪も豚の祖先であり、構造としては全く同じものですが、今のところ猪のトライプ需要については不明です。

トライプとグリーントライプの違い

トライプは、先述のように海外では人間用途にも使用されるため、洗浄・漂白・煮沸されています。一方のペット用途においてはそういった処理をせずそのまま与えます。犬の健康に有益とされている酵素、良質の細菌、栄養素などが死んでしまうためです。よってこの両者は全く別物であり、後者はグリーントライプと呼して区別されています。greenの語源はわかりませんが、普通に考えると見た目がそのままグリーンだからではないかと思います。

なぜグリーントライプがペット(犬・猫)にとって有益かというと、ライオンが野菜を食べなくても生きていけるのと同じ理由です。ライオンなどの肉食動物は植物を分解する能力がありません。よって植物を主食にしているシマウマなどを通じ、間接的に植物の栄養素を得ています。そのなかでも重要な部位が内蔵。動物番組などでライオンの狩りのシーンをよく観察するとわかりますが、首を噛んで一撃で仕留めた後はお腹を裂いて内蔵から食べ始めます。

これはライオンなどのネコ科に限らずリカオンやオオカミといったイヌ科の肉食動物、ホッキョクグマやハイイログマといった同じく肉食性のクマ、さらには雑食性のツキノワグマですら、死骸の内蔵を一番最初に食べ始めます。これは生態系における上位捕食者の鉄則といって良さそうです。

栄養成分について

ホンシュウジカ

ではグリーントライプの具体的な栄養素とはなんなのか? 平たく書くと酵素、良質の細菌、その他豊富な栄養素..となるわけですが、以下順に記載。

タンパク質

グリーントライプにはアミノ酸を含むタンパク質が多量に含まれています。筋肉の構築や補強を始め、免疫系の強化にもつながる有益な栄養分だと言えます。

プロバイオティクス

プロバイオティクスというのは人や動物にとって有益な微生物の総称で、有名どころでいうと乳酸菌や、サプリにもなっているアシドフィルスがあります。これらは大腸菌やサルモネラ菌といった有害な菌とライバル関係(=競合するという意味)にあるため多く摂取するほど体内環境(消化器系)が改善され、免疫力低下の阻止→病気を防ぎます。

プレバイオティクス

プロバイオティクスが乳酸菌などの菌類によって構成される「モノ」なのに対し、プレバイオティクスはオリゴ糖類や食物繊維類などの「可消化性食品成分」を指します。大腸内の有用菌の増殖を助ける、もしくは有害細菌の繁殖を抑制する働きがあります。

ざっくりいうとプロバイオティクスは有益な腸内細菌、それらを助けるのがプレバイオティクスという事。

酵素

グリーントライプには多くの消化酵素が含まれます。消化器官だから当然と言えばそうなのですが・・。酵素は栄養素の分解を助けるため、食べたものからより効率よくエネルギーを摂取するのを助けます。

天然ビタミンとミネラル

ドッグガムを加える中型犬。

ビタミンは果物や野菜から摂取するもの。肉食動物は草食動物を介してこれらを摂取しています。犬は人との共生によって雑食性が強化されていますが、本来は肉食性の生き物。進化の系統樹でオオカミと分岐したのも1.5万年ほど前の話で、長い長い進化のプロセスにおいてはつい最近のこと。人類の場合でも10万年くらい前にはほぼ今の人類と同じ機能・形になっていたそうなので、その意味でもオオカミと犬は実質同じといっていいかもしれません。

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ちなみに狼と犬は21世紀初頭まではDNAの違いはないとされており、DNA解析が飛躍的に進んだこの数年で、ようやくその差異がわかり始めた、というほどの近縁種です(厳密にはイエイヌはオオカミの亜種)。

例えばチワワとオオカミがほとんど同じDNAとはにわかには信じられませんが、世界の犬種が今のように多様化したのはこの200年くらいの話で、本当につい最近までオオカミの系統に沿った犬の原種が各地で独自に存在していたという実態があります。

そんな彼らにとって、草食動物から得られるビタミンは必須のもの。もちろんミネラルも同様です。ミネラルは野菜ではありませんが、そもそも自然界においては希少なもので、これを得るために像であれば長距離を移動して岩塩の洞窟にあつまりますし、鹿であればハネられるリスクを負ってでも線路の鉄粉を舐めにきます。

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高速道路の凍結防止剤(実質の塩)にもミネラルが含まれているため、野生動物がこれらを舐めにくるのは知る人ぞ知る話(※)。

※「敵に塩を送る」とはまさにこの事で、凍結防止剤が鹿・猪の激増の要因の一つという説もあり。凍結防止剤の急増ははスパイクタイヤが禁止になった90年代以降の話で、その後数年で鹿・猪による獣害が急増し始めた。

カルシウムとリン

グリーントライプにおけるカルシウムとリン(=オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸)は最適な比率で含有されています(リンが多すぎても少なすぎてもよくない)。同時にグリーントライプはph(ペーハー)が弱酸性で消化に優しいという恩恵があります。

オメガ3脂肪酸というのはナッツ類に多く含まれる脂肪酸で、同じ系統の脂肪酸として青魚由来のDHAやEPAも分類されています。オメガ6脂肪酸は植物由来のもので、人間や犬は体内で生成できないため外部から摂取する必要があります。これらはともに不飽和脂肪酸と呼ばれるものですが、特にオメガ6脂肪酸は摂取しすぎると皮膚炎や関節炎、大腸炎などの炎症を起こす事があります。一方のオメガ3脂肪酸は広く炎症を鎮め改善させる作用があるとされ、よって両者をバランスよく摂取することが重要です。

トライプの与え方、リスクとメリット

トライプの使用方法は、基本的には生です。加熱することで先述の栄養の大半が壊れてしまうからです。とは言え野生動物の内臓を生で食べることはハイリスクではないのか? という声もあるでしょう。当然リスクはゼロではありません。が、人間と同じ感覚で捉えるのはまた違うとも言えます。近年でこそ人間と同じ衛生環境で生活する犬が急増しましたが、基本的に犬の消化器系は人間よりも強靭です。(だからOK!という意味ではありません・・)

冷凍で寄生虫は死ぬか?

で、Foremaから出しているトライプは、一旦業務用冷凍を経ています。業務用というのはマイナス18度以下で、一般的にはマイナス20度以下という設定が多いです。メーカーや産地によってはマイナス30度やマイナス40度のものもあります。マイナス20度で24時間以上凍らせておくと寄生虫はほぼ死滅するという説がありますが、芯までマイナス20度が到達するには24時間では足りない場合が多いです。熊本の保険環境科学研究所で行われた馬肉の実験(※)ではマイナス20度で58時間凍らせた後に寄生虫の死滅試験が行われました。(結果として寄生虫は死滅)

ただしこの実験における寄生虫というのは馬肉の住肉胞子虫のみが対象であり、鹿肉に含まれる寄生虫(トリヒナなど)の実験ではない点は留意が必要です。「生食用」とうたったお肉を販売している事業者は「冷凍で寄生虫は死滅する」と記載していることが多いですが、厳密に言うと「ほぼ死滅する」ということであり、また「全ての寄生虫で確かめられたわけではない」というのが実態です。これを「100%ではないが概ね安全」と解釈する人と「100%ではないからダメ」とする人とで対応が分かれているように思えます。(獣医さんは後者が多い印象:獣医学会としては野生鳥獣の生食はNGという見解らしいです)

また、残念ながら菌やウイルスの場合は冷凍しても死滅せずいくらかが生き延びますが、菌が死ぬということはプロバイオティクスも死ぬという意味なので、ここは許容するべきなのかもしれません。

ちなみに冷凍を経ると、そのままの生に比べるとやはり栄養分は多少欠けるそうです。

人間への感染リスク

寄生虫や感染症のリスクは犬だけではありません。包丁やまな板経経由で菌が人に付着するリスクは当然あります。が、ペットの場合、トライプを食べたペットと人とのふれあいを通じて人に感染するリスクがある点を認識しておく必要があります。

普段からトライプや生肉を与えている上級者にとってはある程度分かっていることでも、これからトライプや生食を始めてみたいといったビギナーさんにとっては、アルコールで手やまな板、容器を除菌するだけで満足してしまいがち。その後にもリスクがある事は念頭に置いておいた方が良さそうです。(ただし何を以ってリスクとするかは人それぞれ)

ともあれ、リスクとメリットを天秤にかけた場合、生食でのメリットが圧倒的に大きいと判断した場合にグリーントライプを導入するのが良いように思います。

トライプを処理する産地の事情

安芸高田の畑
安芸高田の畑。このあたりは一大消費地である広島市の穀倉地帯。

グリーントライプが市場に出回らない理由の一つに、産地がいやがるという点があります。国内では、鹿や猪が仕留められると1.5時間もしくは2時間以内に解体所に持ち込まなければいけないという保健所のルールがあります。これを満たせないものは流通させると違法となってしまいます(あくまで人間用途のルール)。

で、この2時間ルールで処理を進めたとして、胃は仕留めた直後から急速に発酵(という表現が正しいのか??)しはじめガスがたまります。この状態で断裁して中身を出すのですが、これがまた手間のかかる作業で、さらには切った瞬間にガスと一緒に液体が吹き出て顔に散る、ということもあり、「気持ちがすごーく落ち込む」のだそうです。

その上で採れる量が少ない。実は胃袋自体は4つあって大きいので平均的な大人のホンシュウジカで7-8キロはあるのですが、中身を出したり不要部分を切り落とすと最終的には1キロ少々しか残らない事が大半です。

結果、総量も少なく、誰もやりたがらなく、そもそもリクエストが少ない、などの背景があり、トライプは超レアアイテムとなっています。

Foremaでの対応について

鹿の胃 グリーントライプ
100g目安にカットしたグリーントライプ。匂いは強いが犬(というは肉食動物)はこれを好む。

ちなみに、Foremaで第4(&中身)ではなく、なぜ第1〜3の胃を採用したかというと、そこまで「究極」を追求しなかったという点が挙げられます。本場である(かもしれない)第4の胃の内容物というのは、1〜3でゆっくり反芻されたものが液状にとけて吸収される前のもの。商品としては不確定要素が多すぎます。そもそも常時胃袋が満たされていることなど自然界には皆無。季節や場所においても何を食べているかが大きくバラつくのが野生動物の常であり、そんな背景がありながら胃の内容物を主軸とすることは少なくとも日本においては厳しいだろうと考えています。

また、腸に近い第4の胃は大腸菌などのリスクがより高いため、リスク軽減のためにも第1〜第3を選択したという背景もあります。胃の内壁は当然洗浄はせず、そのままの状態で冷凍し、1日以上寝かせて出荷します(出荷過程においても業務用冷凍を経ての移動・保管となります)。

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